国際共同治験に基づく小児稀少難病に対する遺伝子・細胞治療の実施とその支援体制の整備

文献情報

文献番号
201410015A
報告書区分
総括
研究課題名
国際共同治験に基づく小児稀少難病に対する遺伝子・細胞治療の実施とその支援体制の整備
課題番号
H25-次世代-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 雅史(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所成育遺伝研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 内山 徹(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所成育遺伝研究部)
  • 中林 一彦(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所周産期病態研究部)
  • 藤本 純一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター 理事長特任補佐)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人国立成育医療研究センター データ管理室)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校小児科学講座)
  • 今井 耕輔(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 小児・周産期地域医療学講座)
  • 布井 博幸(宮崎大学医学部 生殖発達医学講座 小児科学分野)
  • 有賀 正(北海道大学大学院 医学研究科 小児科学分野)
  • 衞藤 義勝(脳神経疾患研究所先端医療研究センター)
  • 大橋 十也(東京慈恵会医科大学DNA医学研究所遺伝子治療研究部)
  • 大森 栄(信州大学医学部附属病院薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在、欧米を中心に原発性免疫不全症などの小児稀少難病に対して数多くの遺伝子治療が行われ、その有効性、安全性の面から遺伝子治療がこれら疾患に対する有効な治療法と認識されている。一方、我が国では多くの遺伝子治療が「医薬品としての承認取得を目的としないアカデミアの研究者による臨床研究」に留まり、海外企業が行う遺伝子治療の国際共同治験への参加や日本発の国際共同治験の実施を困難にしている。
 これに対し、国立成育医療研究センターは「小児難病治療開発のオールジャパン体制」の構築を目指した臨床研究中核病院に採択された。そこで、本研究では、遺伝子治療においては十分な実績を有する国内企業のタカラバイオ社と連携し、現在、イタリアSan Raffaele研究所において行われている原発性免疫不全症のウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)に対する造血幹細胞遺伝子治療を医師主導治験として実施することを目的としている。また、これら稀少疾患に対する遺伝子治療を継続して実施していくには、全国規模の患者登録体制や発症早期あるいは発症前診断を可能にする簡便なスクリーニン法も重要となり、本研究において合わせて研究を進める。
研究方法
研究内容は、実体調査として1) 原発性免疫不全症に対する遺伝子治療臨床成績の造血幹細胞移植と比較、前臨床研究して2) 免疫不全症とライソゾーム病の基礎的研究、3) 治療用ベクターの染色体挿入部位網羅的解析法や前処置として使用するブスルファンの血中モニタリングの確立、また、治験実施向けた研究として、4) 免疫不全症、代謝異常症に関するマス・スクリーニングや免疫不全症の患者データベースを整備、当センターにおける実施体制に関しては、5) 臨床研究中核病院における遺伝子・細胞治療の基盤整備やICH-GCPに基づくデータ管理体制を準備するなど各分担研究者が独自に研究を進めた。
結果と考察
本研究の目的の最大の目的は、研究期間内にWASに対する遺伝子治療を治験(医師主導治験)として行うことである。WASは易感染性、血小板減少、湿疹を三主徴とする免疫不全症で、根治療法は造血幹細胞移植のみであるが、HLA一致ドナーの観点から安全な移植を行うことが困難な場合が多い。そのため、最近ではレンチウイルスベクターを用いた造血幹細胞遺伝子治療が欧州を中心に行われ、有効な治療成績を上げている。その代表格は、イタリアSan Raffaele研究所が中心となって海外企業とともに進められているものとフランスNPO団体のGENETHONがフランス、イギリス、米国で進めているものがあるが、使用するベクターコンストラクトは同一である。当初、GENETHON側と交渉を進めていたが、GENETHONが日本における代理店を有していないため、イタリアSan Raffaele研究所側と交渉を開始した。これまでところ、当該企業と契約を結び、欧州で行われている治験の臨床プロトコル、IMPD、IBを入手し、それを基に平成26年8月11日にPMDAの事前面談を受けた。また、臨床用ウイルスベクターならびに非臨床試験用のnon-GMPベクターを入手しおり、このnon-GMPベクターを用いてDry Runをタカラバイオ社と共同で実施している。臨床プロトコルに関しては欧州のものを参考にmedical writerに依頼して作成中である。最終的はPMDAとの対面助言ならびに当センターにおける治験審査委員会の承認の上、来年度中にはWASに対する遺伝子治療臨床試験(医師主導治験)を開始したと考えている。
結論
1) WAS遺伝子治療臨床試験(治験)に関してはイタリア San Raffaele研究所と共同で実施することにし、現在、IMPD、IB、臨床プロトコルを入手し、さらにタカラバイオ社とともにDry runを行い、その同等性を示すデータ取りを行っている。2) 現在までの原発性免疫不全症における造血幹細胞移植と遺伝子治療の臨床成績を比較・検討した。3) 前臨床試験としてベクターの安全性を評価するin vitro immortalizationアッセイや実際の遺伝子治療臨床研究で使用予定の治療用ベクターの挿入部位解析ならびにブスルファンの血中モニタリング法を確立した。4) PIDあるいは先天性代謝異常症におけるマス・スクリーニング法ならびに患者登録に関する疫学研究を行った。5) 臨床研究中核病院として本研究の支援の仕方を検討し、また、ICH-GCPに準拠したデータマネージメント体制の導入を準備している。同時に床研究中核病院としてARO機能の導入も検討している。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410015Z