文献情報
文献番号
201406001A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮水疱症に対する間葉系幹細胞移植再生医療の実用化研究
課題番号
H24-再生-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 片山 一朗(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 金田 安史(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 金倉 譲(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 早川 堯夫(近畿大学薬学総合研究科)
- 出沢 真理(国立大学法人 東北大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまで我々は、表皮水疱症病態で骨髄内間葉系幹細胞が剥離表皮部に集積して皮膚再生に寄与していることから骨髄間葉系幹細胞移植が表皮水疱症治療に有効である可能性を見出した。これらの研究成果を基に「表皮水疱症患者を対象とした骨髄間葉系幹細胞移植臨床研究」の実施を目的として研究を進めている。
平成26年度は、劣性栄養障害型表皮水疱症4例目に対して母親由来骨髄間葉系幹細胞の移植を実施し、有効性、安全性評価を実施することを目的に研究を進めた。
平成26年度は、劣性栄養障害型表皮水疱症4例目に対して母親由来骨髄間葉系幹細胞の移植を実施し、有効性、安全性評価を実施することを目的に研究を進めた。
研究方法
骨髄間葉系幹細胞移植臨床研究
平成25年6月に承認を得た最終改訂版実施計画書の内容に従って、重症劣性栄養障害型表皮水疱症4例目の臨床研究を実施した。また、平成25年度に移植した症例について、移植半年及び1年後の安全性、有効性評価を実施した(玉井、金倉、金田(眞)、片山、早川)。
平成25年6月に承認を得た最終改訂版実施計画書の内容に従って、重症劣性栄養障害型表皮水疱症4例目の臨床研究を実施した。また、平成25年度に移植した症例について、移植半年及び1年後の安全性、有効性評価を実施した(玉井、金倉、金田(眞)、片山、早川)。
結果と考察
【結果】
平成25年度にエントリーし、健常家族由来骨髄間葉系細胞を移植した症例の移植後評価を継続すると共に、4症例目をエントリーし、間葉系幹細胞移植を実施した。
具体的には、平成25年9月にエントリーした2例目、11月にエントリーした3例目について、それぞれ移植半年後および1年後の安全性及び有効性を評価した。その結果、2例目については移植半年後で潰瘍は略治し、異常所見は認めなかった。しかし、その1ヶ月後(移植7ヶ月目)で水疱の再燃を認め、1年後は一部に潰瘍形成を認めた。しかし、移植前と比較して潰瘍面の上皮化促進傾向は明確であった。一方、3例目は移植半年後で潰瘍面は著明に縮小していたものの完全閉鎖には至らず、しかし1年後には略治状態となった。どちらの症例も、潰瘍部およびその周囲の紅斑および搔痒の軽減が観察された。
平成26年5月に4症例目として25歳の劣性栄養障害型表皮水疱症男性をエントリーし、母親由来間葉系幹細胞移植を実施した。その結果、移植3ヶ月後の来院時には著明な潰瘍面積縮小効果を確認し、さらに4ヶ月後には潰瘍の略治状態が得られたという情報を患者母親から私信として得た。半年後の来院時には水疱・潰瘍形成の再燃を認めたが、間葉系幹細胞移植前と比較して潰瘍形成後の上皮化促進効果は持続しており、潰瘍形成と上皮化を繰り返す状態にあった。
【考察】
平成26年度の研究により、表皮水疱症に対する健常家族由来骨髄間葉系幹細胞移植の安全性、有効性が確認された。エントリーしたいずれの症例も数年間閉鎖することなく持続していた潰瘍を選択したにもかかわらず、間葉系幹細胞を移植後数ヶ月~1年で略治状態が得られたことは特筆に値すると考える。
特に3症例目では、1回の移植で1年後に潰瘍面の完全閉鎖が得られたことから、症例によっては間葉系幹細胞移植治療の長期治療効果が得られることが確認された。一方で、2症例目、4症例目では、それぞれ移植6ヶ月後、4ヶ月後と潰瘍閉鎖までの期間は2症例目と比較してより早期であったものの、その後水疱・潰瘍形成の再燃を認めたため、移植した間葉系幹細胞の長期生着の可能性は低いと思われる。しかし、移植前と比較して潰瘍閉鎖後に生じた新たな潰瘍は、その後比較的早期に上皮化傾向を示していることから、骨髄間葉系幹細胞移植による難治性潰瘍組織のリモデリングにより、組織修復機転が改善したことが示唆される。
平成25年度にエントリーし、健常家族由来骨髄間葉系細胞を移植した症例の移植後評価を継続すると共に、4症例目をエントリーし、間葉系幹細胞移植を実施した。
具体的には、平成25年9月にエントリーした2例目、11月にエントリーした3例目について、それぞれ移植半年後および1年後の安全性及び有効性を評価した。その結果、2例目については移植半年後で潰瘍は略治し、異常所見は認めなかった。しかし、その1ヶ月後(移植7ヶ月目)で水疱の再燃を認め、1年後は一部に潰瘍形成を認めた。しかし、移植前と比較して潰瘍面の上皮化促進傾向は明確であった。一方、3例目は移植半年後で潰瘍面は著明に縮小していたものの完全閉鎖には至らず、しかし1年後には略治状態となった。どちらの症例も、潰瘍部およびその周囲の紅斑および搔痒の軽減が観察された。
平成26年5月に4症例目として25歳の劣性栄養障害型表皮水疱症男性をエントリーし、母親由来間葉系幹細胞移植を実施した。その結果、移植3ヶ月後の来院時には著明な潰瘍面積縮小効果を確認し、さらに4ヶ月後には潰瘍の略治状態が得られたという情報を患者母親から私信として得た。半年後の来院時には水疱・潰瘍形成の再燃を認めたが、間葉系幹細胞移植前と比較して潰瘍形成後の上皮化促進効果は持続しており、潰瘍形成と上皮化を繰り返す状態にあった。
【考察】
平成26年度の研究により、表皮水疱症に対する健常家族由来骨髄間葉系幹細胞移植の安全性、有効性が確認された。エントリーしたいずれの症例も数年間閉鎖することなく持続していた潰瘍を選択したにもかかわらず、間葉系幹細胞を移植後数ヶ月~1年で略治状態が得られたことは特筆に値すると考える。
特に3症例目では、1回の移植で1年後に潰瘍面の完全閉鎖が得られたことから、症例によっては間葉系幹細胞移植治療の長期治療効果が得られることが確認された。一方で、2症例目、4症例目では、それぞれ移植6ヶ月後、4ヶ月後と潰瘍閉鎖までの期間は2症例目と比較してより早期であったものの、その後水疱・潰瘍形成の再燃を認めたため、移植した間葉系幹細胞の長期生着の可能性は低いと思われる。しかし、移植前と比較して潰瘍閉鎖後に生じた新たな潰瘍は、その後比較的早期に上皮化傾向を示していることから、骨髄間葉系幹細胞移植による難治性潰瘍組織のリモデリングにより、組織修復機転が改善したことが示唆される。
結論
表皮水疱症患者を対象とした骨髄間葉系幹細胞移植の安全性と有効性が確認された。
公開日・更新日
公開日
2016-01-28
更新日
-