疾患特異的iPS細胞を用いた創薬スクリーニングシステムの開発

文献情報

文献番号
201406029A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患特異的iPS細胞を用いた創薬スクリーニングシステムの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-017
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 高島 成二(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 坂田 泰史(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 優(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 李 鍾國(リ ショウコク)(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 明石 満(大阪大学 大学院工学研究科)
  • 松崎 典弥(大阪大学 大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
37,248,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、健常者由来、疾患特異的iPS細胞から作製した心筋組織を用いたスクリーニングにより、創薬開発の効率化、安全性の向上に資する基盤構築を目的とする。また、疾患特異的iPS細胞を用い、既承認薬剤が効能を有する適応可能疾患のスクリーニングにより、薬剤に新たな価値を与えるドラックリポジショニングを行う基盤の構築を行う。
研究方法
本課題では、下記の課題を遂行した。
1)希少難治性遺伝性疾患患者遺伝子のExome解析心
2)細胞の形態的、機能的精度の検証
3)心筋細胞の純度とシートの形態的機能的評価
4)三次元組織評価と薬剤応答性
5)毛細血管を持つ三次元組織体の構築
6)in vivoイメージング系の構築
結果と考察
1)希少難治性遺伝性疾患患者遺伝子のExome解析
心疾患家系において今まで報告のなかった特異的変異を同定した。機能解析実験の結果、この変異が当該遺伝子の機能を上げることが明らかになったため疾患iPS細胞樹立によりその機能を下げる薬剤のスクリーニングに使用できることが示唆された。心筋症家系においても原因と思われる未知の遺伝子変異を同定した。
また分化誘導した心筋細胞のエネルギー代謝を定量化する新たなアッセイ法の開発にも成功した。
2)細胞の形態的、機能的精度の検証
播種時の心筋細胞純度に比例して心室形細胞の割合が増加する傾向が認められた。また播種時の心筋細胞純度の割合によりCaイメージングおよび膜電位感受性色素で測定された興奮特性が異なることが示された。 
3)心筋細胞の純度とシートの形態的機能的評価
心筋細胞の純度が約70%のほうが90%よりも安定したシートを形成し、興奮性等の機能も良好であった。
4)三次元組織評価と薬剤応答性
 組織体全体に同期拍動を認め、Connexin43発現が確認され、電気的接合を有する事が示唆された。また拍動の動画解析により、播種細胞数の増加に伴う収縮速度・収縮-弛緩距離の増加が認められ、収縮力の増加が示唆された。
抗腫瘍性抗生物質添加により添加濃度依存的な細胞障害活性の上昇・生存率の低下傾向を示し、Field Potential Durationの延長傾向を認めた。
 一方、HERG Kチャンネルブロッカー添加により、Ca transientのピーク数の減少、およびピーク間隔の増加、立ち上がり時間の延長傾向を示した。βブロッカー添加では、Ca transientのピーク数の増加、ピーク間隔の減少傾向を示した。
5)毛細血管を持つ三次元組織体の構築
フィブロネクチンとゼラチンの交互積層法を改良したLbLナノ薄膜形成法を考案し、1~10層の三次元組織体を形成できた。また、種々の割合で心臓線維芽細胞を混合した三次元組織では、25~50%の心臓線維芽細胞を混合することで、最も高い同期拍動と緻密な組織体が得られた。心臓血管内皮細胞の混合比に依存した毛細血管構造を作成することができ、繊維芽細胞から産出される血管増殖因子(VEGF-A)が毛細血管構成に重要であることを見出した。
6)in vivo イメージングシステムの開発
本年度は、二光子励起レーザー顕微鏡、麻酔器、保温装置などのイメージング設備備品に加えて、循環動態管理のための心電図や持続点滴装置を新たに導入するとともに、心臓を固定するための新規固定用デバイスの開発を行った。

結論
iPS細胞樹立により疾患モデルになりうる可能性のある複数の心疾患原因遺伝子を同定した。
心筋細胞純度の違いが細胞シートの組織構造、機能に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、心筋細胞純度70%の場合に、シート構造、電気生理学的機能、液性因子の産生に優れており、非心筋細胞がこのような機能に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
また、毛細血管構造を有する三次元ヒトiPS由来心筋組織体の構築に世界で初めて成功した。今後は、構成細胞比の違いによるin vivoにおける細胞シート機能の比較を行い、心筋細胞シート純度の規格値の設定を進めていく必要がある。
また、開発中の生体多光子励起イメージング技術を用い、創薬候補化合物の薬物動態の解析や、有効性および安全性の評価が可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201406029Z