難治がんに対する標的バイオ医薬の探索技術の確立と開発研究を支援する研究基盤の構築

文献情報

文献番号
201407008A
報告書区分
総括
研究課題名
難治がんに対する標的バイオ医薬の探索技術の確立と開発研究を支援する研究基盤の構築
課題番号
H23-政策探索-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
青木 一教(独立行政法人国立がん研究センター 研究所遺伝子免疫細胞医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 田川 雅敏(千葉県がんセンター がん治療開発グループ)
  • 内田 宏昭(東京大学医科学研究所)
  • 水口 裕之(大阪大学大学院薬学研究科 分子生物学分野)
  • 水野 正明(名古屋大学医学部付属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 内田 宏昭 東京薬科大学生命科学部(平成27年1月31日まで)→東京大学医科学研究所(平成27年2月1日より)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がんを標的するバイオ医薬(ベクター)の探索技術を、ベクター構造・腫瘍細胞・生体反応の3つの観点から開発する。1.腫瘍を標的する遺伝子医薬(ベクター)の探索技術の開発、2.その応用例としての腫瘍標的ベクターの探索、3.腫瘍標的ウイルスの臨床応用、を3つの柱として、生体内での効果と安全性に優れたがん標的ベクターや腫瘍溶解ウイルスを開発する。
研究方法
1.個別化した腫瘍を標的する遺伝子医薬の探索技術の開発として、1) Adベクターによる自然免疫活性化機構を解析し、肝障害を抑制できるベクターを開発した。2.その応用例としての腫瘍標的ベクターの探索として、2)開発した膵がん標的ベクターの腫瘍溶解効果を、膵がん外科切除標本において検討した。3) がん細胞表面の特異抗原を探索するシステムとして、抗体結合変異型単純ヘルペスウイルスベクターを探索プローブに用いた抗体スクリーニング法を樹立した。3.腫瘍標的ウイルスの臨床応用として、5) 悪性中皮腫を対象とした非増殖性Adの胸腔内投与による臨床試験を実施する準備を進めた。また、6) 腫瘍標的型Adベクターの臨床試験実施を目指し、GMP製造法を確立するため必要な準備を行った。
結果と考察
1) 肝臓特異的miRNAであるmiR-122aを挿入したAd-E4-122aTは、後期の肝障害のみならず自然免疫活性化によって引き起こされる早期の肝障害も有意に抑制できることを明らかとした。2)開発した膵がん標的ベクターの腫瘍溶解効果が非標的ベクターと比較して著明に増強していることをヒト膵がん切除標本にて明らかとし、臨床応用に資するベクターであることを示した。4) ウイルスやトキシンと抗体による多彩な探索方法によりがん細胞表面の特異抗原を同定した。さらに、同定したTrop2を標的とするAdベクターを開発した。5) 悪性中皮腫を対象とした非増殖性Adの胸腔内投与による臨床試験の準備を終え、患者リクルートの段階となった。6) 腫瘍標的型AdベクターのGMP製造法を確立するため、必要な手順書等のリスト化と文書化を行った。
結論
腫瘍溶解ウイルスに、標的リガンドを組み合わせることにより、腫瘍溶解ウイルスの抗腫瘍効果と顕著に強化できることを、ヒト外科切除標本において示した。組織障害性の低いベクター構造を取り入れ、個々の症例に最適な腫瘍溶解ウイルスを探索するシステムを確立する。また、種々のがん特異的抗原を標的するベクターの開発に役立てる。さらに、標的化腫瘍溶解ウイルスの臨床応用をめざし、段階的プロトコールとして悪性中皮腫に対するAd胸腔内投与による遺伝子治療の臨床試験を開始する段階となった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201407008Z