文献情報
文献番号
201409059A
報告書区分
総括
研究課題名
医師主導治験による酵素製剤を利用したムコ多糖症II型の中枢神経症状に対する新規治療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(国際)-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
- 中村 秀文(国立成育医療研究センター 開発企画部)
- 藤本 純一郎(国立成育医療研究センター 小児がん疫学臨床研究センター)
- 田中 あけみ(大阪市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ムコ多糖症II型は経静脈投与の酵素補充療法により、心弁膜症、関節可動制限、肝脾腫などの諸症状の治療が可能となり、患者・家族のQOLは劇的に改善した。しかし、高分子である酵素製剤は、血液脳関門を超えることが出来ず、脳内に到達できないため、精神運動発達遅滞や神経退行などの中枢神経症状の進行を抑制出来ないことが大きな問題である。そのため中枢神経症状に対する治療法の開発が求められている。本研究の目的は、酵素製剤イデュルスルファーゼβ(以下、IDS-β、商品名ハンタラーゼ)の脳室内投与によるムコ多糖症II型の中枢神経病変の進行抑制治療法の有効性と安全性を医師主導治験により明らかにすることである。
研究方法
1)前臨床試験の実施
本研究では、サルを用いたIDS-β側脳室内投与の安全性評価試験(単回投与薬物動態試験及び反復投与毒性試験)を実施する。また、臨床試験での用法用量及び評価パラメータの検討のため、MPS II型モデルマウスを用いた脳室内投与による薬効試験を実施する。
2)第I/II相試験プロトコールの作成:ムコ多糖症II型患者の発達評価
本研究の非臨床試験の結果をもとに、第I/II相試験のプロトコールを作成する。主要評価項目は脳脊髄液中のグリコサミノグリカン(GAG)及びヘパラン硫酸(HS)である。また、真のエンドポイントともいえる発達試験による評価の可能性を追求するために、酵素製剤の静脈内投与を行っているムコ多糖症II型患者の発達試験の推移について調査する。
本研究では、サルを用いたIDS-β側脳室内投与の安全性評価試験(単回投与薬物動態試験及び反復投与毒性試験)を実施する。また、臨床試験での用法用量及び評価パラメータの検討のため、MPS II型モデルマウスを用いた脳室内投与による薬効試験を実施する。
2)第I/II相試験プロトコールの作成:ムコ多糖症II型患者の発達評価
本研究の非臨床試験の結果をもとに、第I/II相試験のプロトコールを作成する。主要評価項目は脳脊髄液中のグリコサミノグリカン(GAG)及びヘパラン硫酸(HS)である。また、真のエンドポイントともいえる発達試験による評価の可能性を追求するために、酵素製剤の静脈内投与を行っているムコ多糖症II型患者の発達試験の推移について調査する。
結果と考察
1)前臨床試験の実施
①サルを用いたIDS-β側脳室内投与の安全性評価試験
本年度は、IDS-βの脳室内投与時の安全性評価のために実施する前臨床試験として、サル単回投与薬物動態試験及び反復投与毒性試験を立案し、PMDAとの薬事戦略相談で合意を得て、試験を開始した。また、サル脳脊髄液及び血清中IDS-β濃度測定法の分析法バリデーションを完了し、準備が整った。現在、採取サンプルの凍結保存時の保存安定性試験を実施中である。
②タンデム質量分析計(LCMS/MS)を用いた測定系の開発
脳脊髄液中のグリコサミノグリカン(GAG)およびヘパラン硫酸(HS)を主要評価項目とするためには、この指標がムコ多糖症II型の中枢神経症状と関連することを明らかにすることが必要である。そのため、MPS II型モデルマウスを用いた検討を開始し、その過程で、マウス1個体から得られる髄液量は2-3uL微量であることから、GAGやHSの微量測定系が必要であることが判明した。したがって、本年度は、タンデム質量分析計(LCMS/MS)を用いた測定系の開発を重点的に行い、定量可能と判断した。
2)第I/II相試験プロトコールの作成:ムコ多糖症II型患者の発達評価
酵素製剤の静脈内投与を行っているムコ多糖症II型患者重症型24例の発達指数(DQ)を経時的に調査し、ミスセンス変異を持つ群(タイプC、11例)とヌル変異を持つ群(タイプD、13例)に分けて分析し、退行が始まる時期を求めた。タイプC群では、40ヵ月齢までは遅れはあるものの知的発達を遂げ、その後横ばいとなり、80か月齢より退行が始まった。タイプD群でも、40か月齢までは知的発達があるものの、その後わずかな横ばい期間ののち急激に退行した。さらに、発達が止まる時期および退行が始まる時期は、酵素補充療法開始時期とは関係なく、早期治療を行っていても同じであった。この結果から、発達が止まる時期および退行が始まる時期を脳室内酵素補充療法により遅らせることができるかどうかが効果判定のポイントとなると考えられた。
①サルを用いたIDS-β側脳室内投与の安全性評価試験
本年度は、IDS-βの脳室内投与時の安全性評価のために実施する前臨床試験として、サル単回投与薬物動態試験及び反復投与毒性試験を立案し、PMDAとの薬事戦略相談で合意を得て、試験を開始した。また、サル脳脊髄液及び血清中IDS-β濃度測定法の分析法バリデーションを完了し、準備が整った。現在、採取サンプルの凍結保存時の保存安定性試験を実施中である。
②タンデム質量分析計(LCMS/MS)を用いた測定系の開発
脳脊髄液中のグリコサミノグリカン(GAG)およびヘパラン硫酸(HS)を主要評価項目とするためには、この指標がムコ多糖症II型の中枢神経症状と関連することを明らかにすることが必要である。そのため、MPS II型モデルマウスを用いた検討を開始し、その過程で、マウス1個体から得られる髄液量は2-3uL微量であることから、GAGやHSの微量測定系が必要であることが判明した。したがって、本年度は、タンデム質量分析計(LCMS/MS)を用いた測定系の開発を重点的に行い、定量可能と判断した。
2)第I/II相試験プロトコールの作成:ムコ多糖症II型患者の発達評価
酵素製剤の静脈内投与を行っているムコ多糖症II型患者重症型24例の発達指数(DQ)を経時的に調査し、ミスセンス変異を持つ群(タイプC、11例)とヌル変異を持つ群(タイプD、13例)に分けて分析し、退行が始まる時期を求めた。タイプC群では、40ヵ月齢までは遅れはあるものの知的発達を遂げ、その後横ばいとなり、80か月齢より退行が始まった。タイプD群でも、40か月齢までは知的発達があるものの、その後わずかな横ばい期間ののち急激に退行した。さらに、発達が止まる時期および退行が始まる時期は、酵素補充療法開始時期とは関係なく、早期治療を行っていても同じであった。この結果から、発達が止まる時期および退行が始まる時期を脳室内酵素補充療法により遅らせることができるかどうかが効果判定のポイントとなると考えられた。
結論
本研究は、酵素製剤IDS-βの脳室内投与によるMPS II型の中枢神経病変の進行抑制治療法の有効性と安全性を明らかにすることを目的としている。本年度は、医師主導治験に必要な非臨床試験を本格的に開始し、第I/II相試験のプロトコールを検討した。非臨床試験は治験開始前までに終了する予定である。また、ムコ多糖症II型患者の発達調査の結果により、治験参加対象者は、発達の停止が起こる以前の40か月齢未満に(できれば3歳までに)治験薬投与の開始ができる重症型患者であることが判明した。しかし、発達試験で統計学的に有意な結論を見出すためには、相当数の患者を対象とした長期間の臨床試験が必要となり、患者数の限られているムコ多糖症のような超希少疾患では、有効な治療法を求める患者家族にとって大きな負担となる。本治験の主要評価項目が脳脊髄液のGAG/HS濃度のような生化学指標で可能となれば、今後の希少疾患の臨床開発の推進につながるものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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