高速シークエンサーを用いた包括的臨床遺伝子検査システムの構築

文献情報

文献番号
201407029A
報告書区分
総括
研究課題名
高速シークエンサーを用いた包括的臨床遺伝子検査システムの構築
課題番号
H25-創薬-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
萩原 弘一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 磯部 宏(KKR札幌医療センター 腫瘍内科)
  • 弦間 昭彦(日本医科大学 呼吸器内科)
  • 石井 芳樹(獨協医科大学 呼吸器内科)
  • 久保田 馨(日本医科大学 がん診療センター)
  • 小林 国彦(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)
  • 西條 康夫(新潟大学 臨床腫瘍学)
  • 吉澤 弘久(埼玉医科大学ゲノム医学研究センター ゲノム医学)
  • 岡崎 康司(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター 呼吸器内科)
  • 前門戸 任(新潟大学 呼吸器内科)
  • 大泉 聡史(北海道大学 呼吸器内科)
  • 鈴木 朋子(公立大学法人福島県立医科大学 漢方医学)
  • 砂長 則明(国立大学法人群馬大学 呼吸器•アレルギー内科)
  • 井上 彰(東北大学病院 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高速シークエンサーを用いて,多数の薬剤関連遺伝子を同時に測定可能で,臨床使用可能なシステムを構築する.本研究の目的は,既承認の分子標的薬等をより効果的に使用することを目的としたコンパニオン診断薬開発に相当するが,将来承認される薬剤のコンパニオン診断薬を容易に開発する手段を同時に提供する.本研究は肺癌を対象として行うが,他臓器悪性腫瘍に容易に応用可能と考えられる
研究方法
(1)患者検体採取法
 我々の提唱したDNA検査用検体採取法は,すでに日本の標準となっている.RNAも含んだ手順も提唱したが,ファイザー社のRT-PCR無償検査用に採用され,日本の標準になりつつある.
(2)システムのDNA部分
 イルミナ社のMiSeqを用いて作成.すでに実用レベルに完成している.READあたりのエラー率は0.001を切っており,肺癌遺伝子検査の要件である「1%の癌細胞を含む検体からの変異遺伝子検出」を感度,特異度とも0.99で実現した.今後,肺癌治療に直接応用可能な新遺伝子が報告された場合も,容易に検査項目として追加可能と考えられる.
(3)システムのRNA部分
 この完成が第一年度の目標であったが完成した.RT-PCR反応産物をシークエンスし,ALK融合遺伝子,ROS融合遺伝子,RET融合遺伝子の有無を同時判定する.DNA部分と同時に泳動するため,コストが抑えられる.
(4)臨床検体での性能試験
 本研究分担者を中心として収集している肺癌臨床検体を使用し,システムが良好に稼働することを検証する.研究期間内の目標:第二~三年度で臨床検体における妥当性を検証し,商業化を図る.
結果と考察
高速シークエンサーによる遺伝子検査システムのを完成した.本研究で開発中の高速シークエンサーシステムは98検体を同時検査できる.現在,日本の検査会社は一日100検体程度を検索しているため,本検査は適切な規模である.検査は,反応時間一日,泳動時間一日の二日で終了する.結果返却期間として一週間以内が適切とされているが,それに適合する.EGFR,KRAS,ALK・ROS・RET融合遺伝子を検査したときの一名あたり消耗品代は2500円程度と試算している.さらにREAD数に余裕があり,将来見つかると推定される新たな遺伝子の追加にも耐えられる.
結論
肺癌検体(現在,埼玉医科大学に年間送付される症例数から考察し,2年で1000例程度になると想定される)に適用し,臨床検体使用での妥当性(検査不能割合,既存のEGFR検査法PNA-LNA PCR clamp法との結果比較)を検討する.
当該研究の特色・独創的な点:高速シークエンサーは主として基礎研究に使用されており,診断薬としての開発は遅れている.世界最大の高速シークエンサー会社であるイルミナ社の臨床開発担当者は,アジアで一名のみという(昨年末:イルミナ社の話).新規遺伝子を容易に追加可能で,医療経済的に妥当なシステムが高速シークエンサーであることは,本システムの完成部分の結果を見ても自明である.2013年6月14日,アメリカ最高裁で遺伝子特許が認められないことが確定し,特許の面からも本研究のような複数遺伝子を同時検索する検査は施行が容易になった.本研究は,現在までの経験を生かし,高速シークエンサー臨床応用を世界に先駆けて進めるものとなる.本研究は既にPMDAの薬事戦略相談を受けており,その助言に従って研究を進めて行く.

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201407029Z