網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究-GCPに準拠した遺伝子治療臨床研究-

文献情報

文献番号
201409010A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜色素変性に対する視細胞保護遺伝子治療臨床研究-GCPに準拠した遺伝子治療臨床研究-
課題番号
H24-臨研推-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 達朗(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 康博(国立大学法人 九州大学 眼科)
  • 中西 洋一(国立大学法人 九州大学 ARO次世代医療センター)
  • 米満 吉和(国立大学法人 九州大学 革新的バイオ医薬創成学)
  • 吉田 茂生(国立大学法人 九州大学 眼科)
  • 戸高 浩司(国立大学法人 九州大学 ARO次世代医療センター)
  • 江内田 寛(国立大学法人 佐賀大学 眼科)
  • 村上 祐介(国立大学法人 九州大学 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
29,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、難治性疾患である網膜色素変性(retinitis pigmentosa: RP)に対する新しい治療法として、国産新規遺伝子治療用ベクターである第3世代アフリカミドリザル由来サル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus: SIV)ベクターを用いた視細胞保護遺伝子治療臨床研究(安全性試験)のGCPに準拠した実施と臨床研究データの集積を目的として、1.臨床研究薬(SIV-hPEDF)の網膜下投与の安全性確認、2.臨床研究薬の網膜下投与の治療効果の評価と原因遺伝子との因果関係の検討、3.GCPに準拠した臨床研究データ収集・評価、4.臨床研究実施から製剤化へ向けた準備、という4つのテーマで研究を行う。
研究方法
1.本臨床研究は、オープンラベル、2段階用量漸増式で、安全性の確認を主眼とした臨床研究であり、臨床研究実施計画書の記載に基づいて実施される。被験者に本臨床研究参加への同意取得を行った後、適格基準の確認を行い、臨床研究薬の投与を行う。投与後24ヶ月までを観察期間とし、有害事象の発生、疾患に対する検査、一般検査、臨床症状などから安全性を評価する。
2.遺伝子治療臨床研究の被験者それぞれにおける治療効果と原因遺伝子の因果関係を検討するために、被験者の原因遺伝子検索を実施する体制を整備する。
3.九州大学病院ARO次世代医療センターが支援し、GCPに準拠した書類の作成整備や報告書作成、モニタリング、データマネジメント、安全性情報管理、遺伝子治療臨床研究指針で求められる有害事象報告等の規制当局対応を担当する。
4.臨床研究実施のための準備として、ベクターの受入試験ならびに、臨床研究実施期間中の生体材料(血液、尿、他)を用いた各種検査法(ベクターゲノム検出、各種サイトカイン測定など)の適正化を行い、手順に従って各種検査を適切に実施する。また、本臨床研究薬の製剤化へ向けた準備として、大量生産に対応可能な施設でのベクター製造を実施する。
結果と考察
1.平成24年8月に厚生労働大臣より臨床研究実施計画の了承を取得し、平成25年3月より遺伝子治療臨床研究を開始し、低用量群として、5例がスクリーニング検査結果に基づき適応ありと判断された後に、臨床研究薬を投与するに至った。低用量群5例すべてにおいて、28日目までに重篤な有害事象を認めなかった。また、RP-03(第3症例)で右膝関節鏡手術という重大事態を認めたが、臨床研究薬との因果関係はないと判断され、これまでに臨床研究の中止に至るような重篤な有害事象もこれまでに確認されていない。来年度は、高用量群15名への投与を開始する予定である。
2.同意の得られた被験者3名から採取した前房水において、投与後6ヶ月、12ヶ月の時点で、ヒト色素上皮由来因子濃度(PEDF)が投与前よりも上昇しており、眼内で遺伝子が発現していることが確認できた。また、既知の原因遺伝子を検出するためのプライマーやプローブを設計し、適正化した。さらに、全ゲノム解析による原因遺伝子検索を実施するため、東北大学眼科、理化学研究所横浜キャンパスと共同研究を開始する手続きを完了した。治療遺伝子であるヒト色素上皮由来因子の眼内での発現を確認できたことより、これまでの動物実験で得られた知見と同様の結果がヒトにおいても証明され、視細胞保護効果が期待できる状況であることが明らかとなった。原因遺伝子検査を実施する体制は共同研究実施により十分整備されたので、必要な時期に速やかに検査を実施することが可能となった。
3.各種業務手順書に従ってGCPに準拠したデータ収集を実施した。RP-03の投与後1年2ヶ月に発生した重大事態を受け、有害事象報告等の規制当局対応を実施した。引き続き症例を追加しながら、臨床研究を進めていく予定となっている。
4.生体材料を用いた各種検査を昨年度に引き続き適切に実施した。製剤化へ向けた準備として、大量生産に対応可能な施設で生産されたベクターの品質試験と国内輸入後の受入試験を実施し、現在測定中の感染力価測定を除くすべての項目で適格であった。平成26年11月6日に医薬品医療機器総合機構の事前面談を受けた。その結果、「治験薬製造」、「治験薬非臨床試験」、「治験実施」のカテゴリー別に今後は事前面談、さらには対面助言を受けることとなった。臨床研究を推進するための各種検査法は整備され、スムーズに実施できている。また、製剤化へ向け、当局対応しながら医師主導治験(Phase I/II)実施の準備を進めていく。
結論
当初の研究計画からやや遅れているが、遺伝子治療臨床研究は順調に実施されている。引き続き、高用量群の症例を追加しながら、臨床研究を進めていく。また、製剤化へ向け、当局対応しながら医師主導治験実施の準備を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201409010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
37,830,000円
(2)補助金確定額
37,830,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,954,951円
人件費・謝金 1,924,486円
旅費 3,046,300円
その他 5,174,263円
間接経費 8,730,000円
合計 37,830,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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