文献情報
文献番号
201407035A
報告書区分
総括
研究課題名
プロテオミクスを活用した次世代コンパニオン診断薬の創出に向けた基盤技術研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-バイオ-指定-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
米田 悦啓(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
- 朝長 毅(独立行政法人医薬基盤研究所)
- 仲 哲治(独立行政法人医薬基盤研究所)
- 角田 慎一(独立行政法人医薬基盤研究所)
- 平野 久(横浜市立大学大学院国際総合科学研究科)
- 山田 哲司(国立がん研究センター研究所)
- 中山 敬一(九州大学生体防御医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
76,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最適な個別化医療の実現のためには、治療薬(主に分子標的薬)の効果や副作用を予測し、投薬が適切な患者を選定するためのコンパニオン診断薬の開発が急務である。現在は、標的分子の遺伝子変異の有無で薬効予測をしているが、特定の遺伝子変異だけで薬効予測をすることには限界があることが明らかになってきており、ゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームなど多角的かつ包括的な解析によるコンパニオン診断薬の開発が必須である。特にタンパク質、その中でもキナーゼは、薬剤ターゲットの中心であり、コンパニオン診断薬の開発には、そのキナーゼの活性化状態を調べることが重要である。さらに、薬剤耐性に関わる活性化キナーゼが同定できれば、そのキナーゼ阻害剤を用いることで薬剤耐性を克服できる可能性が生まれる。本研究では、最新のリン酸化プロテオミクス技術を活用して、キナーゼ活性化状態を網羅的に捉えることにより、薬剤感受性が予測可能な次世代コンパニオン診断薬を創出することを目的とする。
研究方法
1.リン酸化タンパク質のハイスループット定量プロテオミクス解析法の構築
2.チロシンリン酸化ペプチド濃縮法の改良
3.網羅的リン酸化プロテオミクス情報を活用したキナーゼ活性定量法(KSEA法)の確立
4.タンパク質マイクロアレイ等を用いたリン酸化タンパク質定量
5.血中Exosomeを用いたコンパニオンマーカー検出系の確立
6.非小細胞肺がん培養細胞のエルロチニブ耐性克服標的およびコンパニオンマーカー探索
7.卵巣がんにおけるシスプラチン耐性克服標的およびコンパニオンマーカー探索
8.トリプルネガティブ乳がんのプロパゲルマニウム治療に対するコンパニオンマーカーの同定
2.チロシンリン酸化ペプチド濃縮法の改良
3.網羅的リン酸化プロテオミクス情報を活用したキナーゼ活性定量法(KSEA法)の確立
4.タンパク質マイクロアレイ等を用いたリン酸化タンパク質定量
5.血中Exosomeを用いたコンパニオンマーカー検出系の確立
6.非小細胞肺がん培養細胞のエルロチニブ耐性克服標的およびコンパニオンマーカー探索
7.卵巣がんにおけるシスプラチン耐性克服標的およびコンパニオンマーカー探索
8.トリプルネガティブ乳がんのプロパゲルマニウム治療に対するコンパニオンマーカーの同定
結果と考察
1.プロテオーム解析の前処理法の改良により、リン酸化タンパク質解析のハイスループット化及び解析深度の両立を成し遂げた。また、リン酸化タンパク質プロテオームデータから、活性化キナーゼを予測するインフォマティクス解析法(KSEA法)の開発を行った。さらに、非小細胞肺がん培養細胞を用いて、タンパク質、リン酸化タンパク質およびATP結合タンパク質の解析を組み合わせた重層的プロテオーム解析により、エルロチニブ感受性マーカーおよびエルロチニブ耐性克服標的候補となる多くのキナーゼを同定することに成功した。
2.プラチナ製剤耐性におけるANXA4の機能ドメインを解明する事に成功した。さらに、ANXA4の発現抑制がプラチナ製剤感受性を高めることにつながることから、卵巣がん組織におけるANXA4の発現量を解析することがプラチナ製剤のコンパニオン診断薬となり得る事が示唆された。
3.低侵襲な次世代コンパニオン診断法の開発に向け、近年、がん細胞から多く分泌されることが報告されているExosomeに着目し、肺がん発症のドライバー遺伝子の1つであるEML4-ALK融合遺伝子を血中から検出可能な系の確立を試みた。その結果、NCI-H2228細胞の培養上清中およびゼノグラフトモデルマウスの血漿中ExosomeからのEML4-ALK融合遺伝子の検出に成功した。
4.卵巣明細胞腺がん(CCA)由来の細胞株を用いたリン酸化プロテオームの比較定量解析により、がん抑制因子ARID1A・Brg1のリン酸化ペプチドレベルがCCA特異的に低下していることが明らかになった。また、上皮間葉移行(EMT)を利用して肺腺がん予後予測マーカー候補リン酸化タンパク質を検出することができた。
5.95種のがん細胞株で、180種の代表的なシグナル伝達タンパク質のリン酸化を解析し、統計学的な解析で肝細胞がん特異的なシグナル伝達系の活性化を見出すことが可能であった。
6.ユビキチンリガーゼFbxw7は、がんで高率に変異が見つかるがん抑制遺伝子産物であり、細胞増殖を促すタンパク質の分解を誘導する。今回、Fbxw7ががん周囲の骨髄由来細胞からのCCL2分泌を抑制し、がん転移を抑制していることを突き止めた。さらに既存薬プロパゲルマニウムがCCL2の作用を阻害することによってがん転移を抑制すること、そしてFbxw7の発現量がトリプルネガティブ乳がんに対するプロパゲルマニウムのコンパニオン診断として利用できることを実証した。
2.プラチナ製剤耐性におけるANXA4の機能ドメインを解明する事に成功した。さらに、ANXA4の発現抑制がプラチナ製剤感受性を高めることにつながることから、卵巣がん組織におけるANXA4の発現量を解析することがプラチナ製剤のコンパニオン診断薬となり得る事が示唆された。
3.低侵襲な次世代コンパニオン診断法の開発に向け、近年、がん細胞から多く分泌されることが報告されているExosomeに着目し、肺がん発症のドライバー遺伝子の1つであるEML4-ALK融合遺伝子を血中から検出可能な系の確立を試みた。その結果、NCI-H2228細胞の培養上清中およびゼノグラフトモデルマウスの血漿中ExosomeからのEML4-ALK融合遺伝子の検出に成功した。
4.卵巣明細胞腺がん(CCA)由来の細胞株を用いたリン酸化プロテオームの比較定量解析により、がん抑制因子ARID1A・Brg1のリン酸化ペプチドレベルがCCA特異的に低下していることが明らかになった。また、上皮間葉移行(EMT)を利用して肺腺がん予後予測マーカー候補リン酸化タンパク質を検出することができた。
5.95種のがん細胞株で、180種の代表的なシグナル伝達タンパク質のリン酸化を解析し、統計学的な解析で肝細胞がん特異的なシグナル伝達系の活性化を見出すことが可能であった。
6.ユビキチンリガーゼFbxw7は、がんで高率に変異が見つかるがん抑制遺伝子産物であり、細胞増殖を促すタンパク質の分解を誘導する。今回、Fbxw7ががん周囲の骨髄由来細胞からのCCL2分泌を抑制し、がん転移を抑制していることを突き止めた。さらに既存薬プロパゲルマニウムがCCL2の作用を阻害することによってがん転移を抑制すること、そしてFbxw7の発現量がトリプルネガティブ乳がんに対するプロパゲルマニウムのコンパニオン診断として利用できることを実証した。
結論
コンパニオン診断薬開発のための種々のプロテオーム基盤技術を開発した。その技術を用いて、非小細胞肺がんに対するエルロチニブ、卵巣がんに対するシスプラチン、トリプルネガティブ乳がんに対するプロパゲルマニウムのコンパニオン診断薬候補タンパク質を同定した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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