文献情報
文献番号
201407011A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築と変性蛋白質オリゴマーを標的とした共通の治療薬開発
課題番号
H24-創薬総合-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
永井 義隆((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第四部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
加齢に伴って発症する認知症/神経変性疾患の克服は、我が国の厚生労働行政上重要な課題である。近年、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの認知症/神経変性疾患では、様々な変性蛋白質のオリゴマー重合体により共通に神経変性が惹き起こされると考えられている。私たちはこれまで変性蛋白質オリゴマーを標的とした共通の治療薬開発研究を進め、in vitroアッセイ系を用いた1次スクリーニングにより大規模化合物ライブラリー(約45,000化合物)から約100種類の新規オリゴマー阻害化合物を同定している。
本研究では、このような治療薬候補化合物の迅速・簡便なin vivoでの薬効評価に適する疾患ショウジョウバエモデルバンクを樹立し、認知症/神経変性疾患の分子標的治療薬を創薬することを目的として、以下の研究を行った。
本研究では、このような治療薬候補化合物の迅速・簡便なin vivoでの薬効評価に適する疾患ショウジョウバエモデルバンクを樹立し、認知症/神経変性疾患の分子標的治療薬を創薬することを目的として、以下の研究を行った。
研究方法
1)認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築
認知症/神経変性疾患関連遺伝子を過剰発現、あるいはRNAi法により各遺伝子の発現をノックダウンするトランスジェニックショウジョウバエの作製・入手を進めた。
2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
血液脳関門透過性・安全性が高い治療薬候補QX1について、PolyQ病モデルマウスの脳内PolyQ凝集体に対する影響を検討した。さらに、QX1のPolyQ病以外の他の神経変性疾患原因蛋白質、AD、FTD、PD、ALSなどの疾患モデルに対する治療効果を検討した。
認知症/神経変性疾患関連遺伝子を過剰発現、あるいはRNAi法により各遺伝子の発現をノックダウンするトランスジェニックショウジョウバエの作製・入手を進めた。
2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
血液脳関門透過性・安全性が高い治療薬候補QX1について、PolyQ病モデルマウスの脳内PolyQ凝集体に対する影響を検討した。さらに、QX1のPolyQ病以外の他の神経変性疾患原因蛋白質、AD、FTD、PD、ALSなどの疾患モデルに対する治療効果を検討した。
結果と考察
1)認知症/神経変性疾患モデルショウジョウバエバンクの構築
研究開始時点で合計46系統、H25年度末までに合計106系統の疾患モデルショウジョウバエを保有していた。H26年度は筋萎縮性側索硬化症(ALS): 11系統、その他: 1系統の疾患モデルショウジョウバエを作製・入手し、合計118系統とした。
2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
治療薬候補QX1の経口投与により、SCA1-Q154モデルマウスの脳内PolyQ凝集体形成が有意に抑制されることを明らかにした。
また、QX1はPolyQ蛋白質だけでなく、Amyloid-βの凝集阻害活性も発揮することを明らかにした。しかしながら、QX1はAD、FTD、PD、ALSの疾患モデルショウジョウバエに対しては、いずれの複眼変性にも有意な抑制効果を示さなかった。さらに、ADモデルマウスAPPswe/PS1 dE9に対し、QX1の経口投与を行ったが、脳内アミロイド斑の有意な抑制効果を認めなかった。
研究開始時点で合計46系統、H25年度末までに合計106系統の疾患モデルショウジョウバエを保有していた。H26年度は筋萎縮性側索硬化症(ALS): 11系統、その他: 1系統の疾患モデルショウジョウバエを作製・入手し、合計118系統とした。
2)新規オリゴマー阻害化合物の疾患モデルショウジョウバエ/マウスを用いたハイスループット薬効評価による治療薬開発
治療薬候補QX1の経口投与により、SCA1-Q154モデルマウスの脳内PolyQ凝集体形成が有意に抑制されることを明らかにした。
また、QX1はPolyQ蛋白質だけでなく、Amyloid-βの凝集阻害活性も発揮することを明らかにした。しかしながら、QX1はAD、FTD、PD、ALSの疾患モデルショウジョウバエに対しては、いずれの複眼変性にも有意な抑制効果を示さなかった。さらに、ADモデルマウスAPPswe/PS1 dE9に対し、QX1の経口投与を行ったが、脳内アミロイド斑の有意な抑制効果を認めなかった。
結論
本研究の結果から、in vitroアッセイ系から得られた新規オリゴマー阻害化合物の迅速・簡便なin vivoでの薬効評価として疾患モデルショウジョウバエ有用であることが確認され、今後、QX1をはじめとした疾患モデルマウスで有効性を示す薬剤の同定が期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-