文献情報
文献番号
201407023A
報告書区分
総括
研究課題名
新規コンセプトによる炎症を誘導しないワクチン用免疫増強剤の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-創薬-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鍔田 武志(東京医科歯科大学 難治疾患研究所免疫疾患分野)
研究分担者(所属機関)
- 石田秀治(岐阜大学応用生物科学部)
- 山口芳樹(理化学研究所糖鎖構造生物学研究チーム)
- 伊藤暢聡(東京医科歯科大学 難治疾患研究所分子構造情報学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
39,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
CD22は、もっぱらB細胞に発現する膜分子で、Siglec2ともよばれるSiglecファミリーの分子である。CD22は細胞外のレクチンドメインでα2,6シアル酸を特異的に結合する。また、細胞内にはimmunoreceptor tyrosine-based inhibition motif (ITIM) があり、B細胞抗原受容体シグナル伝達を負に制御し、B細胞の活性化を抑制する。昨年度CD22に結合するシアル酸誘導体GSC780を抗原とともにマウスに接種すると抗体産生を増強し、アジュバント活性があることを明らかにした。 既存のアジュバントはいずれも先天免疫細胞を活性化することにより免疫応答を増強する。先天免疫細胞の活性化に伴う炎症が副作用を誘導することが問題となっている。CD22はもっぱらB細胞に発現するため、CD22を制御して抗体産生を増強するシアル酸誘導体は炎症を誘導しない画期的なアジュバントとなると期待される。本年度はホモロジーモデリングによりCD22とシアル酸誘導体の結合様式を予測し、その結果に基づいた化合物の合理的な分子設計を行い、より高活性なシアル酸誘導体の合成を行うとともに、シアル酸誘導体のワクチンアジュバントとしての有用性を明らかにすることを目的として研究を行った。
研究方法
CD22とシアル酸の誘導体の相互作用の構造的基盤を解明する構造生物学の伊藤、山口と、分子設計をもとにより高活性のシアル酸誘導体を合成する石田、シアル酸誘導体の活性測定とその作用メカニズムの解明を行う鍔田がメールなどで情報交換を行うとともに、約2ヶ月に一度ミーティングを行い、密接に連携して共同研究を行った。CD22がフォールディングの難しいタンパク質であることから、分子構造解明のために、MBP融合CD22や擬似CD22分子など種々のタンパク質を作成するとともに、緩和時間を考慮に入れたSTD-NMR実験およびホモロジーモデリングなどを用いて、シアル酸誘導体とCD22の複合体の分子モデルの作成を行った。この複合体モデルなどをもとにより高活性のシアル酸誘導体の分子設計を行い、これまでもっとも活性化の高いシアル酸誘導体GSC780をもとに、アグリコンにアミノジエチレングリコール基を導入した類縁体および、5位末端にグアニジル基を有する類縁体の合成、また、二量体化を行った。これらの化合物の活性を測定し、より高活性の化合物の同定を行った。また、ワクチンアジュバントしての有効性を検証するために、GSC780の免疫記憶誘導作用やウイルス抗原とともにマウスに接種した際の感染防御作用を調べた。
結果と考察
種々の組み換えCD22タンパク質およびCD22と相同性を有するマウスSialoadhesinをベースにした疑似CD22分子を発現・精製し、さらに、これらのタンパク質を用いてCD22とシアル酸誘導体の相互作用様式をSTD-NMR法およびTR-NOE法により明らかにした。次いで、CD22のホモロジーモデリングを行い、シアル酸誘導体との複合体モデルを構築した。この複合体モデルなどをもとに高親和性CD22結合シアル酸誘導体の合理的デザインを行い、合成を行った。また、CD22との反応性を増強するためにシアル酸誘導体の二量体を合成した。このようにして合成した10個の化合物について、CD22への親和性、B細胞活性化能を測定し、昨年までに合成し最も活性の高かったGSC718およびGSC780に比べて約5倍高親和性の化合物の合成に成功した。また、二量体化により、より少量の投与で抗体産生増強効果があることが明らかとなった。次いで、記憶応答誘導の解析を行い、GSC780が免疫記憶も増強することを明らかにした。GSC780をウイルス抗原とともに接種することにより感染防御効果を増強することを明らかにし、これらの結果からCD22結合性シアル酸誘導体がワクチンアジュバントとして有用であることを明らかにした。また、シアル酸誘導体によるCD22制御のメカニズムの解析を行い、化合物がCD22とそのシスリガンドの結合を阻害する作用と、化合物がCD22に結合してその抑制作用を阻害する2つのメカニズムにより、CD22結合化合物がB細胞の活性化を増強することを明らかにした。今後、安全性試験などにより安全性を確認できれば、本研究で分子設計により合成された高活性なシアル酸誘導体を優れたワクチンアジュバントとして活用・提供することが可能となる。
結論
CD22を制御してB細胞を活性化する新規シアル酸誘導体は、抗体産生を増強し、感染防御効果を示すとともに、炎症を起こさないアジュバントとなり得ることが示された。また、より高活性なシアル酸誘導体の同定に成功した。
公開日・更新日
公開日
2017-08-08
更新日
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