食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験

文献情報

文献番号
201409011A
報告書区分
総括
研究課題名
食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験
課題番号
H24-臨研推-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 宏委(京都大学医学部附属病院)
  • 矢野 友規(国立がん研究センター東病院)
  • 片岡 洋望(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 石原 立(大阪府立成人病センター)
  • 山本 佳宣(兵庫県立がんセンター)
  • 角嶋 直美(静岡県立静岡がんセンター)
  • 磯本 一(長崎大学病院)
  • 中村 哲也(獨協医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、食道がん化学放射線療法(chemoradiotherapy, CRT)または放射線治療(radiotherapy, RT)後の原発巣遺残再発に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた(Photodynamic therapy, PDT)の医師主導治験を実施し薬事承認を得ることである。
研究方法
食道がんCRT/RT後局所遺残再発例に対するME2906及びPNL6405EPGを用いた光線力学療法の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施する。対象は、50Gy以上のCRTまたはRT単独治療を施行され、原発巣に遺残再発が認められた症例。遺残再発病変の壁深達度は固有筋層(T2)まで。ME2906の投与量は20mg/kg。照射のタイミングは、ME2906投与後4-6時間後でPNL6405EPGの照射エネルギーは、100J/cm2とした。主要評価項目は、原発巣の局所完全奏効率(L-CR)とした。目標症例数は25例。治験調整事務局は、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターに設置した。
結果と考察
[結果]2012年9月に治験届けを提出し2012年11月に第一例目を登録した。2013年度中に目標症例25例(実際は26例)が登録され、2014年5月に最終登録例の最終観察が終了し、2014年6月に治験終了届けを提出した。1)登録症例数と達成度は以下の通りである。静岡県立静岡がんセンター:3例(予定2例、達成率150%)兵庫県立がんセンター:4例(予定3例、達成率133%)京都大学病院:6例(予定5例、達成率120%)国立がん研究センター東病院:7例(予定7例、達成率100%)名古屋市立大学附属病院: 3例(予定3例、達成率100%)大阪府立成人病センター:3例(予定6例、達成率50%)長崎大学附属病院:0例(予定2例、達成率0%)2)被験者の内訳は以下の通りである。・年齢中央値:71.5歳(51-86)・男女比:すべて男性・化学放射線療法前 Tstage T1b:14例、T2:6例、T3:6例・光線力学療法前評価:再発:21例 遺残:5例・光線力学療法前 Tstage T1b:19例、T2:7例(病変ごと、T1b:21病変、T2:7病変)3)有効性評価:外部評価者3名による中央判定では、 局所完全奏効率(L-CR)は、88.5%(23/26)と極めて高い有効性を示した。副次的評価項目である4週間のインターバルをおいた確定局所完全奏効率も88.5%(23/26)であった。4)安全性評価:重篤な有害事象は認めなかった。5)総括報告書2014年8月1日に総括報告書を固定した。6)2014年年9月22日にMeiji Seika ファルマ社および同年10月1日にパナソニックヘルスケア社がそれぞれ薬事承認申請を行った。PMDAからの照会事項に適切に対応し、2015年5月26日に薬事承認された。7)GCP実地調査:2015年1月に、治験調整事務局がある京都大学病院および実施医療機関の兵庫県立がんセンターが、PMDAの信頼性調査を受け、問題がないことが確認された。8)トレーニング講習会のための資料作成:薬事承認後の医療機器トレーニング講習会のためのテキストを作成した。本医師主導治験を、期間内に終了させ薬事承認させることができた。
[考察]食道がんは、難治がんのひとつであり進行期(ステージII/III/IV)症例の予後は極めて悪い。CRTは食道がんに対する臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本治験結果により、高い奏効率と安全性が示されたため、根治的な化学放射線療法で食道がんが残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が実地臨床でもできることになる。この成果は、厚生労働省のがん医療政策で掲げる「癌患者の5年生存率を20%向上させる」ことに貢献できると期待できる。また、本治療法は根治的な低侵襲治療であるため、患者への貢献度は極めて高いと考える。
結論
食道がんCRT/RT後の遺残再発に対する救済治療に関する医師主導治験を実施し、完全奏効率88.5%と極めて高い有効性が示された。また、研究期間内に、薬事承認申請およびトレーニング講習用テキストを作成した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201409011B
報告書区分
総合
研究課題名
食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験
課題番号
H24-臨研推-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 笠井 宏委(京都大学医学部附属病院)
  • 伊藤 達也(京都大学医学部附属病院)
  • 矢野 友規(国立がん研究センター東病院)
  • 片岡 洋望(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 石原 立(大阪府立成人病センター)
  • 飯石 浩康(大阪府立成人病センター)
  • 山本 佳宣(兵庫県立がんセンター)
  • 西崎 朗(兵庫県立がんセンター)
  • 角嶋 直美(静岡県立静岡がんセンター)
  • 磯本 一(長崎大学病院)
  • 中村 哲也(獨協医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食道がん化学放射線療法(chemoradiotherapy, CRT)または放射線治療(radiotherapy, RT)後の原発巣遺残再発に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた光線力学療法(Photodynamic therapy, PDT)の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施し薬事承認を得ることである。また、承認申請に必要な非臨床試験データ(食道がん細胞に対する有効性と翌日照射の有効性と安全性に関するデータ)も補充する。
研究方法
○医師主導治験
食道がんCRT/RT後局所遺残再発例に対するME2906及びPNL6405EPGを用いたPDTの医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施する。対象は、50Gy以上のCRTまたはRT単独治療を施行され、原発巣に遺残再発が認められた症例。遺残再発病変の壁深達度は固有筋層まで。ME2906の投与量は20mg/kg。照射のタイミングは、ME2906投与後4-6時間後でPNL6405EPGの照射エネルギーは、100J/cm2とした。主要評価項目は、原発巣の局所完全奏効率(L-cCR)とした。目標症例数は25例。治験調整事務局は、京都大学医学部附属病院臨床研究総合センターに設置した。
○非臨床試験
1)食道がん細胞における有効性:ヒト食道癌細胞株(TE5およびTE10)に対するME2906とPNL6405 EPGを用いたPDTの殺細胞効果をin vitroで検証した。2)翌日照射の有効性と安全性評価:本医師主導治験では、レーザ照射翌日に「照射漏れ」があるか否かを確認し、照射漏れがあれば、追加照射することにしている。医薬品医療機器審査機構(PMDA)の対面助言では、追加照射することの安全性と有効性に関して非臨床データをそろえることが承認申請へのひとつの条件とされたため、マウス移植腫瘍を用いて検討を行った。なお本実験はGLP基準で実施した。
結果と考察
[結果]○医師主導治験:2012年9月に治験届を提出し、2012年11月には第一例目を登録した。2013年度中に目標症例25例(実際は26例)が登録され、2014年5月に最終登録例の最終観察が終了し、2014年6月に治験終了届を提出した。被験者の内訳は以下の通りである。・年齢中央値:71.5歳(51-86)・男女比:すべて男性 ・化学放射線療法前 Tstage T1b:14例、T2:6例、T3:6例・PDT前評価:再発:21例 ・遺残:5例 ・PDT前 Tstage T1b:19例、T2:7例(病変ごと、T1b:21病変、T2:7病変)3)有効性評価 外部評価者3名による中央判定では、局所完全奏効率(L-CR)は、88.5%(23/26)と極めて高い有効性を示した。副次的評価項目である4週間のインターバルをおいた確定局所完全奏効率も88.5%(23/26)であった。4)安全性評価は重篤な有害事象は認めなかった。5)総括報告書は2014年8月1日の総括報告書を固定した。 6)薬事承認申請 2014年年9月22日にMeiji Seika ファルマ社および同年10月1日にパナソニックヘルスケア社がそれぞれ薬事承認申請を行った。PMDAからの照会事項に適切に対応し、2015年5月26日に薬事承認された。○非臨床試験:1)ヒト食道がん細胞における有効性が示された。2)マウス腫瘍移植モデルを用いた翌日照射の有効性と安全性が示された。
[考察]CRTは食道がんに対する臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本治験結果により、高い奏効率と安全性が示されたため、根治的なCRTで食道がんが残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が実地臨床でもできることになる。また、本治療法は根治的な低侵襲治療であるため、患者への貢献度は極めて高いと考える。
結論
この成果は、厚生労働省のがん医療政策で掲げる「癌患者の5年生存率を20%向上させる」ことに貢献できると期待できるとともにアカデミアにおける医師主導治験の実施体制のモデルケースになると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201409011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、多施設型医師主導治験の実施体制を構築し、非臨床試験も加えて薬事承認、保険収載された。治験調整事務局が効果的に機能し、治験終了と薬事承認申請まで行えたことは、今後の多施設型医師主導治験のあり方のモデルになると考える。また、食道がんに対する化学放射線療法後の遺残再発症例という、治療抵抗性でかつリスクの高い対象症例に対する根治的治療法を開発したことは、アンメッドニーズ開発をアカデミアが行うモデルになると考える。
臨床的観点からの成果
食道がんに対する化学放射線療法は臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要であった。しかし、救済治療としての外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越え、抗がん薬治療では根治は期待できない。本治験により、光線力学療法が高い奏効率と安全性を示したことは、「根治的」かつ「低侵襲」な救済治療の開発として臨床的意義が高いと考える。
ガイドライン等の開発
本研究で開発された「食道がんに対する化学放射線療法後の遺残再発に対する光線力学療法」では、医療機器としてレーザ装置を使用するため、新規医療機器に関するトレーニングプログラムとして、基本操作に関わる医師を対象とした講習会のテキストのひな形を作成し、講習会を実施した。すでに全国の内視鏡医200名以上が受講している。
その他行政的観点からの成果
この成果は、厚生労働省のがん医療政策で掲げる「癌患者の5年生存率を20%向上させる」ことに貢献できると期待できるとともにアカデミアにおける医師主導治験の実施体制のモデルケースになると考える。 診療報酬の低さが普及の足かせになっていたが、増点要望に対し平成30年度診療報酬改定で増点が認められた(6,300点→14,510点)
その他のインパクト
本成果は共同通信社のweb配信され、以下の新聞社、報道機関で掲載された。
東京新聞、京都新聞、河北新報 、福井新聞 、新潟日報 、四国新聞 、中日新聞、北海道新聞 、千葉日報、マイナビニュース、宮崎日日新聞 、徳島新聞、山陰中央新報、上毛新聞ニュース 、西日本新聞 、長崎新聞、神戸新聞 、秋田魁新報 、東奥日報 、福島民報 、47NEWS 。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
扁平上皮がんに対する化学放射
詳細情報
分類:
特許番号: 2014-194379
発明者名: 武藤 学、佐々木博己、青柳和彦
権利者名: 国立大学法人京都大学・国立がん研究センター
出願年月日: 20140924
国内外の別: 国内
特許の名称
光線力学療法のための新規糖鎖連結光感受性物質
詳細情報
分類:
特許番号: 2013-161518
発明者名: 片岡洋望、林則之、城卓志、矢野重信
権利者名: 名古屋市立大学
出願年月日: 20130802
国内外の別: 国内
特許の名称
呼気採取袋及び呼気採取セット
詳細情報
分類:
特許番号: 2013-027027
発明者名: 武藤 学、青山 育雄、上坂 亜紀、杉村真理子、田中 克之
権利者名: 国立大学法人京都大学、エフアイエス株式会社
出願年月日: 20130214
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinya Ohashi, Osamu Kikuchi, Mihoko Tsurumaki, et al.
Preclinical validation of talaporfin sodium-mediated photodynamic therapy for esophageal squamous cell carcinoma.
PLOS ONE , 9 (8) , e103126-  (2014)
doi: 10.1371/journal.pone.0103126. eCollection
原著論文2
Yoko Mashimo, Yasumasa Ezoe, Kosuke Ueda, et al.
Salvage photodynamic therapy is an effective and safe treatment for patients with local failure after definitive chemoradiotherapy for esophageal squamous cell carcinoma.
Journal of Cancer Therapy , 5 (7) , 647-656  (2014)
DOI:10.4236/jct.2014.57073
原著論文3
Tomonori Yano, Hiroi Kasai, Manabu Muto, et al.
A multicenter phase II study of salvage photodynamic therapy using talaporfin sodium (ME2906) and a diode laser (PNL6405EPG) for local failure after chemoradiotherapy or radiotherapy for esophageal cancer
Oncotarget,  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2019-06-10

収支報告書

文献番号
201409011Z