医療に役立つブタの開発研究:免疫のないブタからヒト血液をもつブタへ

文献情報

文献番号
201406035A
報告書区分
総括
研究課題名
医療に役立つブタの開発研究:免疫のないブタからヒト血液をもつブタへ
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-023
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
花園 豊(自治医科大学 分子病態治療研究センター 再生医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 西村 智(自治医科大学 分子病態治療研究センター 分子病態研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
25,480,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、再生医療研究に役立つブタモデルやその飼育法を開発し、さらにブタの光分子イメージング技術を確立する。これによって、ブタ生体内の血液細胞を可視化し、ブタ体内での血栓形成の瞬間を捉える。以ってブタモデルで次世代再生医療技術のPOC (proof of concept)を取得する。
研究方法
 (1) 実験用ブタの管理技術の開発:ブタ利用研究を推進するためには専用の施設が望まれる。自治医科大学は、そのための施設(先端医療技術開発センター、以下、ピッッグセンター)を運営している。平成26年度は、ピッグセンター内のブタに関してE型肝炎のフリー化を実施した。 (研究協力者:自治医科大学教授・國田智、同大学教授・岡本宏明)
 (2) 実験用ブタの作出:多くの疾患モデルブタが肉豚をベースに作られている。平成26年度、これらのブタのミニブタ化のために必要な生殖工学技術の開発を進めた。 (研究分担者:長嶋比呂志教授)
 (3) 生体光子分子イメージング法の開発:ブタなどの大型動物における生体イメージ取得のための光学系としては、平成25年度に一光子型から開発を行ったが、平成26年度は、一光子法に加え二光子法の開発を進めた。(研究分担者:西村智教授)
 (4) 倫理面の配慮:本研究では動物実験が含まれる。動物愛護には最大限の配慮を払った。動物実験プロトコールは機関内承認を得ている。
結果と考察
 (1) ピッグセンターの整備・運用:ブタを安全に実験利用するために、本センター内ブタのE型肝炎ウイルス(HEV)フリー化を実施した。具体的には、HEV-genotype3のORF2タンパク質を抗原としたELISA法により、ブタ抗体検査系を実用化した。この検査系を用いて、学内で実験使用したブタ全個体を対象に手術時または犠牲死時に血清を採集し、HEV抗体検査を実施した。現在までのところ、抗体陽性ブタは本センター内に発生していない。抗体陽性ブタが発見された場合に備え、血清中HEV RNAのORF2領域をターゲットにしたRT-PCR法により検出する方法も開発した。
 (2) 実験用ブタの作出:昨年度(平成25年度)、赤色蛍光タンパク質であるクサビラオレンジの遺伝子を組み込んだ、ミニブタ交雑種の作出に成功した。本年度(平成26年度)、より小型化の進んだ第2世代ミニブタの作出に成功した。ミニブタの人工生殖技術の開発を目的として、2系統のミニブタに対して発情同期化および排卵誘起法をほぼ確定し、GIFT法(配偶子卵管内移植法)が安定的に実施可能となった。赤色蛍光遺伝子(Kusabira-Orange, KuO)導入精子、糖尿病遺伝子(ヒト変異HFN1α)導入精子による受胎例を得た。さらに、これらの凍結精子による体外受精条件を決定し、KuOブタでは産仔を得て、本研究のイメージング実験に供給した。
 (3) ブタの光イメージング法の開発:昨年度(平成25年度)は、ブタ等大型動物故に必要な正立顕微鏡および支持周辺機器を考案し、ブタに適用可能なイメージングデバイスを開発した。そこで本年度(平成26年度)は、実際にKuOブタおよびGFPブタを用いたイメージングを行い、一光子・二光子ともに回折限界・ビデオレートを達成した。従来の一光子共焦点・二光子顕微鏡を用いた生体観察はマウスに限定されていたが、顕微鏡および周辺機器、制御・解析ソフトウェアの開発によりブタでも良好な画像が得られた。特に二光子顕微鏡は、大型動物においては圧倒的なアドバンテージがあり、生体深部においても単一血小板・単一細胞を同定できた。
 (4) ブタ体内の血液細胞の可視化:今までヒトiPS細胞由来の人工血小板の機能に関してNOGマウスを用いて解析していた。これをブタを用いて解析できるように、平成26年度、ヒト血小板をブタに投与・観察し、血栓形成機能を評価した。ブタはサイズがヒトに近いことなどから、人工血小板の安全性は言うに及ばず、有効性評価にも(マウスではなく)ブタは有効と考えられた。
結論
 (1) E型肝炎ウイルスは幼豚にしばしばみられ、動物由来感染症の原因となる。自治医科大学ピッグセンター内のブタに関して、E型肝炎ウイルス(HEV)フリー化を行った。
 (2) 実験用ブタの普及を図る上でミニブタ化は必須である。赤色蛍光タンパク質であるクサビラオレンジの遺伝子を組み込んだブタに関して、より小型化の進んだ第2世代の作出に成功した。
 (3) 一光子型および二光子型の生体光分子顕微鏡によって、実際にブタ生体内の血管を流れる赤血球、白血球、血小板を単一細胞レベルで可視化した。

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201406035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,124,000円
(2)補助金確定額
33,124,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 24,796,664円
人件費・謝金 210,900円
旅費 0円
その他 472,438円
間接経費 7,644,000円
合計 33,124,002円

備考

備考
サンプル保管用の密閉バックルコンテナが必要だったが、予定より2円超過のものしか見つけることができなかった。値引きの対応ができない小売店での立替え払いの購入だったため、2円超過分は自己負担とした。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-