高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明-京都大学オンサイトセンターにおけるナショナル・データベース(NDB)の活用

文献情報

文献番号
201405045A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明-京都大学オンサイトセンターにおけるナショナル・データベース(NDB)の活用
課題番号
H26-特別-指定-045
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 今中 雄一(京都大学大学院 医学研究科)
  • 奥野 恭史(京都大学大学院 医学研究科)
  • 加藤 源太(京都大学 医学部附属病院)
  • 黒田 知宏(京都大学 医学部附属病院)
  • 後藤 励(京都大学 白眉センター)
  • 田中 佐智子(京都大学大学院 医学研究科)
  • 田中 司朗(京都大学大学院 医学研究科)
  • 田村 寛(京都大学 医学部附属病院)
  • 福原 俊一(京都大学大学院 医学研究科)
  • 福間 真悟(京都大学 医学部附属病院)
  • 武藤 学(京都大学大学院 医学研究科)
  • 柳田 素子(京都大学大学院 医学研究科)
  • 山本 洋介(京都大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、①リサーチクエスチョンの解決を通じた、施策への応用が可能な知見の導出、②レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の活用基盤の整備、の2つである。
①に関しては、基本テーマとして「高齢者医療におけるエビデンス-診療ギャップ」を据え、その下に4つの個別テーマ「不適切処方」「がん治療」「慢性腎臓病(CKD)診療」「終末期医療」をリサーチクエスチョンとして想定した。個々の保険者からデータを得て研究するという従来の手法では母集団の偏りを回避することが難しく、得られた知見を普遍的な議論へつなげることは困難であった。この解決に悉皆性の高いデータであるNDBを用い、超高齢化社会に突入している日本の医療の実態について、より普遍的かつ説得力のある知見を得て、医療政策に活用できる提言に結びつける。また、NDBと、臨床情報を含む他のデータベースの分析結果と傾向を比較し、レセプトデータから臨床患者の動向を推定できる手法の開発を目指す。
②に関しては、厚生労働省と京都大学との間で「レセプト情報等の利用機会の充実等を推進するための連携協力協定」が締結され、NDBのオンサイトセンターが京都大学に設置された。同センターにおいて本研究によりNDB活用を契機に、センター内の運営体制を整備し、レセプト情報等の第三者へのデータ提供制度に関する普及・啓発を推進する。これにより、国が保有するレセプト等データの利活用促進という、日本再興戦略や国民会議報告書等における提言に応えたい。
研究方法
研究の遂行に関しては「プロトコール作成」と「体制構築・実施準備」の2つの業務を区切り、全体的に運用体制の構築および、学際的・有機的連携をとりながら進める。平成26年度はプロトコール作成を実施した。計画書のセクションごとに疾患領域(腫瘍薬物治療学、腎臓内科学)、リサーチクエスチョン(医療疫学)、方法論(疫学、医療情報学、医療経済学、生物統計学)などの専門家が分担した。より効率的に研究を推進するため人材も柔軟に編制し、体制を構築した。4つの課題のうち「不適切処方」の研究では、高齢者に対して避けることが望ましい薬剤の処方実態をBeersリストをもとに検討を行った。高齢者薬物治療の実態を把握し、有害事象に対する具体的な注意喚起に繋げるとともに、過剰投与の実態評価等、保険財政の適正化に向けた知見を得ることも目指す。「がん診療」に関する研究では「地域差」「がん診療連携拠点病院か否か」「病床規模」等の病院属性と、がん治療の質や医療費の施設間格差との関連要因を明らかにする。「慢性腎臓病(CKD)診療」に関しては、CKD患者の末期腎不全の進行の予防策と、透析導入後の医療費も含めた資源配分決定の手がかりを得る。「終末期医療」に関しては「死亡」から遡及して死の直前に行われた医療の実状を明らかにする。本研究はヘルシンキ宣言および文部科学省・厚生労働省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施する。インフォームド・コンセント、研究参加者への利益・不利益、研究参加者に新たに加わる侵襲と予想される有害事象・対応の各点について、本研究は既存情報を利用した観察研究であるため、項目として該当しない。個人情報の保護に関してNDBの利用にあたっては、個人情報に準ずる情報としての取り扱いを規定する厚生労働省有識者会議での議論に則り、京大病院に設置された医の倫理委員会の審査・承認を得て、安全かつ適切な運用を行う。
結果と考察
平成26年度の結果としてプロトコール作成が終了した。平成27年度以降はプロトコールに従い、データ分析、NDBの構造評価、および報告書等公表物の作成を行う。4つのテーマのうち「不適切処方」に関する研究成果から、高齢者における薬剤の適正使用、併用による有害事象について医療従事者に注意喚起を行うことが期待される。「がん診療」に関する研究からはがん治療の適正化や質の均てん化への貢献、新たながん診療提供体制の構築に資する知見を提供することが可能となる。「慢性腎臓病(CKD)診療」に対する研究からは「保険者が実施する糖尿病性腎症重症化予防事業」等において、保険者による重症化予防の取組みに資する情報の提供、CKD診療の質が医療財政に与える影響の評価が可能となる。「終末期医療」からは超高齢者を含む今後のわが国の高齢者医療のあり方について国民的議論の基盤となるデータが提示できる。また、オンサイトセンターの運営体制確立により、レセプト等データの利活用促進に関する日本再興戦略、国民会議報告書等の提言に応えることが期待される。
結論
平成26年度は本研究のプロトコールの作成を終えた。誰も経験したことのない超高齢社会への突入に際し、高齢者医療のあり方と方向性を提示する重要な課題という認識で、意義ある知見の導出に努めたい。

公開日・更新日

公開日
2016-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405045C

収支報告書

文献番号
201405045Z