重症心不全に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による心筋再生治療の実用化研究

文献情報

文献番号
201406002A
報告書区分
総括
研究課題名
重症心不全に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による心筋再生治療の実用化研究
課題番号
H24-再生-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 齋藤 充弘(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性の拡張型心筋症の治療において、これまでの補助人工心臓より心臓移植への橋渡し治療のみでは、限界があるのが現状である。この限界を克服するために、本研究では、筋芽細胞シートの臨床応用の継続を行い、最終的には、その有効性の検討と、保険医療化を目指している。
 本年度は、拡張型心筋症・虚血性心筋症に対する新規治療の開発のため、筋芽細胞シートの臨床応用を中心に研究を継続すると同時に、同臨床研究を終了し、総括報告書を作成する。また、テルモ社企業治験を終了し、臨床研究総括報告書とともに、PMDAに提出し、筋芽細胞シートの条件付き承認を目指す。また、拡張型心筋症に対する医師主導型治験(Phase 2a)を申請し、治験届けを提出することを目的とする。
研究方法
1)骨格筋筋芽細胞シート移植による臨床研究の実施
 平成24年度に実施した成人重症拡張型心筋症及び虚血性心筋症の患者に対する骨格筋芽細胞シート移植臨床研究(HM0801号)を終了し、同臨床研究に続いて、拡張型心筋症、虚血性心筋症に対する筋芽細胞シートの臨床研究(HM1303号、Prospective matched controlled study)を立案し、実施した。
2)筋芽細胞シートの虚血性心筋症における薬事申請、及び拡張型心筋症に対する医師主導型治験
虚血性心筋症に対するテルモ社企業治験を終了し、大阪大学臨床研究総括報告書とともにPMDAに提出し、薬事申請を行う。拡張型心筋症に対する医師主導型治験の承認を目指して、PMDAとの面談等を行い、治験届けを行う。
結果と考察
1.心筋症患者に対する筋芽細胞シート移植臨床研究
すでにヒト幹細胞臨床研究指針に適合した臨床研究(HM0801号)で、安全性を主要評価項目として実施した。重症拡張型心筋症及び虚血性心筋症の患者に対する骨格筋芽細胞シート移植臨床研究において、症例数15例を完遂し、総括報告書を作成した。平成26年度においては、拡張型心筋症6例、虚血性心筋症患者3例に対して筋芽細胞シート移植を行った。全ての症例で手術は安全に完遂し、術後筋芽細胞シートに関連した有害事象は認めていない。
これまでの臨床研究にて、一部の筋芽細胞シート移植患者において左室のリバースレモデリングが認められており、症状、運動耐用能の改善を認めている。また、筋芽細胞シート移植を行った患者の術前のデータを参考に、"The Seattle Heart Failure Model"を用いて、予測生命予後を算出し、実際の生命予後と比較した。筋芽細胞シート移植を受けた患者は、予測生命予後と比較して、良好である可能性があり、今後のデータの蓄積により、さらに精度を増した解析が可能であると思われる。

2.筋芽細胞シートの薬事申請、及び拡張型心筋症に対する医師主導型治験
臨床研究(HM0801号)を終了し、同臨床研究の総括報告書と2014年度まで行ったテルモ社の進める企業治験(TCD-51073)のデータとともにPMDAに提出し、薬事申請を行っている。
また、拡張型心筋症PMDAとの事前面談、対面助言を行い、治験届けを終了し、現在患者候補を選択中である。

筋芽細胞シートの薬事申請にて、条件付き承認が得られた場合、虚血性心筋症に対して、承認後全例検証(レジストリー型PMS)を施行し、症例数を積んで、安全性、有効性を検証する予定である。
また、拡張型心筋症に対する医師主導型治験にて筋芽細胞シートの適応拡大を考えている。医師主導型治験による拡張型心筋症への適応拡大に関しては、テルモ社製の筋芽細胞シートによるデータが必要であるため、大阪大学で骨格筋採取後テルモ社CPCに骨格筋を搬送し、テルモ社CPCでGMP準拠筋芽細胞シートを作成し、移植施設への搬送移植を考えている。
また、今回の拡張型心筋症に対する医師主導型治験は、治験下での安全性の検証、及び有効性の探索(Phase 2a)を考えており、これまでの臨床試験、および医師主導型治験の結果を踏まえて、Phase 2b試験を行う予定である。
結論
本プロジェクトにより、筋芽細胞シート移植の安全性を検証することが可能であり、有効性を探索可能であった。本グラントに支援された臨床研究をもとに、医師主導型治験の申請、及び、企業治験を含めたシームレスな薬事申請への移行が可能となり、今後再生医療製品の上市のモデルケースになるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201406002B
報告書区分
総合
研究課題名
重症心不全に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による心筋再生治療の実用化研究
課題番号
H24-再生-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 宮川 繁(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 齋藤 充弘(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性の拡張型心筋症の治療において、これまでの補助人工心臓より心臓移植への橋渡し治療のみでは、限界があるのが現状である。この限界を克服するために、本研究では、筋芽細胞シートの臨床応用の継続を行い、最終的には、その有効性の検討と、保険医療化を目指している。
 最終年度は、拡張型心筋症・虚血性心筋症に対する新規治療の開発のため、筋芽細胞シートの臨床応用を中心に研究を継続すると同時に、同臨床研究を終了し、総括報告書を作成する。また、テルモ社企業治験を終了し、臨床研究総括報告書とともに、PMDAに提出し、筋芽細胞シートの条件付き承認を目指す。また、拡張型心筋症に対する医師主導型治験(Phase 2a)を申請し、治験届けを提出することを目的とする。
研究方法
1.骨格筋筋芽細胞シート移植による臨床研究の実施
2.筋芽細胞シート移植治療の可能性、安全性を適切に評価できるようなシステムの開発
3.細胞培養施設(CPC)で製造される細胞製剤の薬事対応を担保するCPC図書作成に必要な施設・製造・品質保証要件を検討する。
4.筋芽細胞シートの薬事申請、及び拡張型心筋症に対する医師主導型治験
虚血性心筋症に対するテルモ社企業治験を終了し、大阪大学臨床研究総括報告書とともにPMDAに提出し、薬事申請を行う。拡張型心筋症に対する医師主導型治験の承認を目指して、PMDAとの面談等を行い、治験届けを行う。
結果と考察
すでにヒト幹細胞臨床研究指針に適合した臨床研究(HM0801号)で、安全性を主要評価項目として実施した。本プロジェクトのもとに、重症拡張型心筋症及び虚血性心筋症の患者に対する骨格筋芽細胞シート移植臨床研究において、症例数15例を完遂し、総括報告書を作成した。全ての症例で手術は安全に完遂し、術後筋芽細胞シートに関連した有害事象は認めていない。
これまでの臨床研究にて、一部の筋芽細胞シート移植患者において左室のリバースレモデリングが認められており、症状、運動耐用能の改善を認めている。また、移植患者の術前データを参考に、"The Seattle Heart Failure Model"を用いて、予測生命予後を算出し、実際の生命予後と比較した。筋芽細胞シート移植を受けた患者は、予測生命予後と比較して、良好である可能性があり、今後のデータの蓄積により、さらに精度を増した解析が可能であると思われる。
 本臨床研究から様々な心不全に関するパラメーターを集積することができた。最終的なエンドポイントは生命予後の延長と考えているが、この解析には時間を要するため、生命予後と相関するパラメーターを検索する必要がある。最近では、300例の心不全患者の約300項目ものデータを集積し、生命予後を予想するJapan Heart Failure Modelを作成し、同予測式と実際の筋芽細胞シート移植患者の予後を比較し、生命予後の延長に関する有効性を推測することが可能と考えている。また、左室収縮率のみでなく、様々な指標を複合した有効性指標が、再生医療製品の有効性を検証するには有効ではないかと考えている。
GMPではハードウェアとしての施設・設備・機器と、ソフトウェアとしての文書・製造・試験方法・清掃・組織・教育訓練を両輪とした品質保証システムを確立できた。
臨床研究(HM0801号)を終了し、同臨床研究の総括報告書と2014年度まで行ったテルモ社の進める企業治験(TCD-51073)のデータとともにPMDAに提出し、薬事申請を行っている。
また、拡張型心筋症でもPMDAとの事前面談、対面助言を行い、治験届けを終了し、現在患者候補を選択中である。

結論
本プロジェクトにより、筋芽細胞シート移植の安全性を検証することが可能であり、有効性を探索可能であった。本グラントに支援された臨床研究をもとに、医師主導型治験の申請、及び、企業治験を含めたシームレスな薬事申請への移行が可能となり、今後再生医療製品の上市のモデルケースになるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201406002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
基礎的研究から臨床研究まで一貫した研究であり、最終的には企業治験まで達成し、薬事申請を行っている。また、本細胞シート法は他の細胞移植法と比較して、有効性のある極めてユニークな方法であり、我が国初のオリジナルな技術である。
臨床的観点からの成果
筋芽細胞シート移植により人工心臓を装着した患者2症例が人工心臓より離脱し、現在自宅療養を行っている。また、人工心臓を装着していない患者においても、左室のリバースレモデリング効果が認められたり、また、多数の患者さんで症状の改善効果が認められており、既存の治療法のない心不全患者に対する新しい治療法になる可能性があるものと思われる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
筋芽細胞シート治療法は、本プロジェクトから得た成果をもとに、企業治験を行い薬事申請を行うレベルにまで達した。再生医療系の治療で、日本のオリジナルの技術で保険収載されたものはなく、細胞シートの取り組みは今後の他の再生治療の上市を進める上で、参考にされるものと思われる。
その他のインパクト
新聞各紙にて、筋芽細胞シート治療法が紹介され、また、様々なテレビ局にも取材を受け、マスコミに取り上げられるたびに、患者からの依頼が殺到した。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
139件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

特許の名称
CYTOKINE-PRODUCING CELL SHEET AND METHOD FOR USING SAME
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2012/054992
発明者名: 紀ノ岡正博、齋藤充弘、澤芳樹、清水達也、岡野光夫
権利者名: 大阪大学、東京女子医科大学
出願年月日: 20120223
特許の名称
CELL SHEET TRANSPLANTATION JIG AND METHOD FOR UTILIZING SAME
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2012/059003
発明者名: 宮川繁、齋藤充弘、澤芳樹、水谷学、原田明希摩
権利者名: 大阪大学、株式会社セルシード
出願年月日: 20120402
特許の名称
Therapeutic agent for heart diseases and cell sheet for treating heart diseases
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2012/061898
発明者名: 濱田吉之輔、松浦成昭、澤芳樹、河口直正、宮川繁
権利者名: 大阪大学
出願年月日: 20120509
特許の名称
シート状細胞培養物回収システムおよび方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2014-179148
発明者名: 大橋文哉、竹内涼平、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社、大阪大学
出願年月日: 20140903
特許の名称
シート状細胞培養物とフィブリンゲルとの積層体の製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第6495603号
発明者名: 大橋文哉、竹内涼平、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社、大阪大学
出願年月日: 20140903
取得年月日: 20190315
国内外の別: 国内
特許の名称
シート状細胞培養物回収システムおよび方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第6494957号
発明者名: 大橋文哉、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社、大阪大学
出願年月日: 20140903
取得年月日: 20190315
国内外の別: 国内
特許の名称
シート状細胞培養物回収システム及び方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第6494958号
発明者名: 大橋文哉、鮫島正、宮川繁、澤芳樹、齋藤充弘
権利者名: テルモ株式会社、大阪大学
出願年月日: 20140903
取得年月日: 20190315
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshiki Sawa, Yasushi Yoshikawa, Koichi Toda et al.
Safety and efficacy of autologous skeletal myoblast sheets (TCD-51073) for the treatment of severe chronic heart failure due to ischemic heart disease.
Circ J , 79 , 991-999  (2015)
原著論文2
Shirasaka T, Miyagawa S, Fukushima S,et al.
Skeletal Myoblast Cell Sheet Implantation Ameliorates Both Systolic and Diastolic Cardiac Performance in Canine Dilated Cardiomyopathy Model.
Transplantation. , 100 (2) , 295-302  (2016)
原著論文3
Shigeru Miyagawa, Keitaro Domae, Yasushi Yoshikawa, et al.
Phase I Clinical Trial of Autologous Stem Cell-Sheet Trnasplantation Therapy for Treating Cardiomyopaty
Journal of American Heart Association , 6 (4) , e003918-  (2017)
doi.org/10.1161/JAHA.116.003918
原著論文4
Miyagawa S, Domae K, Kainuma S,et al.
Long-term outcome of a dilated cardiomyopathy patient after mitral valve surgery combined with tissue-engineered myoblast sheets-report of a case.
Surg Case Rep. , 4 (1) , 142-  (2018)
0.1186/s40792-018-0549-6.
原著論文5
Yoshida S, Miyagawa S, Toda K,et al.
Skeletal myoblast sheet transplantation enhanced regional improvement of cardiac function.
Eur Heart J Cardiovasc Imaging. , 19 (7) , 828-829  (2018)
10.1093/ehjci/jey064.
原著論文6
Yoshikawa Y, Miyagawa S, Toda K,et al.
Myocardial regenerative therapy using a scaffold-free skeletal-muscle-derived cell sheet in patients with dilated cardiomyopathy even under a left ventricular assist device: a safety and feasibility study.
Surg Today , 48 (2) , 200-210  (2018)
10.1007/s00595-017-1571-1.
原著論文7
Yamamoto R, Miyagawa S, Toda K,et al.
Long-term outcome of ischemic cardiomyopathy after autologous myoblast cell-sheet implantation.
Ann Thorac Surg , S0003-4975 (19) , 30509-  (2019)
10.1016/j.athoracsur.2019.03.028.

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2019-05-22

収支報告書

文献番号
201406002Z