文献情報
文献番号
201407012A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症早期解析型マウスモデルの開発研究
課題番号
H24-創薬総合-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森 啓(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 富山 貴美(大阪市立大学 大学院医学研究科 )
- 梅田 知宙(大阪市立大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
厚生労働省が2012年に発表された調査結果では、国内の認知症患者が305万人を超えると指摘されている。しかも、この実態は、要介護認定者に限られていることから、実際の認知症患者数は、400万人を超えると予想されている。アルツハイマー病治療薬剤は、進行を一時的に抑制する効果があるが、進行を止めたり、治癒することがない。この対処療法薬しかない現状では、患者数の軽減を図ることには限界がある。これらのことから、アル ツハイマー病の根本治療薬の開発は緊急に取り組まなければならない。本研究では、未だに結論されていないア ルツハイマー病の詳細な病態解明を推進させる事を目的として、とりわけ早期診断、治療対応が可能なモデルを 作製、検討することである。早期、中期、晩期という臨床的分類に対する指標を医学的に整理する上でも病態カ スケードをバイオマーカーや脳神経病理変化などの視覚的変化などで明らかにすることを明らかにすることを、本研究の目的とする。
研究方法
本研究は、動物実験の中で遺伝子実験を含むことから、組み替えDNA実験についても、安全等への配慮をした上で、本学の組換えDNA実験委員会で承認されておる。また、倫理面への配慮として、本研究は、実験動物に対する動物愛護上の配慮についても、本学の動物実験審査委員会で承認されている。孤発性認知症疾患を反映させるモデルとして、タウタンパク質分子のアミノ酸変異のないヒト遺伝子を用いたモデルマウス作成開発、その性状を詳細に分析し、本年度では、実際に治療対象としてのモデルとしての有効性を検証することに焦点を合わせた研究を、以下の5検査について実施した。(1)免疫組織学的調査(2)間接的ワクチン療法 (3)ウェスタンブロット(4)空間学習能テスト(5)統計学分析
結果と考察
(1)p413Serを特異的に認識する単クローン抗体としてTa1505抗体を作製、樹立した。
(2)臨床記憶力による間接ワクチン療法の検証
Ta1505抗体を腹腔内ワクチンとして投与した。その結果、ワクチン効果の評価を空間学習能テストでp413Ser抗 体(Ta1505)を検証した。先行する異常リン酸化部位を認識するpSer396抗体(Ta4)と比較することで、新規 作成Ta1505抗体と比較検証をした。その結果、Ta1505がより記憶力保持に有効なことが示された。このように、同じ異常リン酸化タウであっても、p413とp396による効果の差があることが明らかとなった。さらに、Ta1505ワクチンは、Ta1505サイトだけではな く、Ta4サイトにもクリア効果があることが示されたが、逆にTa4ワクチンは、Ta1505サイトには、ほとんど作用せずにTa4サイトだけにワクチン効果が限局していることがわかる。また、pSer413を認識するTa1505が、Ta4より効率的なシナプス保護作用がある。一方、pSer396を認識するTa4 はシナプス保護作用では限定的効果となっていることが明らかとなった。神経原線維変化は古典的病変の一つと して樹立しているが、新規抗体であるTa1505が病理形成阻止効果が高いことも明らかとなった。
(3)ワクチン療法によるニューロン細胞死への効果検証
アルツハイマー病の脳変化として、脳重低下がある。今回、ニューロン細胞死を、特異的かつ定量的に評価するために、NeuN抗体により免疫染色を実施し検証した。その結果、pSer413を認識するTa1505がニューロン保護作用がみとめられたが、統計学的有意差を得るには至っていない。一方、pSer396を認識するTa4も、弱いながらも ニューロン保護作用が、Ta1505よりは限定的に観察されたが、その効果の統計学的有意差は得られていない。
考察として、本研究で作成したモデルマウスは、ヒト認知症を再現する点で、極めて実用性が高いことが明らか となったが、評価、検証としての視点からも薬剤検討対象としての有益性が、本研究成果によって確立したと考えている。なにより、異常リン酸化部位として、従来もっとも定番であったpSer396よりもpSer413部位の意義が観察されたことは、予想外の発見である。この部位特異的な単クローン抗体であるpT1505単クローン抗体の有用性は、さらにヒト型化して検証されるべきであると考えている。
(2)臨床記憶力による間接ワクチン療法の検証
Ta1505抗体を腹腔内ワクチンとして投与した。その結果、ワクチン効果の評価を空間学習能テストでp413Ser抗 体(Ta1505)を検証した。先行する異常リン酸化部位を認識するpSer396抗体(Ta4)と比較することで、新規 作成Ta1505抗体と比較検証をした。その結果、Ta1505がより記憶力保持に有効なことが示された。このように、同じ異常リン酸化タウであっても、p413とp396による効果の差があることが明らかとなった。さらに、Ta1505ワクチンは、Ta1505サイトだけではな く、Ta4サイトにもクリア効果があることが示されたが、逆にTa4ワクチンは、Ta1505サイトには、ほとんど作用せずにTa4サイトだけにワクチン効果が限局していることがわかる。また、pSer413を認識するTa1505が、Ta4より効率的なシナプス保護作用がある。一方、pSer396を認識するTa4 はシナプス保護作用では限定的効果となっていることが明らかとなった。神経原線維変化は古典的病変の一つと して樹立しているが、新規抗体であるTa1505が病理形成阻止効果が高いことも明らかとなった。
(3)ワクチン療法によるニューロン細胞死への効果検証
アルツハイマー病の脳変化として、脳重低下がある。今回、ニューロン細胞死を、特異的かつ定量的に評価するために、NeuN抗体により免疫染色を実施し検証した。その結果、pSer413を認識するTa1505がニューロン保護作用がみとめられたが、統計学的有意差を得るには至っていない。一方、pSer396を認識するTa4も、弱いながらも ニューロン保護作用が、Ta1505よりは限定的に観察されたが、その効果の統計学的有意差は得られていない。
考察として、本研究で作成したモデルマウスは、ヒト認知症を再現する点で、極めて実用性が高いことが明らか となったが、評価、検証としての視点からも薬剤検討対象としての有益性が、本研究成果によって確立したと考えている。なにより、異常リン酸化部位として、従来もっとも定番であったpSer396よりもpSer413部位の意義が観察されたことは、予想外の発見である。この部位特異的な単クローン抗体であるpT1505単クローン抗体の有用性は、さらにヒト型化して検証されるべきであると考えている。
結論
本研究で作製た認知症病態モデルマウスは、アルツハイマー病で検出されている異常リン酸化部位を認識する抗体を用いた間接ワクチン療法で治療、予防されることが示唆された。さらに本研究で実際にpSer413を認識 する単クローン抗体(Ta1505)が本モデルマウスに有効なワクチン効果を示しうことが実証された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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