小児難病又は小児慢性疾患の効果的療育支援及び治療方法に関する研究

文献情報

文献番号
199800339A
報告書区分
総括
研究課題名
小児難病又は小児慢性疾患の効果的療育支援及び治療方法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
城 良二(心身障害児総合医療療育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中村耕三(東京大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患は、先天的あるいは後天的な骨・軟骨の形成・発育異常による全身骨格の形態的・構造的異常を呈する疾患で、発生頻度が明確でなく、さらに生活実態が不明なことが多い。そこで本研究の主たる目的は、骨系統疾患の疫学調査および実態調査である。
研究方法
骨系統疾患の内、もっとも頻度が高い骨形成不全症および軟骨無形成症につき国内の患者会などを通じ患者アンケート調査を行った。また、静岡県立こども病院に通院中の骨系統疾患患児の社会生活の実態を調査した。
結果と考察
骨形成不全症では約150例から回答を得た。回答者の平均年齢は23.3歳、平均骨折回数24.3回、骨折は年齢とともに減少するが、成人にも見られた。成人の平均身長は男127.5±23.7 (90.0 - 174.0)cm、成人女 110.3±18.0 (158.0 - 80.0)cmであった。低身長あるいは四肢の変形による生活の障害が見られ、平均の手術回数は6.0回で、手術には必ずしも満足していなかった。約半数に種々の程度の疼痛があった。生活上最も困るのは移動手段で半数以上が車椅子を使用していた。就学では、知的障害がないことから普通校への入学が増加しているが、介助員の確保が問題であった。就職、出産、育児、日常生活でも様々な苦労、工夫を行っており、治療の進歩と同様に情報の提供に対する期待が高かった。軟骨無形成症では214名から回答を得た。18%に疼痛が見られ腰痛、下肢痛が多い。疼痛の発現時期は10歳頃が多い。脊椎の後弯あるいは前弯の増強、O脚、肘の拘縮などの変形が各年代で見られた。近年進歩した脚延長術は25%が受けていた。成長ホルモン療法は24%が治療中あるいは治療を終了していた。静岡県立こども病院に通院中の骨系統疾患患児の調査では46名から回答を得た。就学・就職状況は悪くはなかったが、小学校の受け入れが悪く、いじめも見られた。SM社会生活能力検査では、全領域の社会生活指数は平均96.8と大きな遅れはないが、移動能力が暦年齢に対しやや遅れていた。本年度の研究では、骨系統疾患の代表的な2例である、骨形成不全症と軟骨無形成症につき患者アンケート調査を行い、患者および家族の実態を明らかにした。これらの調査から患者の臨床にはばらつきが大きいが、疼痛、変形、低身長などにより様々な程度に日常生活上の障害を抱えていた。患者・家族からは治療の進歩に対する期待とともに医療情報・地域社会の情報を得たいという要望が強かった。さらに社会の理解を得たいという切なる願望が感じられた。医療、福祉、学校、地域社会が互いに連携連絡をとり、障害児の生活の向上に努める必要がある。
結論
骨系統疾患は、比較的稀な疾患であるが臨床像にばらつきが多く、個々の問題は異なる。患者を正しく理解し、適切な治療を提供するとともに、情報の提供、地域社会との連携が重要である。

公開日・更新日

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