文献情報
文献番号
201410005A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1母子感染予防に関する研究:HTLV-1抗体陽性妊婦からの出生児のコホート研究
課題番号
H26-健やか-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
板橋 家頭夫(昭和大学 医学部小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 齋藤 滋(富山大学大学院医学薬学研究部 産科婦人科学)
- 田中 政信(公益社団法人 日本産婦人科医会)
- 鮫島 浩(宮崎大学医学部 産婦人科)
- 木下 勝之(公益社団法人 日本産婦人科医会)
- 峯 真人(公益社団法人 日本小児科医会)
- 森内 浩幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 小児科)
- 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
- 杉浦 時雄(名古屋市立大学大学院医学研究科 小児科)
- 伊藤 裕司(国立成育医療研究センター 周産期診療部新生児科)
- 水野 克己(昭和大学 江東豊洲病院小児内科)
- 田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター小児科)
- 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
- 宮沢 篤生(昭和大学 医学部小児科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
妊婦を対象にHTLV-1スクリーニング検査が導入されるようになり、適切な母子感染予防手段の確立が求められている。主要な母子感染ルートは母乳(長期母乳摂取による母子感染率は約20%)で、これに対し人工栄養の母子感染率は約3%である。また、90日未満の短期母乳や冷凍母乳では人工栄養と同程度の感染率であるという報告もある。多数例の検討によって人工栄養法の感染予防効果は明らかにされているが、短期母乳や冷凍母乳の母子感染予防効果については十分なエビデンスが得られていない。さらに、母親が乳汁栄養を選択するにあたり、母子感染のリスクのみならず栄養法が児の健康問題や、成長や発達、母子関係に及ぼす影響についても明らかでない。本研究では、十分なサンプル数によるコホート研究によりこれらの点を明らかにすることを目的している。
2.母乳バンクに関する研究
低出生体重児にとって感染防御や壊死性腸炎のリスク軽減のためには母乳が欠かせないが、我が国ではもらい乳の方針をとっている施設が少なくない。しかし、サイトメガロウイルスをはじめとする経母乳感染のリスクが高くなるため、これを回避するには母乳バンクの設置を検討する必要がある。
妊婦を対象にHTLV-1スクリーニング検査が導入されるようになり、適切な母子感染予防手段の確立が求められている。主要な母子感染ルートは母乳(長期母乳摂取による母子感染率は約20%)で、これに対し人工栄養の母子感染率は約3%である。また、90日未満の短期母乳や冷凍母乳では人工栄養と同程度の感染率であるという報告もある。多数例の検討によって人工栄養法の感染予防効果は明らかにされているが、短期母乳や冷凍母乳の母子感染予防効果については十分なエビデンスが得られていない。さらに、母親が乳汁栄養を選択するにあたり、母子感染のリスクのみならず栄養法が児の健康問題や、成長や発達、母子関係に及ぼす影響についても明らかでない。本研究では、十分なサンプル数によるコホート研究によりこれらの点を明らかにすることを目的している。
2.母乳バンクに関する研究
低出生体重児にとって感染防御や壊死性腸炎のリスク軽減のためには母乳が欠かせないが、我が国ではもらい乳の方針をとっている施設が少なくない。しかし、サイトメガロウイルスをはじめとする経母乳感染のリスクが高くなるため、これを回避するには母乳バンクの設置を検討する必要がある。
研究方法
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
コホート研究の概略は以下の通りである。ウエスタンブロット(WB)法による確認検査が陽性および判定保留となった妊婦を対象に、各都道府県の90協力施設において(施設の倫理委員会承認が得られている)、妊婦に対して必要なカウンセリングを行い、母親自らが児の栄養法を決定する。その後、本コホート研究の同意が得られた妊婦から出生した児を3年間にわたりフォローアップする。フォローアップ項目としては、3歳時点の児の抗体の陽性化の有無に加えて、各栄養法別の成長と発達、健康状態、母親の育児不安やストレスについてである。
2.母乳バンクに関する研究
我が国では母乳バンクは設立されておらず、その運用基準もないため、諸外国の実情調査や意見交換をもとに検討し、運用基準を作成した後、実際に1病院で運用を開始する。
コホート研究の概略は以下の通りである。ウエスタンブロット(WB)法による確認検査が陽性および判定保留となった妊婦を対象に、各都道府県の90協力施設において(施設の倫理委員会承認が得られている)、妊婦に対して必要なカウンセリングを行い、母親自らが児の栄養法を決定する。その後、本コホート研究の同意が得られた妊婦から出生した児を3年間にわたりフォローアップする。フォローアップ項目としては、3歳時点の児の抗体の陽性化の有無に加えて、各栄養法別の成長と発達、健康状態、母親の育児不安やストレスについてである。
2.母乳バンクに関する研究
我が国では母乳バンクは設立されておらず、その運用基準もないため、諸外国の実情調査や意見交換をもとに検討し、運用基準を作成した後、実際に1病院で運用を開始する。
結果と考察
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
平成26年12月末までに全国90研究協力施設において1461名の妊婦が登録され、660名の新生児が出生した。660名のうち、WB法陽性妊婦から出生した児が77%、判定保留が23%である。このうち、短期母乳が選択された児は53%、人工栄養が38%である。判定保留妊婦のうちPCR法の結果が明らかになっている62名中陽性であったのは18名(22%)で、いずれもproviral loadはATLのリスクに比べて極めて低値であった。平成27年度には3歳になる例が出てくる。日本小児科医会会員のアンケート調査では、産科施設との連携が十分ではないことが明らかになったため、平成27年度にはさらに産科医と小児科医を対象に啓発事業を展開する予定である。また、これまでの研究で得られた情報やデータをもとにHTLV-1母子感染予防対策マニュアルの改訂を行う。
2.母乳バンクに関する研究
国内NICUにおけるもらい乳の現状調査や、諸外国で開催された母乳に関する学会への参加、さらに母乳バンク運用手順の入手し平成26年度には運用ガイドラインの草稿が完成し、昭和大学江東豊洲病院において実際の母乳バンク運用が開始された。今後、実際の課題などについても検討を加える予定である。
平成26年12月末までに全国90研究協力施設において1461名の妊婦が登録され、660名の新生児が出生した。660名のうち、WB法陽性妊婦から出生した児が77%、判定保留が23%である。このうち、短期母乳が選択された児は53%、人工栄養が38%である。判定保留妊婦のうちPCR法の結果が明らかになっている62名中陽性であったのは18名(22%)で、いずれもproviral loadはATLのリスクに比べて極めて低値であった。平成27年度には3歳になる例が出てくる。日本小児科医会会員のアンケート調査では、産科施設との連携が十分ではないことが明らかになったため、平成27年度にはさらに産科医と小児科医を対象に啓発事業を展開する予定である。また、これまでの研究で得られた情報やデータをもとにHTLV-1母子感染予防対策マニュアルの改訂を行う。
2.母乳バンクに関する研究
国内NICUにおけるもらい乳の現状調査や、諸外国で開催された母乳に関する学会への参加、さらに母乳バンク運用手順の入手し平成26年度には運用ガイドラインの草稿が完成し、昭和大学江東豊洲病院において実際の母乳バンク運用が開始された。今後、実際の課題などについても検討を加える予定である。
結論
1.HTLV-1母子感染予防コホート研究
平成27年度からは3歳時点の抗体検査の結果が得られるようになる。各地域におけるHTLV-1母子感染に関する体制整備が不十分であり、さらなる啓発が必要である。
2.母乳バンクに関する研究
昭和大学江東豊洲病院において実際の母乳バンク運用が開始された。今後、母乳バンクの課題を明らかにし、わが国における母乳バンクのあり方や運用基準を明らかにする。
平成27年度からは3歳時点の抗体検査の結果が得られるようになる。各地域におけるHTLV-1母子感染に関する体制整備が不十分であり、さらなる啓発が必要である。
2.母乳バンクに関する研究
昭和大学江東豊洲病院において実際の母乳バンク運用が開始された。今後、母乳バンクの課題を明らかにし、わが国における母乳バンクのあり方や運用基準を明らかにする。
公開日・更新日
公開日
2015-11-20
更新日
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