能登半島における国産麻黄生産拠点の構築

文献情報

文献番号
201407024A
報告書区分
総括
研究課題名
能登半島における国産麻黄生産拠点の構築
課題番号
H25-創薬-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
御影 雅幸(東京農業大学 農学部バイオセラピー学科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 太(東京農業大学 農学部バイオセラピー学科 )
  • 三井 裕樹(東京農業大学 農学部バイオセラピー学科 )
  • 高野 昭人(昭和薬科大学 薬学部)
  • 佐々木 陽平(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 三宅 克典(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 國本 崇(徳島文理大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 マオウ科のマオウ属植物(Ephedra spp.)は世界中に約50種が自生しており、古来各地で薬用植物として利用されてきた。中国医学(漢方)では地上部草質茎が「麻黄」の名称で使用され、葛根湯を始めとする著名な処方に配合される重要生薬である。現行の『日本薬局方』では麻黄の原植物として3種(E. sinica stapf, E. intermedia Schrenk et C.A.Meyer, E. equisetina Bunge)が規定され、さらに総アルカロイド含量(エフェドリンとプソイドエフェドリンの和)として0.7%以上含有する必要がある。マオウ属植物は日本に自生しないため、現在は必要量(年間約500トン)の全量を中国からの輸入に依存しているが、中国政府は1999年から輸出規制を行っており、今後の継続的な供給が懸念されている。そこで本研究では、麻黄の国内生産を目指して、能登半島を中心に栽培拠点を構築することを目的とする。
研究方法
 (1)栽培種ならびに系統の選択、(2)品種改良、(3)種苗生産法に関する研究、(4)定植苗の活着率向上に関する研究、(5)栽培適地の選定、(6)栽培条件の研究、(7)アルカロイド高含量のための栽培条件の探索、(8)栽培拠点の構築、(9)有効成分その他含有成分の解明、(10)栽培地保護対策などに関する調査研究を行なう。
結果と考察
(1)栽培適種はEphedra sinica Stapfであると判断した。一方,同一場所で栽培されたE. sinica と E. equisetina を検討した結果、後者の方が有意にアルカロイド含量が高いことが明らかになったことから、E. equisetina栽培も始めた。また、茎が立つ株は収穫しやすいが地面に伏す株は収穫しにくいことなどが明らかになった。
(2)アルカロイド含量が高いE. equisetina (♂株)と栽培しやすいE. sinica(♀株)との交配を試みた結果、8粒の種子を得た。優良品種の開発が期待される。今後はE. intermediaとの交配も行いたい。
(3)中型温室内などで3323粒の種子を得た。挿し木では新たにミスト法を検討し、好成績を得た。今年度の種苗生産保有数は総計11,827株となった。今後は、一般農家で人工気象器やミスト法などに頼らず挿し木苗を生産する方法を検討する必要がある。
(4)ペーパーポットに播種して育成した苗(計72株)をそのまま定植した結果、すべて活着した。移植時のストレスが少ないことが関係しているものと考える。
(5)畑地と砂地での生育は良好であったが、水田跡地の成績は悪かった。今後は海岸砂地など他の作物が栽培できないような場所での栽培も検討したい。
(6)肥料条件は窒素(N)を与えることで草質茎の成長が促進されることが明らかになったが、高濃度の尿素施肥は却って有害であった。水耕栽培実験では、目立った効果は認められなかった。更なる肥料実験を行い、生長とアルカロイド含量を高めるための最適条件を決定する必要がある。
(7)圃場栽培中の44株について昨年度と今年度のアルカロイド含量を測定した結果、今年度の方が有意に含量が増加した。今後の継続栽培によってアルカロイド含量がさらに上昇することが期待される。尿素を与えた群では有意にアルカロイド含量が増加し、平均値は0.7%を超え、日本で日局「マオウ」が栽培供給できる目処がついた。今後は尿素投与量の適正値を検討する必要がある。
(8)代表者の所属移籍に伴い、厚木市の東京農業大学農学部敷地内でも栽培研究を開始した。今後は一般栽培農家が実践できるより簡便な方法を開発し、技術を伝授して行く必要がある。
(9)Ephedra americanaについて化学成分を検討した結果、フラボノイド7種を始めとする化合物を単離し構造決定した。また、E. distachya(Ep-13株)のタンニン誘導体を検索した。今後も多方面からの研究が必要である。
(10)栽培圃場ではすべての株に固有の番号を付して管理しており、今後は防犯カメラの設置を検討している。その他、圃場栽培では動物による被害対策も必要である。
結論
 マオウの種苗生産方法に関しては更なる改良を必要とするが、種子生産及び草質茎の挿し木による方法で、本研究事業の目的が達成できる目処がついた。また、麻黄の国産化において解決すべき最大の問題点は収穫物のアルカロイド含量が日局規定の0.7%を超えることであるが、窒素系肥料の投与で解決できる目処がついた。また、人工交配による品種改良や保有株の中からの系統選別による可能性が開かれたと言える。従来,これらの点に関する研究は代表者らの報告以外にはなく、今後も継続して多角的に研究を行っていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201407024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,863,598円
人件費・謝金 4,864,606円
旅費 2,405,669円
その他 1,866,154円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,027円

備考

備考
支出合計には預金利息27円分を含む。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-