生殖補助医療により出生した児の長期予後と技術の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201410009A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖補助医療により出生した児の長期予後と技術の標準化に関する研究
課題番号
H25-次世代-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
苛原 稔(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所)
  • 竹下 俊行(日本医科大学付属病院)
  • 齊藤 英和(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 緒方 勤(浜松医科大学医学部)
  • 久慈 直昭(東京医科大学)
  • 有馬 隆博(東北大学)
  • 宇津宮 隆史(医療法人セント・ルカ産婦人科)
  • 田中 温(セントマザー産婦人科医院)
  • 末岡 浩(慶應義塾大学医学部)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 橋本 圭司(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 秦 健一郎(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 大須賀 穣(東京大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化対策の重要な方策にも位置づけられる我が国の生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology、ART)の現状とその安全性、関連する社会制度的・倫理的な諸問題を医学的・社会的に検討するために、ART登録、ART児の長期予後調査、出自を知る権利、第3者が関与するART、各々に関し分析検討を行う。
研究方法
2012年の全国ARTデータベース、周産期データベースなどを用いて、ARTの実情を把握するとともに、出生児の健康状態を把握するため、大規模コホート長期予後調査を行う。また、ARTの遺伝的安全性の検証としてエピゲノム解析、着床前遺伝子診断症例(PGD)の解析を行う。
 非配偶者間人工授精における告知と出自を知る権利や、第三者の関与するARTに関しては、諸外国の実情調査と国内での大規模な意識調査を行う。
結果と考察
全国の2012年ART総治療周期数は326,426周期、総出生児数は37,953人であった。児の出生体重に対する検討を行ったところ、凍結融解胚移植において、HRT周期では、自然排卵周期、自然排卵後に黄体補充やエストロゲン製剤を併用した周期より、有意に出生体重が重いことが明らかとなり、治療法毎の分娩時期の差、分娩様式が出生体重に影響している可能性が示唆され、ART児の長期予後調査の基盤となるデータベース構築としてARTデータベースと周産期データベースの連結が可能であるかを検証したところ、ART症例の10.6%が照合され、ART症例の周産期予後の検討に発展させうることが示唆された。ART児の発育・発達に関する解析では、親の生活習慣や社会経済的状況が影響することが明らかとなり、今後は詳細な解析が必要であることが示唆された。
 ARTの遺伝的安全性の検証として臍帯血ゲノムDNAを用いたゲノム・エピゲノム解析を行い、ART群で明らかな影響は認められなかった、単一遺伝性疾患に対するPGDは35採卵周期,33症例に施行されており、均衡型染色体構造異常保因者に対するPGDは60周期,46症例に施行されていた。
 非配偶者間人工授精における告知と出自を知る権利に関する検討では、諸外国の状況を参考に、今後とも国内での意見集約が必要であることが示唆された。
 第三者の関与するARTに関する意識調査結果や、諸外国の状況を参考に、これらのARTに関した指針作成や法制化に際しては、世代差、性差、不妊経験の有無など背景を含めた検討を行い、社会全体で考えることができるようなデータ提供体制の構築が必要であることが示唆された。
結論
本研究により、我が国におけるARTの実情とARTの児の長期予後調査を継続的に調査することが可能な体制が整えられた。本研究により、ARTが将来にわたり国民衛生にどのように寄与・影響するのかを推測する基礎資料を集積し、日本でのARTの普遍化と特定不妊治療助成制度を通して経済的支援を行うことの意義や安全性を含めた効率検証を行う事は、少子化対策の一環でもあるARTの意義を社会に発信することの基盤となることが明らかとなった。
 また、第三者が関与する生殖補助医療、特に出自を知る権利や配偶子提供・代理懐胎技術について世界的な現況と趨勢を把握するとともに、日本での当事者・医療者の動向・姿勢をきめ細かく調査し、日本での在り方を検討することが、未だ日本で認められない生殖補助医療技術を我が国の文化的・社会的状況に根付かせるための社会的コンセンサス形成と行政サービスの基盤整備となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410009Z