RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201409013A
報告書区分
総括
研究課題名
RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 功一(独立行政法人国立がん研究センター 東病院呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 葉  清隆(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 河野 隆志(独立行政法人国立がん研究センター研究所)
  • 蔦  幸治(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 土原 一哉(独立行政法人 国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 石井源一郎(独立行政法人 国立がん研究センター東病院)
  • 松本 慎吾(独立行政法人 国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 大津  敦(独立行政法人 国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 山中 竹春(独立行政法人 国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人 国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター)
  • 軒原  浩(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 村上 晴泰(静岡県立静岡がんセンター)
  • 瀬戸 貴司(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター)
  • 西尾 誠人(公益財団法人がん研究会有明病院)
  • 里内美弥子(兵庫県立がんセンター)
  • 野上 尚之(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
120,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H24年に新たに発見され、その頻度が肺癌の約1%と希少なRET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌(RET肺癌)を対象に、国内未承認の医薬品であるRETチロシンキナーゼ阻害薬 バンデタニブ(治験成分記号:ZD6474)の多施設共同非無作為化非盲検第II相試験を医師主導治験として実施し、薬事承認申請を目指す。
研究方法
全国規模の遺伝子診断ネットワークLung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Japan (LC-SCRUM-Japan)においてRET肺癌のスクリーニングを行い、医師主導治験である「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたバンデタニブの多施設共同非無作為化非盲検第II相試験」へ登録する。プライマリーエンドポイントは奏効割合、予定登録数17例、登録期間2年、追跡期間1年とした。更に、スクリーニング登録時点からEDCの導入・電子化を図り、参加施設から提供される臨床情報を迅速に集計し、研究事務局でゲノムバイオマーカーの情報を付加した臨床ゲノムデータベースを構築する。更に高いセキュリティーのもと遺伝子情報等閲覧可能なシステムを開発し、研究事務局と参加施設が情報共有を可能にする事でより高いデータの信頼性の確保とスクリーニングの迅速化を可能とする。
結果と考察
【遺伝子スクリーニングネットワーク】H24年10月に「RET融合遺伝子陽性肺癌の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにするための前向き観察研究」の研究計画書を作成し、本研究に基づいたRET融合遺伝子陽性肺癌のスクリーニング組織としてLC-SCRUM-Japanを組織し、H25年2月より遺伝子スクリーニングを開始した。H27年3月末現在、LC-SCRUM-Japanには47都道府県から196施設が参加し、予定通り全国規模の遺伝子診断ネットワークが構築されている。これまでLC-SCRUM-Japanには1536例の登録があり、1423例の遺伝子解析を行った結果、RET肺癌35例、同様に希少なROS1融合遺伝子陽性肺癌61例、ALK融合遺伝子陽性肺癌23例が発見されている。スクリーニング効率化のためEDCによる症例登録システムと臨床ゲノム情報を統合したデータベースの共有化を行い、H27年3月末までに5例のデータを登録した。併せてEDC構築以前の臨床情報データベースの内容も入力した。また各症例について臨床情報とゲノム解析結果を統合して閲覧し、登録症例における各種結果の集計情報を表示可能なデータベースを構築し研究の進捗管理に利用した。
【バンデタニブの医師主導治験】医師主導治験が実施可能な7施設(国立がん研究センター東・中央病院、がん研有明病院、静岡がんセンター、兵庫県立がんセンター、四国がんセンター、九州がんセンター)で治験実施組織を構築した。H24年12月に「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたバンデタニブの多施設共同非無作為化非盲検第Ⅱ相試験」の治験実施計画書が完成、H24年11月19日にPMDAの薬事戦略相談を受け、H25年1月29日に治験計画届けを提出、2月21日に患者登録を開始した。H27年3月末までにLC-SCRUM-JapanでスクリーニングされたRET肺癌35例の内18例が本治験に登録され、残り1例の登録で試験が完了する。
【コンパニオン診断薬の開発】KIF5B/CCDC6-RET融合全8バリアントを検出するRT-PCRスクリーニング系、RET座の再構成を検出するbreak-apart FISH及びKIF5B-RET融合を検出するfusion FISHスクリーニング系を構築した。これらと並行して、RET融合遺伝子を含む複数の肺癌ドライバー変異を一度にかつ迅速に検出できるmultiplex遺伝子診断法の開発も行っており、微量のゲノムDNAから、ターゲットキャプチャーを用いて目的ゲノム領域を濃縮し、次世代シーケンサーで変異を検出するキットの開発が進行中である。今までに既知の遺伝子変異をもつ約30の細胞株や臨床検体で正確に遺伝子変異の検出が可能である。これらの結果をもとに薬事法承認を目指す体外診断薬キットの開発を開始している。
結論
本研究では、H24年3月に我が国で発見された肺癌の新規遺伝子異常であるRET融合遺伝子の臨床応用を目指している。H25年2月から、全国規模の遺伝子診断ネットワークであるLC-SCRUM-Japanをもとに、実際の臨床検体を用いたRET肺癌の遺伝子スクリーニングを実施している。その結果、H27年3月末現在、RET肺癌35例がスクリーニングされ、この内18例がバンデタニブの医師主導治験に登録されている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201409013B
報告書区分
総合
研究課題名
RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 功一(独立行政法人国立がん研究センター 東病院呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 葉 清隆(独立行政法人国立がん研究センター 東病院呼吸器内科)
  • 河野 隆志(独立行政法人国立がん研究センター 研究所)
  • 蔦 幸治(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院)
  • 土原 一哉(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 石井 源一郎(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 松本 慎吾(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 大津 敦(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター 研究支援センター)
  • 田村 友秀(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院)
  • 軒原 浩(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院)
  • 大江 裕一郎(独立行政法人国立がん研究センター 東病院)
  • 山本 信之(静岡県立静岡がんセンター)
  • 村上 晴泰(静岡県立静岡がんセンター)
  • 瀬戸 貴司(独立行政法人 国立病院機構 九州がんセンター)
  • 西尾 誠人(がん研究会有明病院)
  • 里内 美弥子(兵庫県立がんセンター)
  • 野上 尚之(独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H24年に新たに発見され、その頻度が肺癌の約1%と希少なRET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌(RET肺癌)を対象に、国内未承認の医薬品であるRETチロシンキナーゼ阻害薬 バンデタニブ(治験成分記号:ZD6474)の多施設共同非無作為化非盲検第II相試験を医師主導治験として実施し、薬事承認申請を目指す。
研究方法
全国規模の遺伝子診断ネットワークLung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Japan (LC-SCRUM-Japan)においてRET肺癌のスクリーニングを行い、医師主導治験である「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたバンデタニブの多施設共同非無作為化非盲検第II相試験」へ登録する。プライマリーエンドポイントは奏効割合、予定登録数17例、登録期間2年、追跡期間1年とした。更に、スクリーニング登録時点からEDCの導入・電子化を図り、参加施設から提供される臨床情報を迅速に集計し、研究事務局でゲノムバイオマーカーの情報を付加した臨床ゲノムデータベースを構築する。更に高いセキュリティーのもと遺伝子情報等閲覧可能なシステムを開発し、研究事務局と参加施設が情報共有を可能にする事でより高いデータの信頼性の確保とスクリーニングの迅速化を可能とする。
結果と考察
【遺伝子スクリーニングネットワーク】H24年10月に「RET融合遺伝子陽性肺癌の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにするための前向き観察研究」の研究計画書を作成し、本研究に基づいたRET融合遺伝子陽性肺癌のスクリーニング組織としてLC-SCRUM-Japanを組織し、H25年2月より遺伝子スクリーニングを開始した。H27年3月末現在、LC-SCRUM-Japanには47都道府県から196施設が参加し、予定通り全国規模の遺伝子診断ネットワークが構築されている。これまでLC-SCRUM-Japanには1536例の登録があり、1423例の遺伝子解析を行った結果、RET肺癌35例、同様に希少なROS1融合遺伝子陽性肺癌61例、ALK融合遺伝子陽性肺癌23例が発見されている。スクリーニング効率化のためEDCによる症例登録システムと臨床ゲノム情報を統合したデータベースの共有化を行い、H27年3月末までに5例のデータを登録した。併せてEDC構築以前の臨床情報データベースの内容も入力した。また各症例について臨床情報とゲノム解析結果を統合して閲覧し、登録症例における各種結果の集計情報を表示可能なデータベースを構築し研究の進捗管理に利用した。
【バンデタニブの医師主導治験】医師主導治験が実施可能な7施設(国立がん研究センター東・中央病院、がん研有明病院、静岡がんセンター、兵庫県立がんセンター、四国がんセンター、九州がんセンター)で治験実施組織を構築した。H24年12月に「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたバンデタニブの多施設共同非無作為化非盲検第Ⅱ相試験」の治験実施計画書が完成、H24年11月19日にPMDAの薬事戦略相談を受け、H25年1月29日に治験計画届けを提出、2月21日に患者登録を開始した。H27年3月末までにLC-SCRUM-JapanでスクリーニングされたRET肺癌35例の内18例が本治験に登録され、残り1例の登録で試験が完了する。
【コンパニオン診断薬の開発】KIF5B/CCDC6-RET融合全8バリアントを検出するRT-PCRスクリーニング系、RET座の再構成を検出するbreak-apart FISH及びKIF5B-RET融合を検出するfusion FISHスクリーニング系を構築した。これらと並行して、RET融合遺伝子を含む複数の肺癌ドライバー変異を一度にかつ迅速に検出できるmultiplex遺伝子診断法の開発も行っており、微量のゲノムDNAから、ターゲットキャプチャーを用いて目的ゲノム領域を濃縮し、次世代シーケンサーで変異を検出するキットの開発が進行中である。今までに既知の遺伝子変異をもつ約30の細胞株や臨床検体で正確に遺伝子変異の検出が可能である。これらの結果をもとに薬事法承認を目指す体外診断薬キットの開発を開始している。
結論
本研究では、H24年3月に我が国で発見された肺癌の新規遺伝子異常であるRET融合遺伝子の臨床応用を目指している。H25年2月から、全国規模の遺伝子診断ネットワークであるLC-SCRUM-Japanをもとに、実際の臨床検体を用いたRET肺癌の遺伝子スクリーニングを実施している。その結果、H27年3月末現在、RET肺癌35例がスクリーニングされ、この内18例がバンデタニブの医師主導治験に登録されている。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201409013C

収支報告書

文献番号
201409013Z