肺がんの分子診断法および分子標的治療法の開発

文献情報

文献番号
201407001A
報告書区分
総括
研究課題名
肺がんの分子診断法および分子標的治療法の開発
課題番号
H23-政策探索-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 仁木 利郎(自治医科大学 医学部)
  • 中田 昌男(川崎医科大学 呼吸器外科学)
  • 池田 徳彦(東京医科大学 呼吸器外科・甲状腺外科)
  • 鯉沼 代造(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 竹内 賢吾(がん研究会がん研究所 分子標的病理プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
51,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者らは発がん原因遺伝子を探索する目的で、臨床検体を用いた独自のがん遺伝子スクリーニング法を開発し、これを用いて肺腺がん外科切除検体より新規がん遺伝子EML4-ALKを発見することに成功した。さらに申請者らが同遺伝子を肺胞上皮特異的に発現する遺伝子改変マウスを作成したところ同マウスは生後すぐに肺腺がんを多発発症し、しかも同マウスにALK酵素活性阻害剤を投与するとマウス肺がんは速やかに消失した。すなわちEML4-ALKこそが同遺伝子陽性肺がんの主たる発がん原因であり、だからこそその機能を抑制することが著明な治療効果をもたらすことが生体において証明されたのである。こうしてEML4-ALKの発見以来、申請者のグループはモデル動物における治療実験の成功、薬剤耐性原因の解明など一貫してこの分野で世界をリードしてきており、一方、申請者らの肺がん診断ネットワーク活動によって、既に約1000例の肺がん検体およびそのcDNA/ゲノムDNAが申請者らの講座に保存されている。本研究計画はこれまでの臨床研究をさらに発展させて今後のALK阻害剤を用いた臨床活動の際に重要となるEML4-ALK陽性肺がんの診断法、至適治療法、さらには薬剤耐性メカニズムを解明するものである。
研究方法
EML4-ALKの下流に働く分子を解明するために、高感度phosphoproteomics解析を行った。3T3線維芽細胞に野生型ALK、EML4-ALK、EML4-ALK(kinase-dead)を安定導入し、それぞれの細胞においてリン酸化されるタンパクを検証したところ、EML4-ALKによって特異的にチロシンリン酸化されるタンパクを同定した。また確認のため、これらタンパクのチロシン残基をリジン残基に置換したYF変異体を作成し、リン酸化レベルの変化を見た。一方、これまで収集したEML4-ALK陽性検体のなかで、新たにクリゾチニブ耐性となった5症例、耐性期と感受性期が保存された3症例について全エクソンの配列を次世代シークエンサーで解析した。
結果と考察
EML4-ALKによって特異的にリン酸化される分子の中で、新規分子を同定した。この分子のリン酸化部位を決定するために、チロシンをフェニルアラニンに置換したYF変異体をそれぞれのチロシンについて作成し、EML4-ALKによるリン酸化を調べた。その結果、EML4-ALKの標的となるアミノ酸残基が確認された。さらにこの分子に対するYF変異体を導入することで細胞の増殖が抑制されることがわかった。こうして本タンパクが、EML4-ALKの増殖シグナルにリンクし、セカンドメッセンジャーとして働くことが示された。一方、感受性期および耐性期のペア検体についてそのゲノムDNAを抽出し、SureSelectシステム(Agilent社)を用いてエクソン領域を純化した。それを次世代シークエンサーによって解析した。その結果、耐性期にのみ出現するアミノ酸置換として24種類が同定された。現在この遺伝子の点突然変異が、ALK阻害剤耐性に関連する可能性を検討している。
結論
EML4-ALKの下流分子として昨年度とあわせて2分子が明らかになり、しかも増殖に必須であることが示された。この分子の耐性期検体における発現量および変異の有無について検討する予定である。また耐性期特異的変異群の機能解析を行っており、その役割を明らかにする予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201407001Z