ヒト胚性幹細胞を用いた臨床利用の安全性検証のための試料保存と分析システムの構築

文献情報

文献番号
201406023A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚性幹細胞を用いた臨床利用の安全性検証のための試料保存と分析システムの構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
末盛 博文(国立大学法人京都大学 再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
14,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究はES細胞を用いた臨床研究において特に安全性を担保する上で必要となる研究の各段階での試料の保存と分析を行うシステムを確立し、将来的により安全な再生医療を実現する研究基盤を構築することを目的とする。
ヒトES細胞を用いた再生医療はすでに欧米では臨床試験が開始されており、今後より広範な医療領域での利用が期待されている。しかしながら、移植組織細胞の腫瘍化や、これに由来する感染性因子の伝搬は、被験者/患者のみならず公衆衛生上の問題を生じうるのではないかとの懸念がもたれており、これらの課題への対応は、ES細胞を含めて幹細胞の医療利用の普及を促進する上で重要である。本研究では提供医療機関と連携し、ドナー情報等の取扱/保存について検討、また、実施が想定される細胞の検査法の感度や精度について検証を行うことにより、将来のヒトES細胞を用いた再生医療の安全性の担保を推進する他の事業に資することができると考えられる。
研究方法
現在ヒトES/iPS細胞の臨床利用を目指し多くの機関が基礎/前臨床研究を進めており、我々は早期の再生医療の実現を目指して臨床用ES細胞作製の基盤研究をすすめている。この臨床用ES細胞株の樹立と分配では、臨床研究機関に細胞を分配するためのセルバンクが構築される。本事業ではこの時、臨床研究機関へ供給されるものと同一ロットの複数サンプルを将来の検証が必要になった場合に備え保存する。また、保存が適切に行われるように、その検証システムを整備する。分化誘導後移植に用いる機能細胞が作出されるが、この途中段階で組織幹細胞や前駆細胞が作出される場合は必要に応じてその一部の寄託を求める。 臨床試験において有害事象が発生した場合に、品質管理上の問題の有無について、必要に応じて寄託された試料のウイルス等の検査や遺伝子解析を行えるよう解析技術の開発検証を行う。
結果と考察
本研究を実施する京都大学再生医科学研究所では、基礎研究用のヒトES細胞株の樹立と特性解析を行ってきた。このような研究の過程で蓄積した培養/解析技術をもとに、臨床用ヒトES細胞株を作成・利用する上で必要となる細胞バンク構築を別途実施している。本事業はこの臨床用ヒトES細胞樹立研究及び医療機関等での臨床研究/治験と連動して行う。新規細胞株の樹立計画については、指針の整備等が想定よりも大幅に遅れたため、26年度中の研究計画の申請は行われなかった。そのため、樹立関連の試料/細胞の保存は実施しないこととし、品質基準の検証に注力することとした。
バンキングにおける安全性試験にかかわる基準の検証については、基本的に別途進められている臨床用ヒトES細胞のバンキングシステムの実証試験のなかで実施している。安全性にかかわる品質管理項目のなかから、異種動物由来成分残存試験、マーカー遺伝子発現解析についてプロトコールの検討および基準値の妥当性を検証した。細胞株の樹立過程で持いられた異種由来成分はバンク化の初期段階で検出限界以下になり、その後の同様の工程により理論的にはほぼ存在を否定できるレベルに達すると推定され、バンク化の時点においてはその存在は無視しうるものと考えられる。よって、異種動物由来成分に関しては、ウイルスなどの感染性因子について試験を行うことが重要であると考えられる。
 マーカー遺伝子発現解析では、未分化マーカーとしてNANOGなど4つ、分化マーカー6つを選択しqPCRによる定量を行った。細胞バンク作製を複数回実施しロット間でのデータの変動を検証した。未分化マーカーについては比較的変動がすくなく規格値を決定できるものと考えられた。分化マーカーの発現解析については、発現量が小さいこともあり他の遺伝子を用いることも含めた検討が必要であると考えられる。
臨床用細胞バンクの構築を目指す他機関の関係者との連携を含め、バンク構築の標準化について欧米を中心に国際的な状況に関する調査を進めている。その一環として2014年6月に開催されたInternational Stem Cell Banking Initiative会議に参加し、情報交換を行った。この会議の成果は過去数年間にわたる活動のとりまとめをふくめて、臨床用ヒト多能性幹細胞のバンキングにおける品質管理に関する国際的なガイダンスとして2015年2月に論文発表された。
結論
ヒトES細胞の臨床利用までには長期間にわたる基盤的研究が必要である。細胞製品の品質保証においては、製造工程を含めてその管理のために、様々な検査法について、一定の水準で適切に実施されることが、長期的な評価に必要である。そのため今後は臨床研究機関との連携をどのように進めていくかが重要な課題である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201406023Z