構造並びに機能再生を目指す脂肪組織由来幹細胞治療の開発

文献情報

文献番号
201409053A
報告書区分
総括
研究課題名
構造並びに機能再生を目指す脂肪組織由来幹細胞治療の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-実用化(国際)-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 百万(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本徳則(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 舟橋康人(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 亀井譲(名古屋大学医学部附属病院 形成外科)
  • 水野正明(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 安藤昌彦(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 加藤勝義(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 平川晃弘(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 清水忍(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 中山忍(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 松尾清一(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
  • 丸山彰一(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
  • 若林俊彦(名古屋大学大学院医学系研究科 脳神経外科)
  • 高橋雅英(名古屋大学大学院医学系研究科 病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業では、体性幹細胞のひとつである脂肪組織由来幹細胞を用いて構造再生医療と機能再生医療のそれぞれを共通基盤に載せて開発することを目的とし、対象疾患として構造再生医療開発では「腹圧性尿失禁」を、機能再生医療開発では「急性進行性糸球体腎炎」を取り上げ、5年以内の治験実施を目指す。平成26年度は、腹圧性尿失禁については臨床研究及び基礎的研究、急性進行性糸球体腎炎については基礎的研究を行い、さらに多施設共同医師主導臨床治験実施に向けての基盤整備を終了する。
研究方法
腹圧性尿失禁に対する臨床研究では、非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来幹細胞(脂肪組織由来再生細胞adipose-derived regenerative cells: ADRCs)を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性と安全性に関する先行臨床研究を、平成23年3月ヒト幹臨床研究審査委員会により承認されたプロトコールに準拠して実施した。腹部皮下から吸引した脂肪250gから、CelutionTMシステムを用いて幹細胞を分離濃縮後、2種類の細胞溶液を準備し(1mlの幹細胞溶液と自己脂肪20g・幹細胞4ml混和液)、経尿道的内視鏡下に各液を外尿道括約筋内と膜様部尿道粘膜下に注入した。さらに、ADRCsの傍尿道注入治療を受けた男性での皮下脂肪吸引の合併症・安全性について検討した。基礎的研究では、ラット皮下脂肪からSVF(Stromal vascular fraction)を採取し、尿失禁モデルラットの尿道粘膜下に3種類の用量(細胞数)で投与し、尿漏出圧の測定、注入細胞の平滑筋への分化に関する免疫組織学的検討を行った。多施設共同医師主導治験実施に向けての基盤整備では、ADRCsを用いた腹圧性尿失禁を対象に、厚生労働省医政局と医薬品医療機器総合機構(PMDA)との事前相談により開発方針を決定し、PMDA薬事戦略相談(非臨床・対面助言)(平成26年7月10日)、PMDA薬事戦略相談(臨床試験デザイン・対面助言)(平成26年11月25日)により医師主導治験実施の可否、および治験実施計画のデザインについて協議し、開発方針を決定した。PMDAとの協議に基づいて、男性腹圧性尿失禁患者を対象とすることとし、治験実施計画書(案)を作成し、PMDAにおいて医療機器治験相談(対面助言)を行った。
急性進行性糸球体腎炎に対する、低血清培養脂肪由来幹細胞(LASC)による治療の開発では、急性進行性糸球体腎炎(RPGN)モデルへの治療実験の改良と、LASCの臨床応用を見据え、ヒトLASCの有効性の評価を行った。
結果と考察
腹圧性尿失禁に対する臨床研究では、20症例(男性16例、女性4例)を実施し、男性16例では、術後尿失禁量は継時的に減少し、平均34.4か月の経過観察において、16例中10例(62.5%)で尿失禁量が改善し、特に1例では尿失禁の完全消失を認め、5年の経過で再発を認めていない。女性4例では、術後1年の時点で2例に尿失禁の消失および著明改善が得られた。皮下脂肪吸引の合併症・安全性の検討では、肺塞栓や細菌感染などの重大な合併症はなく、腹部皮下出血・皮膚の凹凸・皮下硬結・瘢痕の合併症はすべて1~6か月以内に消失し、高齢男性においても安全な手技と考えられた。ラット皮下脂肪SVFの尿失禁モデルラットの尿道粘膜下への投与実験では、尿漏出圧増加、注入細胞の平滑筋への分化が確認され、さらに局所投与されたADRCsが全身へ移動しないことも確認された。作成した治験実施計画書(案)に基づく、PMDAとの対面助言では、概ね同意が得られたため、主要な試験デザインが決定でき、CelutionTMシステム販売会社の米国サイトリ社とも治験に関する契約を締結し、平成27年度からの多施設共同医師主導治験の準備が完了した。治療実験においてはRPGNに対するLASCの有効性が示され、CPCにおいても臨床応用に適した細胞を安定して作成できることが示された。
結論
世界初の本ADRCs傍尿道注入による腹圧性尿失禁治療は安全で有望な再生治療と考えられる。自己ADRCsを用いること、体外での細胞培養操作を必要としないことから、脂肪吸引・幹細胞抽出・尿道注入までを3時間以内の一連の操作で実施でき、低侵襲、安全な有望な治療法と考えられる。平成27年度から多施設医師主導型治験を実施する。急性進行性糸球体腎炎については、培養ADSCsの全身投与による治療を念頭に研究を進めているが、基礎的検討により、我々が実施する低血清培養法の有効性と安全性を確認することができ、コールドランも実施することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201409053Z