文献情報
文献番号
201409017A
報告書区分
総括
研究課題名
新しく開発された超高感度内視鏡(従来の強力光源が不要)の脳神経外科領域への臨床応用とその実用化に向けた医師主導治験の実施
課題番号
H24-被災地域-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本郷 一博(信州大学 医学部脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
- 千葉 敏雄((独)国立成育医療研究センター 社会・臨床研究センター)
- 鎮西 清行((独)産業技術総合研究所 ヒューマンラ イフテクノロジー研究部門・企画本部)
- 藤森 敬也(福島県立医科大学 胎児・新生児医 学/産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は近年開発された超高感度カメラ搭載の新しい硬性内視鏡(以下,超高感度内視鏡)を脳神経外科領域(脳室鏡下操作等)および一般の腹腔鏡手術(例えば産婦人科分野)における診断と治療の双方に導入するため,医師主導治験を施行してその薬事申請・承認,それに続く事業化・市場化を促進し,同時に,超高感度内視鏡の短期間での最適化を実現させる.本超高感度内視鏡は,従来の強力な光源を用いない超低照度環境下(例えば単一LEDのみ)でも十分な視野観察を既に可能とし,その完成度も(光学的性能試験・動物実験等を介して)目標の約90%に達している.その最終的完成のために、内視鏡カメラの小型軽量化と色調の高精細化を達成する.
研究方法
H26年度には,信州大学にて脳神経外科分野における超高感度内視鏡の臨床評価と,福島県立医科大学にて産婦人科分野における超高感度内視鏡の臨床評価を行う.前者では,傍鞍部腫瘍(主に下垂体腺腫)症例に対して,インドシアニングリーン(ICG)を静脈投与し微小血管や腫瘍と正常下垂体との見え方の違いを検討する.後者では,腹腔鏡手術(卵巣嚢腫核出,筋腫核出術,子宮全摘術など),にて,超高感度内視鏡の効果を評価する.また,超高感度内視鏡カメラ(試作機)と白色LED光源装置を用いて,従来のCCD内視鏡との比較により,特に低照度下における腹腔鏡手術手技タスク評価を行なう.内視鏡の薬事申請については,昨年度の内視鏡カメラ(クラス1)に引き続き,脳神経外科用の硬性鏡(クラス4)の製造および販売が可能な協力企業に,製造販売承認申請等を依頼する.
結果と考察
信州大学における臨床評価では,10例の経鼻的経蝶形骨洞的腫瘍摘出術にて,超高感度内視鏡による蛍光画像を利用しつつ手術を行った.蝶形骨洞前壁に走行する血管を蛍光で観察することで,注意するべき部位を同定することができ,全例でこの血管からの出血を回避することができた.また,腫瘍は白く濃染され,腫瘍の全体像を確認することができた.さらに正常下垂体と腫瘍との境界部位を確認することに役立ち,一塊として全摘出することができた.福島県立医科大学における臨床評価では,23件(卵巣嚢腫核出(付属器切除)17件,筋腫核出術 4件,子宮全摘術 1件,子宮外妊娠手術1件)の手術にて超高感度内視鏡を用いた.卵巣嚢腫核出術においては,高度癒着に起因する開腹移行例を1例認めたが,その他手術機械および手技に起因する合併症および入院期間の延長を要する大量出血などは認めなかった.超高感度内視鏡では,たとえ出血を伴う状況であっても常に内視鏡画像が明るく保たれるため,手術時間の短縮や,出血量の減少,術者の疲労軽減に寄与すると考えられる.白色LED光源と超高感度内視鏡を組み合わせた低照度下での腹腔鏡手術タスク評価では,全体として,照度が強い方がタスク実施数が多く,ミスが少なく,また,フリッカー計測における認識周波数はやや高い傾向が見られた.同一照度においては,3CCD内視鏡カメラに比べ,超高感度CMOS内視鏡カメラを使用した方がミスが少ないという結果が得られた.また,本研究で開発を行った超高感度内視鏡の製造,販売が可能な企業により神経内視鏡に関する承認基準(平成21年11月20日薬食発1120第10号通知)を適用した製造販売承認が行われ,脳神経3D内視鏡(承認番号 22600BZX00202000)として承認された.
結論
H26年度には,昨年度までに開発し薬事承認を得た超高感度内視鏡カメラを用いて,信州大学では脳神経外科分野における臨床評価を,福島県立医科大学では産婦人科領域における臨床評価を行った.前者では感度の高さを活かしたICG蛍光の術中観察が可能となり,従来の内視鏡の可視光観察では見られなかった結果や腫瘍,そして健常組織との境界を確認することができた.後者では暗くなりがちな腹腔内であっても常に明るい画像で観察することができ,手術のしやすさにつながった.また,LED光源を用いた低照度下(従来の1/10以下)であっても,超高感度内視鏡を用いることで,腹腔鏡手術の手技を行うのに効果的に働くことを確認できた.脳神経外科領域で用いるための硬性鏡も本年度にクラス4で薬事承認を得ることができた.これにより,本プロジェクトで開発した超高感度内視鏡カメラ及び硬性鏡の実用化を達成し,脳神経外科用の医療機器として使用することができるようになった.今後は白色LED光源による超高感度内視鏡用の照明装置の実用化をはじめとする周辺装置や各種機能の研究開発及び実用化を進めていく.
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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