抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究

文献情報

文献番号
201410013A
報告書区分
総括
研究課題名
抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の治療及び予後に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村島 温子(独立行政法人国立成育医療研究センター病院 周産期・母性診療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院医学薬学研究部 産科婦人科学教室)
  • 杉浦 真弓(名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究科 免疫・代謝内科学分野)
  • 山田 秀人(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 産科婦人科学分野)
  • 和田 芳直(大阪府立母子保健総合医療センター 母性内科)
  • 光田 信明(大阪府立母子保健総合医療センター 産科)
  • 高橋 尚人(東京大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター)
  • 野澤 和久(順天堂大学医学部膠原病内科)
  • 井上 永介(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 臨床研究教育部生物統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗リン脂質抗体症候群(APS)合併妊娠のリスク度の評価方法ならびにそれにあった治療方法を明らかにし、妊娠管理指方針を呈示する。
研究方法
Ⅰ全国アンケート調査
1)25年度に施行した、産婦人科医師並びに内科系医師を対象に行ったアンケート調査結果をさらに解析し、論文投稿する。
ⅡAPS合併妊娠の多施設症例調査
各種臨床データを収集し、過去の妊娠歴を含む臨床経過ないしは抗体のプロフィールでリスクを予測し、適切な治療方法が選択できるかどうか検討した。統計解析方法には医療統計解析ソフトGraphPad Prism 6を用いた。
Ⅲ不育症に関する研究
1)不育症データベースを用いたAPS陽性率、治療成績の検討
2)抗凝固療法の治療歴をもつ不育症妊婦の治療と予後に関する後方視的検討
3)不育症における血液凝固XII因子活性と遺伝子多型に関する検討
Ⅳ内科の視点からみるAPS合併妊娠
1)抗リン脂質抗体保有妊婦の一次予防についてのシステマティックレビュー
2)抗リン脂質抗体の全身性エリテマトーデス(SLE)の病型への影響についての自験例を用いた解析
Ⅴ ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)の臨床的有用性に関する研究
1)本抗体と他の抗リン脂質抗体、妊娠予後との関係についての解析
2)aPS/PT測定施設の違いによる臨床的有用性の違いに関する検討
Ⅵ APS合併母体からの新生児のバイオマーカーに関する研究
Ⅴ標準的治療抵抗性APSに関する治療方法の開発
標準的治療に抵抗性のハイリスクAPS妊娠症例に対し効果が期待される大量ガンマグロブリン(IVIG) 療法の有効性を見るための臨床試験を推進するためにホームページで広報するとともに、周産期施設の医師に問い合わせるなどして登録候補者の把握に努める

結果と考察
Ⅰ産婦人科系医師を対象に行ったアンケート調査結果を英語論文として発表した。内科系医師を対象に行ったアンケート調査結果についても関係学会雑誌に論文投稿した。
ⅡAPS合併妊娠の多施設症例調査の解析では過去の死産歴が予後リスク因子として抽出できただけであり、さらに症例を追加し解析する必要があると判断された。
Ⅲ不育症に関する研究
1)不育症データベースを用いた研究で、抗リン脂質抗体(aPL)の単回陽性例に対するヘパリン治療は不要であることが示された。
2)抗凝固療法の治療歴をもつ不育症妊婦の後続妊娠の検討で、抗凝固療法が不要と思われる症例や抗凝固療法を行っても生児がえられない症例が10%前後あり、抗凝固療法の適応を決める難しさが示された。
3)ループスアンチコアグラント(LAC)はXII因子活性を約25%低下させることがわかった。CT遺伝子型、XII因子活性低下ともに次回流産率と関係は認められなかった。
Ⅳ内科の視点からみるAPS合併妊娠
1システマティックレビューによって、抗リン脂質抗体陽性(SLE以外)妊娠例において予防治療による生児獲得率の改善は認めないことを明らかにし、海外雑誌に発表した。
2)aPLが全身性エリテマトーデス(SLE)の病型へ及ぼす影響についての解析で、aPL陽性SLE患者では血栓症と流産以外に低補体血症、抗DNA抗体高値という特徴をもつことが示された。
Ⅴホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)の臨床的有用性に関する研究
1)aPS/PT高値はAPTT延長と同等のリスク因子であった。またaPS/PTとCL/β2GPI抗体との相関は認めなかった。
2)aPS/PT測定施設の違いによる臨床的有用性の違いに関する検討で臨床的意味が同等であることを確認した。
Ⅵ自己免疫疾患合併妊娠の臍帯血関する研究では、サイトカインの異常高値を示す症例はあったものの、一定のパターンを認めるには至らなかった。
Ⅴ標準的治療抵抗性APSに関する治療方法の開発
標準的治療に抵抗性のハイリスクAPS妊娠症例に対し効果が期待される大量ガンマグロブリン療法の有効性を見るための臨床試験を推進するため患者登録を増やすため、ホームページで広報するとともに、周産期施設の医師に問い合わせるなどして登録候補者の把握に努めた。6例のエントリ候補を把握し、待機していたが、研究期間内に妊娠したものはなく、エントリができなかった。
結論
症例調査や抗体の測定方法の検証などにより抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診断に用いる検査項目、リスクを評価する方法が整理でき、内科・産婦人科・小児科で形成されている本研究班の特徴を生かした合意形成につなげることができた。診療現場で診断や治療方針に有用な診療の手引きに必要とされているクリニカルクエスチョン(CQ)を整理することができた。今後、これらのCQに答えを出すことによって手引きの完成としたい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410013Z