文献情報
文献番号
201407019A
報告書区分
総括
研究課題名
重症薬疹の病態解明および発症予測、重症度予測マーカーの検索
課題番号
H24-バイオ-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 理一郎(北海道大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 片山一朗(大阪大学 医学系研究科)
- 戸倉新樹(浜松医科大学 医学部)
- 秋山真志(名古屋大学 大学院 医学系研究科)
- 小豆澤宏明(大阪大学 医学系研究科)
- 藤原道夫(アステラス製薬(株) 安全性研究所)
- 串間清司(アステラス製薬(株) 安全性研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
重症薬疹(中毒性表皮壊死症:TEN、Stevens-Johnson症候群:SJS)は時に致死的疾患であり、高率に眼障害などの重篤な後遺症を残す。重症薬疹の発症機序についてはいまだ不明なことが多い。重症薬疹発症における重要な現象の表皮細胞死の発生メカニズムについて、これまでアポトーシスによる細胞死であると考えられてきた。しかしその詳細は未だ不明な点が多い。本研究課題において、患者サンプルあるいはTG-GATEsを用いて病態発症のメカニズムを解明し、新規の早期診断および治療法の開発に結びつけることを目的とする。
研究方法
重症薬疹患者からの培養表皮細胞に、同患者の末梢血単核球(PBMC)を原因薬剤で刺激した培養の上清を添加することで、表皮細胞死が生じるか観察された。原因薬剤で刺激された重症薬疹患者PBMCの培養上清の細胞死を誘導する液性因子を同定するために、重症薬疹患者及び通常薬疹患者の培養上清中のタンパクを質量解析を用いて比較検討する。1)TG-GATEsを用いた解析:TG-GATEsに格納されている化合物の中から重症薬疹の報告頻度が高い18薬剤を選択した。これらの薬剤について肝障害の併発の有無や,HLAとの相関の報告有無などの特徴をもとに分類を行い、各分類において共通して変動する遺伝子の抽出を試みた。
2)重症薬疹患者サンプルを用いた解析:患者の末梢血単核球から抽出したmRNA検体を入手した。供与されたサンプルについてgene chip解析に供し、gene chipデータベースから得られた健常人の末梢血単核球の遺伝子データと比較して、遺伝子発現の差異を調べた。
3)患者サンプルから得られた発現変動遺伝子を用いたTG-GATEsの活用:2)の検討で得られた遺伝子と同様の発現を示す薬剤をTG-GATEsを用いて確認した。解析にはラット単回あるいは反復投与した肝細胞の遺伝子発現データを用いた。
2)重症薬疹患者サンプルを用いた解析:患者の末梢血単核球から抽出したmRNA検体を入手した。供与されたサンプルについてgene chip解析に供し、gene chipデータベースから得られた健常人の末梢血単核球の遺伝子データと比較して、遺伝子発現の差異を調べた。
3)患者サンプルから得られた発現変動遺伝子を用いたTG-GATEsの活用:2)の検討で得られた遺伝子と同様の発現を示す薬剤をTG-GATEsを用いて確認した。解析にはラット単回あるいは反復投与した肝細胞の遺伝子発現データを用いた。
結果と考察
1. 重症薬疹発症機序関与マーカー検索:収集した重症薬疹サンプルを用い、重症薬疹に特異的に発現が亢進するタンパクを質量分析にて解析を行った。治癒後の患者から末梢血細胞を採取し、原因薬剤を添加した末梢血細胞から産生される液性因子を、重症薬疹と通常薬疹を比較した。重症薬疹のみでannexin A1が亢進していた。Annexin A1は通常薬疹と比較し、重症薬疹において著明に発現が亢進していた。2. 細胞死誘導機序解明 :重症薬疹の表皮細胞死がannenxin A1/FPR1により誘導される機序として、ネクロプトーシスに特異的な細胞内シグナルのRIP1/RIP3およびMLKLを介して起こることを明らかにした。3. モデルマウスを用いた候補マーカーの確認:我々が作製した重症薬疹モデルマウスを用いて、ネクロプトーシス阻害剤を用いて重症薬疹モデルマウスの治療実験を行い、この阻害物質は重症薬疹発症を完全に抑制することを見出した。4. 重症薬疹患者サンプルの収集 :参画施設にてそれぞれ倫理委員会にて承認を得た。当初目標40症例を収集した。5. 表皮細胞死阻害の検討:本研究で解明した表皮細胞死メカニズムは、重症薬疹の治療ターゲットになりうる可能性がある。よってannexin A1またはFPR1をターゲットにした表皮細胞阻害法を検討する。6. SJS/TENでは増殖するCD8陽性T細胞の多くがIFN-産生性のTc1細胞であり、Th17細胞は薬剤反応性の増殖は乏しいことが示された。7.TG-GATEsを用いた解析:重症薬疹の報告頻度が高い18薬剤を分類して,分類ごとに共通変動遺伝子の探索を試みたが、見出すことは困難であった。8.重症薬疹患者サンプルを用いた解析:SJSあるいはDIES患者と公共データベースから取得した健常人の遺伝子発現データの比較解析では、それぞれの疾患別に解析した結果、SJS患者で発現差がみられる8遺伝子、DIES患者で発現差がみられる3遺伝子、SJS及びDIES患者で発現差がみられる11遺伝子を特定した。
本研究の成果から、特に表皮細胞死において疾患特異的な現象が起こることを明らかにした。この細胞死のメカニズムを解明できれば、発症誘導する遺伝的背景の存在が予想されることから発症予見因子を明らかにすることも期待できる。さらに細胞死の機序の一部を阻害することで新規治療法の開発が可能になる。
本研究の成果から、特に表皮細胞死において疾患特異的な現象が起こることを明らかにした。この細胞死のメカニズムを解明できれば、発症誘導する遺伝的背景の存在が予想されることから発症予見因子を明らかにすることも期待できる。さらに細胞死の機序の一部を阻害することで新規治療法の開発が可能になる。
結論
重症薬疹における新規の細胞のメカニズムは、重症薬疹特異的治療法の開発に直接結び付くと期待される。さらに重症薬疹の発症因子としても応用できることが予想される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-16
更新日
-