文献情報
文献番号
201407020A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代型IL-6受容体抗体使用時の炎症マーカーとしてのLRG定量キットの開発と臨床応用
課題番号
H24-バイオ-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
仲 哲治(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
- 竹内 勤(慶応義塾大学 医学部 リウマチ内科学)
- 南木 敏宏(帝京大学 医学部 臨床研究医学講座)
- 緒方 篤(大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器免疫アレルギー内科学)
- 角田 慎一(医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 バイオ創薬プロジェクト)
- 服部 有宏(中外製薬株式会社 富士御殿場研究所 研究本部 探索研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、今後治験が予定されている次世代型抗IL-6受容体抗体による治療を受ける関節リウマチ(RA)患者に対し、血清leucine-rich alpha-2 glycoprotein (LRG)レベルがRAの治療効果を正確に反映し、生物学的製剤使用時に感染症を検出できるバイオマーカーであることを証明し、最終的には臨床検査としてLRGを実用化することである。
抗IL-6受容体抗体や抗TNF-alpha阻害抗体などの生物学的製剤はRAに対して劇的な治療効果を挙げているが、その多くはIL-6の作用を抑制することで抗炎症効果を示している。そのため、IL-6阻害の間はIL-6依存性のCRPが陰性化となるため、CRPにより治療効果が判定できない。さらに、IL-6阻害の副作用として最大の問題である結核等の感染症の併発について、CRPはIL-6阻害により陰性化するため、生物学的製剤使用時に感染症を早期に検出出来るマーカーがない問題がある。従って治療効果の判定や併発感染症の早期発見を可能とする新たなマーカーの開発が急務である。申請者が既に報告した新規炎症マーカーである血清LRG(Serada S, Naka T. et al, ARD. 2010)はIL-6阻害時にも上昇するため(Serada S, Naka T. et al, IBD. 2012)、抗IL-6受容体抗体投与時にLRGがCRPに代わる新たな炎症マーカーとしてその役割を果たせば、治療効果の正確な判定、それによる予後の改善、無効な治療による医療費の無駄の削減、感染症合併の早期発見による安全性への寄与や副作用に対する医療費の削減などに貢献すると期待される。
抗IL-6受容体抗体や抗TNF-alpha阻害抗体などの生物学的製剤はRAに対して劇的な治療効果を挙げているが、その多くはIL-6の作用を抑制することで抗炎症効果を示している。そのため、IL-6阻害の間はIL-6依存性のCRPが陰性化となるため、CRPにより治療効果が判定できない。さらに、IL-6阻害の副作用として最大の問題である結核等の感染症の併発について、CRPはIL-6阻害により陰性化するため、生物学的製剤使用時に感染症を早期に検出出来るマーカーがない問題がある。従って治療効果の判定や併発感染症の早期発見を可能とする新たなマーカーの開発が急務である。申請者が既に報告した新規炎症マーカーである血清LRG(Serada S, Naka T. et al, ARD. 2010)はIL-6阻害時にも上昇するため(Serada S, Naka T. et al, IBD. 2012)、抗IL-6受容体抗体投与時にLRGがCRPに代わる新たな炎症マーカーとしてその役割を果たせば、治療効果の正確な判定、それによる予後の改善、無効な治療による医療費の無駄の削減、感染症合併の早期発見による安全性への寄与や副作用に対する医療費の削減などに貢献すると期待される。
研究方法
(1)次世代型IL-6受容体抗体による治療を受けるRA血清と臨床情報の収集
慶應義塾大学、帝京大学、大阪大学医学部において、次世代型抗IL-6受容体抗体投与前後のRA患者を収集するシステムの構築と、血清の収集を行った。血清は薬剤開始前と投与ごとに採取する。それと同時にさまざまな臨床情報(疾患活動性スコア、CRP、WBC、MMP-3など)も記載した。
(2)抗IL-6受容体抗体治療RA患者血清LRGの定量
独自に開発したヒトLRG ELISAシステムを用いて、抗IL-6受容体抗体治療RA患者血清LRGの定量を行い、関節リウマチの疾患活動性(CDAI)との関連を解析した。
慶應義塾大学、帝京大学、大阪大学医学部において、次世代型抗IL-6受容体抗体投与前後のRA患者を収集するシステムの構築と、血清の収集を行った。血清は薬剤開始前と投与ごとに採取する。それと同時にさまざまな臨床情報(疾患活動性スコア、CRP、WBC、MMP-3など)も記載した。
(2)抗IL-6受容体抗体治療RA患者血清LRGの定量
独自に開発したヒトLRG ELISAシステムを用いて、抗IL-6受容体抗体治療RA患者血清LRGの定量を行い、関節リウマチの疾患活動性(CDAI)との関連を解析した。
結果と考察
本研究において、慶應義塾大学、東京医科歯科大学、大阪大学医学部、医薬基盤研究所の倫理委員会より承認を得た後、従来型のIL-6受容体抗体により治療を受けるRA患者より治療前および治療後に定期的に収集した血清と臨床情報を収集した。これらの検体を医薬基盤研究所に輸送し、本研究にて開発したヒトLRGを定量できるELISAシステムを用いて、血清LRG濃度の定量と、関節リウマチの疾患活動性との相関を検討した。その結果、血清LRGが関節リウマチ患者において抗IL-6受容体抗体投与時の有用な疾患活動性マーカーであることを証明し、従来の関節リウマチのマーカーであるCRP、ESR、MMP-3よりも優れたマーカーである事を明らかにした。本研究成果は国際誌に論文発表した(Fujimoto M, Naka T et al., A&R 2015 In Press)。血清LRGがIL-6阻害時においても関節リウマチの有効な疾患活動性マーカーとなり得る理由としては、LRGの発現誘導にはCRPとは異なり、TNF-alphaやIL-22など様々なサイトカインにより制御されているためであると考えられた。研究代表者は、LRGが関節リウマチの疾患活動性マーカーとして利用出来る事について特許出願し、特許取得に至った(自己免疫疾患検査用バイオマーカー及び検査方法、特許第5246709号)。また、抗IL-6受容体抗体使用時は結核など感染症併発のリスクが高くなるが、血清LRGが結核のマーカーとなり得る事も明らかにし、特許出願した(結核検査用バイオマーカー、特願2012-84996号)。
結論
本研究成果より、LRGがCRPでは検出出来ないIL-6抑制下での炎症を検出出来ることを明らかとなった。このことは、抗IL-6受容体抗体投与時における疾患活動性を評価するマーカーとしてLRGがCRPよりも疾患活動性を正確に把握できるマーカーとしての有用性を示すこと意味している。現在、血清LRGを生物学的製剤使用時の関節リウマチの臨床検査としての実用化を進行中である。本研究により得られたデータについてPMDA薬事戦略相談(事前面談及び対面助言)を活用し、承認申請を得た後、関節リウマチの治療評価マーカーとして実用化する。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-