文献情報
文献番号
201408010A
報告書区分
総括
研究課題名
24時間機能可能な携帯型人工膵臓の開発
課題番号
H25-医療機器-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 昌治(東京大学 生産技術研究所)
研究分担者(所属機関)
- 興津 輝(東京大学 生産技術研究所)
- 大谷内 哲也(テルモ株式会社 ホスピタルカンパニー)
- 川原 圭博(東京大学 大学院情報理工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替
氏名 高橋 正幸(平成26年4月1日~26年12月31日)→氏名 大谷内 哲也(平成26年12月31日以降)
研究分担者追加
氏名 川原 圭博(平成26年9月18日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
生体における血液中のグルコース濃度(血糖値)の恒常性維持の破綻は生命の危機につながるため、インスリン依存状態糖尿病の治療として、血糖値を24時間モニタリングし、安定した血糖値維持を可能とするインスリン製剤の投与システムである携帯型人工膵臓の開発が求められている。本研究では24時間測定可能な連続グルコース測定センサモジュールの開発を行い、ラットを用いた概念実証を目指す。本年度はシステムに必要不可欠な連続グルコースセンサの実用化に向けて、糖応答性蛍光ゲルの有効性と安全性を検証することを目的とした。
研究方法
グルコース応答性蛍光ゲルの有効性を示すため、生体内安定性の向上(劣化対策)の検討に取り組んだ。抗酸化能を付与した蛍光ゲルを作製し、過酸化水素溶液への浸漬に対する保護効果とグルコース測定性能を検証した。さらに、抗酸化能を付与した蛍光ゲルをラットの背中に1週間埋植し、埋植前後における生体内劣化の差異についても評価した。
グルコース応答蛍光ゲルは生体内に長期間留置する必要があるため、ラットへの蛍光ゲル埋植による全身毒性評価(血液生化学的検査及び器官の病理検査)と局所刺激の評価(蛍光ゲル周辺組織の病理評価)を実施した。
また、昨年度作製した反射型測定装置を用い、自由行動下ラットの測定へ向けて無線測定の安定化と耳へのファイバー固定方法について検討を進めた。さらに麻酔下における糖負荷実験を行い、連続グルコース測定センサモジュールの性能を検証した。
グルコース応答蛍光ゲルは生体内に長期間留置する必要があるため、ラットへの蛍光ゲル埋植による全身毒性評価(血液生化学的検査及び器官の病理検査)と局所刺激の評価(蛍光ゲル周辺組織の病理評価)を実施した。
また、昨年度作製した反射型測定装置を用い、自由行動下ラットの測定へ向けて無線測定の安定化と耳へのファイバー固定方法について検討を進めた。さらに麻酔下における糖負荷実験を行い、連続グルコース測定センサモジュールの性能を検証した。
結果と考察
in vitro評価では、過酸化水素による劣化からの保護効果が得られることが示唆された。また、抗酸化能の付与によって蛍光ゲルのグルコース測定性能が低下しない傾向が確認された。ラット背部へ1週間埋め込んだ生体内劣化評価では、抗酸化能を付与した蛍光ゲルの方が無処理蛍光ゲルよりも蛍光残存率は高いとの結果を得た。しかし、本結果はin vitroの結果から予想される効果よりも小さいため、今後他の生体内物質による劣化からの保護なども検討する必要がある。
安全性に関して、生体内埋植を念頭に、埋植期間は7,14,28,60日を設定した。全身毒性の評価では、設定した項目に対して異常値及び異常所見は無かった。局所刺激性の評価では、通常陰性対照として用いられるポリウレタンシートと比較しても刺激性が低いとの結果を得た。
反射型測定装置については、定電流回路を実装し無線測定の安定化をはかった。標準蛍光板を用いた24時間測定で測定安定性を実証した。耳への固定には専用接着治具と歯科用セメントを利用し測定用光ファイバー先端と蛍光ゲルとの位置関係が変化しにくい固定方法を開発した。麻酔下糖負荷実験において、6時間ほどは安定した測定が可能であった。しかし、実際の血糖値に比べ蛍光強度の変化に遅れが観察されたため、固定の仕方・埋植の場所などを選定し検討する必要がある。
安全性に関して、生体内埋植を念頭に、埋植期間は7,14,28,60日を設定した。全身毒性の評価では、設定した項目に対して異常値及び異常所見は無かった。局所刺激性の評価では、通常陰性対照として用いられるポリウレタンシートと比較しても刺激性が低いとの結果を得た。
反射型測定装置については、定電流回路を実装し無線測定の安定化をはかった。標準蛍光板を用いた24時間測定で測定安定性を実証した。耳への固定には専用接着治具と歯科用セメントを利用し測定用光ファイバー先端と蛍光ゲルとの位置関係が変化しにくい固定方法を開発した。麻酔下糖負荷実験において、6時間ほどは安定した測定が可能であった。しかし、実際の血糖値に比べ蛍光強度の変化に遅れが観察されたため、固定の仕方・埋植の場所などを選定し検討する必要がある。
結論
本年度は、グルコース応答性蛍光ゲルの測定安定性向上と埋植安全性の評価、蛍光センサデバイスの開発を実施した。測定安定性の向上については、昨年度から引き続きin vitroでは抗酸化能の付与による安定性の向上を検討し、in vivoでも抗酸化能の付与により安定性が向上することが示唆された。しかし、その効果は連続測定を実施するのに充分ではなく、今後、in vivoとin vitroの結果に差異が生じる理由を検討し、課題の解決を図る必要がある。埋植安全性の評価では、全身毒性及び局所刺激性共に影響が低いとの結果を得られた。ただし、これは現時点の組成での評価であり、最終組成にてもう一度行う必要がある。測定装置は無線での安定した測定を確認し、耳への固定方法に関する考察を得ることができた。自由行動ラット測定と定量的な測定に向けて、埋植部位の選定、測定装置の改良を行っていく必要がある。次年度へ向けては本年度の結果を元に評価の遅れている測定精度の検証を進める。既存の連続グルコース測定モジュールと比較することで、本測定モジュールの有効性を示していく。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-