文献情報
文献番号
201406009A
報告書区分
総括
研究課題名
滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究
課題番号
H25-再生-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(独立行政法人理化学研究所 網膜再生医療研究開発プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
- 栗本 康夫(先端医療振興財団)
- 川本 篤彦(先端医療振興財団)
- 渡辺 亮(京都大学iPS細胞研究書)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
231,594,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
加齢黄斑変性(AMD)は加齢に伴って発症する、網膜の黄斑部の萎縮または変性で、高齢者におけ
る中心視力悪化の一般的な原因である。現在、滲出型加齢黄斑変性の治療法としては、抗VEGF薬の
硝子体内投与が主流となっている。しかし、これはCNVの発生・増殖を抑制するための治療であり、
CNVがすでに存在している部位には繊維性組織やRPEの障害が残り、結局はその上の網膜も変性に
陥る。また、これらの抗VEGF治療薬に抵抗性を示すCNVも存在し、こういった症例には現在のとこ
ろレーザー、手術といった破壊的浸潤を伴う治療以外手段がない。よって、視力を維持/回復させる
ためには、原因となるCNVや瘢痕組織を取り除くとともに、網膜下のRPEの再建が必要である。
RPEは生体内において網膜の視細胞を維持するために重要な役割を果たしている。我々は、iPS細胞
から、生体から得られるものと同等の機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功しており、動物
実験によりそれが生体内において機能することを確認している。
これらの研究および知見に基づき、患者本人の皮膚組織から樹立したiPS細胞からRPE細胞を分化誘
導してRPEシートを作成し、滲出型加齢黄斑変性の患者に移植することにより、網膜組織の修復
再生を促し、視機能を改善する新しい治療法の開発を目指すことを目的として、本臨床研究を計画し、実施するものである。
る中心視力悪化の一般的な原因である。現在、滲出型加齢黄斑変性の治療法としては、抗VEGF薬の
硝子体内投与が主流となっている。しかし、これはCNVの発生・増殖を抑制するための治療であり、
CNVがすでに存在している部位には繊維性組織やRPEの障害が残り、結局はその上の網膜も変性に
陥る。また、これらの抗VEGF治療薬に抵抗性を示すCNVも存在し、こういった症例には現在のとこ
ろレーザー、手術といった破壊的浸潤を伴う治療以外手段がない。よって、視力を維持/回復させる
ためには、原因となるCNVや瘢痕組織を取り除くとともに、網膜下のRPEの再建が必要である。
RPEは生体内において網膜の視細胞を維持するために重要な役割を果たしている。我々は、iPS細胞
から、生体から得られるものと同等の機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功しており、動物
実験によりそれが生体内において機能することを確認している。
これらの研究および知見に基づき、患者本人の皮膚組織から樹立したiPS細胞からRPE細胞を分化誘
導してRPEシートを作成し、滲出型加齢黄斑変性の患者に移植することにより、網膜組織の修復
再生を促し、視機能を改善する新しい治療法の開発を目指すことを目的として、本臨床研究を計画し、実施するものである。
研究方法
平成24年度にヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に則り、
研究機関の倫理審査委員会の審査を受けた上で、厚生労働省に実施計画を申請し、平成25年7月19日付で臨床研究の実施が了承された。平成25年11月に1例目の被験者より皮膚を採取し細胞の製造を開始、平成26年9月12日に自家iPS細胞由来RPEシートの移植を実施した。
研究機関の倫理審査委員会の審査を受けた上で、厚生労働省に実施計画を申請し、平成25年7月19日付で臨床研究の実施が了承された。平成25年11月に1例目の被験者より皮膚を採取し細胞の製造を開始、平成26年9月12日に自家iPS細胞由来RPEシートの移植を実施した。
結果と考察
最初の臨床研究は、これまでにルセンティスなどの抗VEGF薬等の既存治療を受けて効果がみられな
かった、視力0.3未満の滲出型加齢黄斑変性の患者を対象とし、患者の上腕部から直径4ミリ程度の
皮膚を採取して、理化学研究所のCPCにおいて、皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、RPEシートを
作製した。1例目のRPEシート移植は平成26年9月12日に実施され、被験者については移植後半年を経過して、安全性に関する特段の問題は生じておらず、経過は順調である。
細胞のゲノムの変化について評価基準が無いこと、製造コストの問題など、自家移植の
しかし、課題が明確になったことから、2例目以降はCiRAのHLA三座ホモのiPSストックを用いた他家移植として実施することを予定しており、自家移植の患者募集は、現在見合わせている。
かった、視力0.3未満の滲出型加齢黄斑変性の患者を対象とし、患者の上腕部から直径4ミリ程度の
皮膚を採取して、理化学研究所のCPCにおいて、皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立し、RPEシートを
作製した。1例目のRPEシート移植は平成26年9月12日に実施され、被験者については移植後半年を経過して、安全性に関する特段の問題は生じておらず、経過は順調である。
細胞のゲノムの変化について評価基準が無いこと、製造コストの問題など、自家移植の
しかし、課題が明確になったことから、2例目以降はCiRAのHLA三座ホモのiPSストックを用いた他家移植として実施することを予定しており、自家移植の患者募集は、現在見合わせている。
結論
本臨床研究の目的は、滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者を対象に、本人の皮膚組織から樹立した
人工多能性幹細胞(iPS細胞)より分化誘導したRPE細胞を用いてRPE細胞シートを作製し、網膜下
に移植することにより、網膜組織の修復、再生を促し視機能を改善する新しい治療法の、安全性を
確認するとともに、視機能に対する有効性及びプロトコル治療の実施可能性を評価することである。
本臨床研究は、高齢化社会において患者数が増加しており、著しくQOLを阻害する疾患であるAMD
の治療法を開発するとともに、細胞移植による網膜再生により難治性網膜疾患を治療可能な疾患にす
るための端緒を開くものとして、意義あるものと考える。そのためにも評価基準の明確化や製造コスト削減などの課題をクリアして安全かつ適正価格で行える治療法とするために他家移植の検討を行っている。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)より分化誘導したRPE細胞を用いてRPE細胞シートを作製し、網膜下
に移植することにより、網膜組織の修復、再生を促し視機能を改善する新しい治療法の、安全性を
確認するとともに、視機能に対する有効性及びプロトコル治療の実施可能性を評価することである。
本臨床研究は、高齢化社会において患者数が増加しており、著しくQOLを阻害する疾患であるAMD
の治療法を開発するとともに、細胞移植による網膜再生により難治性網膜疾患を治療可能な疾患にす
るための端緒を開くものとして、意義あるものと考える。そのためにも評価基準の明確化や製造コスト削減などの課題をクリアして安全かつ適正価格で行える治療法とするために他家移植の検討を行っている。
公開日・更新日
公開日
2015-05-29
更新日
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