文献情報
文献番号
201406016A
報告書区分
総括
研究課題名
iPS細胞等を用いた移植細胞の安全性データパッケージ構築に関する研究
課題番号
H25-実用化(再生)-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川真田 伸(公益財団法人先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 郷 正博(公益財団法人先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター 細胞療法開発グループ)
- 尾上 浩隆(独立行政法人理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 イメージング機能研究グループ)
- 田原 強(独立行政法人理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 イメージング機能研究グループ)
- 西下 直希(公益財団法人先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター 研究・細胞評価グループ)
- 田村 尚(公益財団法人先端医療振興財団 細胞療法研究開発センター 研究・細胞評価グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
35,280,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者追加
田村 尚(平成26年11月1日付)
研究報告書(概要版)
研究目的
当研究課題は、幹細胞治療の被験者保護の観点から、無限の分裂能をもつ多能性幹細胞由来細胞移植の安全性試験のプロトコール策定とその実施を目的としている。そのため、1)腫瘍形成能の評価を主軸としたiPS細胞等多能性幹細胞由来分化細胞の造腫瘍性試験を実施。2)新規にImaging Probe開発を実施し転移性の造腫瘍性細胞の追跡評価法を開発。3)さらに無限に増殖を繰り返す可能性のある多能性幹細胞で頻発する遺伝子の変異は、腫瘍能獲得に直結するため、遺伝子変異検出試験の確立を研究目的としている。
研究方法
平成26年度は、1)Malignant astrocytoma U251 を1.0 x 101 ~ 1.0 x 105 個を移植し、iPS細胞由来神経幹細胞の腫瘍形成能評価の陽性対照として使用した。現在長期(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月)経過観察中である。また臨床実施施設(慶應大学)から入手したiPS細胞由来神経幹細胞1210B2由来NSC proA (P6) (最終細胞規格ではない)のNOGマウス線条体移植試験を予備試験として開始した。2)マウスB6 由来iPS細胞をlenti-luciferase constructでlabelした安定株を樹立した。今後このlabelした細胞をB6マウスの経尾静脈及び経皮肝臓で注入し、遠隔部位での腫瘍形成能と検出能を検討する(自家細胞移植モデル)予定である。3)染色体構造や遺伝子の変異をreal timeで検査するためcustom made CHG arrayのdesignの策定とそれを用いた機能試験を、長期培養iPS細胞核を用いて行った。
結果と考察
当該年度では、1)昨年度から実施している造腫瘍性試験陽性対照であるU251 (malignat astrocytoma細胞株)の移植試験を引き続き実施した。また慶應義塾大学と大阪医療センターとで共同開発していたiPS細胞由来神経幹細胞の分化プトロコールが確立したため、同プロトコールで分化させたiPS細胞由来神経前駆細胞 (iPS-NSC) 1210B2由来proA (P6)を1.0 x 101 ~ 1.0 x 105 個NOGマウス線条体に移植を開始した。観察期間は3ヶ月6ヶ月12ヶ月である。それに伴い細胞移植手技とプロトコールの確立とNOGマウス線条体移植での組織切片免疫染色法プロトコール確立を行った。 2)移植細胞を標識して、長期に移植後の体内動態を評価できる pCAG-Luc-iPベクターを開発し、in vivoでの機能試験としてマウス乳癌細胞に遺伝子導入し、この細胞をマウスに移植することで移植細胞の転移モデルの確立を行った。さらにiPS-NSCの残存iPS細胞の遠隔転移を調べる目的で、マウスB6由来iPS細胞にpCAG-Luc-iPベクターを用いてLuc遺伝子を導入し、安定導入株を樹立した。次年度はこの導入株をB6マウスに移植し、この免疫障害がない自己移植モデルとして経尾静脈移植や経皮肝臓移植を行い、移植細胞の体内動態を調べる予定である。 3) 多能性幹細胞の長期継代による染色体構造の不安定性である、染色体構造や遺伝子の変異は、腫瘍形成能獲得と結びつくため、iPS細胞とiPS細胞由来分化細胞の遺伝子構造変異をreal time base(2-3日)で評価できる新技術の開発を行った。具体的には、custom made CHG arrayのdesignを作成し、長期培養iPS細胞株を用いて継代数増加による遺伝子構造の変異についてこの試作CGH arrayの機能検証を兼ねた試験を実施した。
結論
当該年度では、造腫瘍性試験、転移性試験における基盤要素技術(移植機器の整備、線条体への移植技術の導入、共有Protocolの構築、ルシフェラーゼ安定発現細胞株の樹立)の確立を行った。さらにcustom made CHG arrayの作成を行い、このarrayが有効に機能することを示した。次年度はこれらの研究実績の上にiPS細胞由来NSCの造腫瘍能についてさらに検討を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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