文献情報
文献番号
201407007A
報告書区分
総括
研究課題名
Claudinを標的とした創薬基盤技術の開発
課題番号
H23-政策探索-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昌夫(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 八木清仁(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
- 國安弘基(奈良県立医科大学)
- 深澤征義(国立感染症研究所)
- 國澤純(医薬基盤研究所)
- 岡田欣晃(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
- 多田稔(国立医薬品食品衛生研究所)
- 染谷 友美(木村 友美)(理化学研究所)
- 田村淳(国立大学法人大阪大学 生命機能研究科)
- 竹田浩之(愛媛大学 プロテオサイエンスセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
昨今の上皮細胞生物学の進展により、タイトジャンクションシール機能を担う分子として、4回膜貫通蛋白質claudin(CL)が同定された。現在までにCLには27種類の分子が見出されており、CLを標的とした、非侵襲性投与法、上皮がんターゲティング法、粘膜ワクチン、C型肝炎ウイルス(HCV)感染阻害法、薬物の血液脳関門透過法開発の可能性が示唆されている。しかしながら、CLは抗原性が低いうえにリコンビナント蛋白質の調製が難しく、CL binderの創製は著しく立ち遅れており、CLを標的とした創薬研究は遅々として進展していない。
現在までに申請者は、知的クラスター創成事業および文科省科研費の支援を受けて、CLを標的とした創薬研究を推進し、CL-4 binderを用いたバイオ医薬の経粘膜吸収促進技術、癌ターゲティング法、粘膜ワクチン技術を世界に先駆けて確立してきた(PCT/JP2008/61723、特願2010-25259他)。さらに、CLを標的とした創薬基盤として、出芽バキュロウイルス(BV)を利用したCL蛋白質発現系を確立し、CL発現BVをCL欠損マウス等に免疫して作製した一本鎖抗体(scFv)ライブラリ用いた新規CL binderスクリーニング系を構築した。
上述した背景を踏まえ本研究では、創薬上の重要度が高いCL(CL-1, -2, -4, -5)に焦点を絞り、癌ターゲティングおよびHCV感染阻害に資するCL-1 binder、粘膜組織・各種癌ターゲティングに資するCL-2 binderおよびCL-4 binder、血液脳関門制御に資するCL-5 binderを開発することを目的とする。
現在までに申請者は、知的クラスター創成事業および文科省科研費の支援を受けて、CLを標的とした創薬研究を推進し、CL-4 binderを用いたバイオ医薬の経粘膜吸収促進技術、癌ターゲティング法、粘膜ワクチン技術を世界に先駆けて確立してきた(PCT/JP2008/61723、特願2010-25259他)。さらに、CLを標的とした創薬基盤として、出芽バキュロウイルス(BV)を利用したCL蛋白質発現系を確立し、CL発現BVをCL欠損マウス等に免疫して作製した一本鎖抗体(scFv)ライブラリ用いた新規CL binderスクリーニング系を構築した。
上述した背景を踏まえ本研究では、創薬上の重要度が高いCL(CL-1, -2, -4, -5)に焦点を絞り、癌ターゲティングおよびHCV感染阻害に資するCL-1 binder、粘膜組織・各種癌ターゲティングに資するCL-2 binderおよびCL-4 binder、血液脳関門制御に資するCL-5 binderを開発することを目的とする。
研究方法
本年度は、これまでに取得した抗CL-1抗体、抗CL-4抗体の癌・粘膜免疫組織ターゲティング能、HCV感染阻害活性を解析すると同時に抗CL-2抗体の性状解析を行った。また、引き続き抗CL-5抗体作製条件の最適化を実施した。
結果と考察
Claudin binderの創製
平成25年度末までに、CL-1抗体、CL-4抗体の作製に成功、in vitro C型肝炎ウイルス(HCV)感染防御活性、抗腫瘍活性を解析、特許出願を行った(特願2013-038059; 特願2013-40211; PCT/JP2013/006602)。さらに、新たにCL-2抗体の作製に着手、世界で初めて細胞外領域を認識するCL-2抗体(3クローン)の作製に成功した。平成26年度は、CL-1, CL-2, CL-4抗体について各種キメラ抗体を創製した
サブテーマ1:Claudin-1を標的とした創薬基盤技術の確立
ヒト肝キメラマウスを用いCL-1抗体が副作用を伴うことなくHCV感染防御活性を発揮することを見出した。ヒトキメラ抗体も、マウス抗体と同程度のin vitro HCV感染防御活性を有していた。以上、C型肝炎治療に資する抗体シーズの創製に成功し、当該実施例を追加し、PCT出願を行った(PCT/JP2013/006602)。
サブテーマ2:Claudin-2を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-2抗体のエピトープ、結合特異性、バリア制御活性を解析し、マウスとヒトに交叉するクローン、バリアを強める活性を有するクローンを見出した。炎症性腸疾患モデルマウスを用いた解析準備を進めると同時に、ヒトキメラ抗体が抗癌活性を有していることを見出した。これらのデータを基に特許出願準備を進めている。
サブテーマ3:Claudin-4を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-4抗体の特異性を解析したところ、マウスCL-4に交叉性を示すクローン、CL-3にも結合するbispecificクローンが含まれていた。マウス交叉性抗体を用いてCL-4抗体の体内動態特性解析を試みた。また、ヒト癌細胞を皮下移植したヌードマウスを用いてbispecific抗体、CL-4抗体の腫瘍集積性を検討すると同時に抗腫瘍活性を解析した。さらに、抗体依存性細胞傷害活性に優れたヒトIgG1キメラ抗体を作製したところ、ラット抗体に比して優れた抗腫瘍活性が観察され、当該実施例を追加し、PCT出願を行った(PCT/JP2014/001039)。
サブテーマ4:Claudin-5を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-5 binder創製に向けて抗原の最適化を行い、CL-5提示リポソームを高収率で精製できる条件を見出した。
平成25年度末までに、CL-1抗体、CL-4抗体の作製に成功、in vitro C型肝炎ウイルス(HCV)感染防御活性、抗腫瘍活性を解析、特許出願を行った(特願2013-038059; 特願2013-40211; PCT/JP2013/006602)。さらに、新たにCL-2抗体の作製に着手、世界で初めて細胞外領域を認識するCL-2抗体(3クローン)の作製に成功した。平成26年度は、CL-1, CL-2, CL-4抗体について各種キメラ抗体を創製した
サブテーマ1:Claudin-1を標的とした創薬基盤技術の確立
ヒト肝キメラマウスを用いCL-1抗体が副作用を伴うことなくHCV感染防御活性を発揮することを見出した。ヒトキメラ抗体も、マウス抗体と同程度のin vitro HCV感染防御活性を有していた。以上、C型肝炎治療に資する抗体シーズの創製に成功し、当該実施例を追加し、PCT出願を行った(PCT/JP2013/006602)。
サブテーマ2:Claudin-2を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-2抗体のエピトープ、結合特異性、バリア制御活性を解析し、マウスとヒトに交叉するクローン、バリアを強める活性を有するクローンを見出した。炎症性腸疾患モデルマウスを用いた解析準備を進めると同時に、ヒトキメラ抗体が抗癌活性を有していることを見出した。これらのデータを基に特許出願準備を進めている。
サブテーマ3:Claudin-4を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-4抗体の特異性を解析したところ、マウスCL-4に交叉性を示すクローン、CL-3にも結合するbispecificクローンが含まれていた。マウス交叉性抗体を用いてCL-4抗体の体内動態特性解析を試みた。また、ヒト癌細胞を皮下移植したヌードマウスを用いてbispecific抗体、CL-4抗体の腫瘍集積性を検討すると同時に抗腫瘍活性を解析した。さらに、抗体依存性細胞傷害活性に優れたヒトIgG1キメラ抗体を作製したところ、ラット抗体に比して優れた抗腫瘍活性が観察され、当該実施例を追加し、PCT出願を行った(PCT/JP2014/001039)。
サブテーマ4:Claudin-5を標的とした創薬基盤技術の確立
CL-5 binder創製に向けて抗原の最適化を行い、CL-5提示リポソームを高収率で精製できる条件を見出した。
結論
以上、既にCL-1抗体およびCL-4抗体についてヒトキメラ抗体の作製および活性解析に着手し、当初計画(平成26~27年度に実施予定)に比して早く計画が進行している。さらに、CL-2抗体の取得にも成功、各種活性解析を実施、権利化準備が整いつつある。最終年度は、知財戦略と研究計画の調和を図ることで創薬イノベーションに資する研究展開を図る。
公開日・更新日
公開日
2015-05-08
更新日
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