複数の作用メカニズムを同時に発現する革新的抗がん剤の開発

文献情報

文献番号
201407003A
報告書区分
総括
研究課題名
複数の作用メカニズムを同時に発現する革新的抗がん剤の開発
課題番号
H23-政策探索-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
椎名 勇(東京理科大学 理学部第一部応用化学科)
研究分担者(所属機関)
  • 中田 健也(島根大学 総合理工学部物質科学科)
  • 池北 雅彦(東京理科大学 理工学部応用生物科学科大学)
  • 吉見 陽児(東京理科大学 理工学部応用生物科学科大学)
  • 森田 明典(徳島大学 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 長原 礼宗(東京電機大学 理工学部理工学科)
  • 旦 慎吾(がん研究会 がん化学療法センター分子薬理部)
  • 水上 民夫(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部バイオサイエンス学科)
  • 長谷川 慎(長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部バイオサイエンス学科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 菅原 二三男(東京理科大学 理工学部応用生物科学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
29,925,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では東京理科大学椎名研究室が有する高効率な有機合成技術を活用して様々な「リダイフェン」類を供給し、これらの構造薬理活性相関の調査を通じて新薬のリード化合物を探索する。さらに、薬理活性を発現した新規人工抗がん剤のビオチン化を順次行ない、これらを分子プローブとして会合タンパクの同定を行なうことによって生体内での隠された作用メカニズムを解明し、革新的な分子標的型治療薬の開発を目指す。
研究方法
平成26年度は天然ステロイドの構造により近い「R-COP型リダイフェン」ならびに「リダイフェンHH」シリーズを用いた抗腫瘍試験ならびに作用メカニズムの解明に焦点を当てて検討を進める。検討項目としては効率的な閉環手法を開発すると共に、これらの化合物の拡散的有機合成を試みる。また、合成検討と同時に(a)浮遊性がん細胞活性試験,(b)固形がん細胞活性試験,(c)白血病細胞活性試験,(d)プロテアソーム阻害活性試験を実施する。次いで研究代表者がプローブ化したリダイフェン類を用い、研究分担者が結合タンパクの解明を行う。
結果と考察
研究代表者である椎名 勇と島根大学総合理工学部の中田健也がリダイフェン類の基本骨格を有するRID-Hの大量合成法を確立した。次いで種々の有機合成技術によってRID-Hの派生体である完全対称型化合物RID-HH類を創出し、これらのSARを実施した。さらに、環状構造を有するR-COPシリーズや構造欠損型RID-SBおよびRID-SGシリーズの抗腫瘍性を調べた。その結果、我々の合成した新規構造改変型リダイフェンであるRID-SBおよびRID-SGシリーズの抗腫瘍性はエストロゲン受容体の存在しないがん細胞種にも発現し、従来の疑似ホルモン剤タモキシフェンとは異なるメカニズムで作用することが明らかとなった。長原、池北、吉見らはアポトーシス誘導メカニズムからER(エストロゲンレセプター)を含まないがん種におけるリダイフェン類の上記性質を説明している。一方、がん研究会の旦 慎吾らの39系統固形がん細胞を用いたパネル試験の結果からトリアリールトリエン類に高い抗腫瘍性が見出され、現在機能解析が進んでいる。水上、長谷川らは、RID-FおよびRID-SFシリーズの有するプロテアソーム阻害活性能を活用し、これらを細胞レベルで発現させることに成功した。さらに、菅原はRID-Gがミネラル元素結合タンパク質に相互作用する現象を発見した。
結論
芳香族アルデヒド、アリル型求核剤および芳香族求核剤を組み合わせ用いる3成分連結反応、あるいは芳香族化合物と炭素求核剤の2成分カップリング等の有機合成技術の活用によって「リダイフェンH」の新しい類縁体である完全対称型リダイフェン類(「リダイフェンHH(RID-HH)」シリーズ)の調製に成功し、これらを大量に供給する手段を確立した。さらに高効率な脱水縮合反応を活用することで環状構造を有するR-COP型の簡便な製造法を見出した。活性効果のスクリーニングを通じて高い抗腫瘍性発現化合物を複数見出し、メカニズム解析を進展させた。ファージディスプレイ法を用いた結合タンパク同定に関する研究を実施し、RID-Gの作用タンパク質の特定に成功した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201407003Z