女性の健康の包括的支援に関する研究の今後の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201405036A
報告書区分
総括
研究課題名
女性の健康の包括的支援に関する研究の今後の在り方に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-035
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松谷 有希雄(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 勝又 浜子(国立保健医療科学院)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院)
  • 森川 美絵(国立保健医療科学院)
  • 吉田 穂波(国立保健医療科学院)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性は、人生の各ライフステージで、心身が変化するという特性を有しているが、わが国における女性の健康に対する支援は、妊娠・出産にかかる支援やがん対策等疾病ごとの支援にとどまっている。今後、女性の活躍を推進する上でも、女性の心身の特性を踏まえた、科学的エビデンスに基づく包括的で統合的な、生涯を通じて切れ目のない支援体制を構築していくことが必要である。
また、女性の健康に関する研究においても、これまでは、妊娠・出産や疾病等に着目して行われてきたが、今後は、女性の生涯を通じたそして世代を超えた健康課題の影響も考慮に入れ、全人的な視野をもって推進する必要がある。
そこで、本研究では、女性の健康および女性の健康科学に関する概念整理を行うとともに、わが国における、生涯を通じた女性の健康の包括的な支援方法と支援体制に資する研究のあり方について検討を行う。
研究方法
国内外の女性の健康の実態と対策にかかる研究に関して系統的にレビューを行う。また、文献レビューと並行して、有識者による検討会を開催する。文献レビューと有識者検討会の結果から、わが国における女性の健康の包括的支援を構築する上で必要となる研究分野を抽出し、総合的な議論・論点整理を行う。
結果と考察
文献レビュー等の結果、女性の健康とは「一人ひとりの女性が生涯を通じ、身体的・精神的・社会的に健康な状態」と定義することができた。また、女性の健康が維持増進されることにより、女性の健康寿命の延伸と男女間・女性内の健康格差の縮小、女性の社会参加および社会貢献の促進等が可能になることが示唆された。支援の実態に関してわが国では、行政(国や自治体)および民間(医療機関や企業等)において、それぞれの立場から、女性の健康向上に向けて取組を推進する動きがある一方、関係者間の連携や、分野横断的な取組の推進において課題があることが示唆された。他方、諸外国では女性の健康の病態あるいは社会的決定要因等に関するエビデンスに基づく治療法の開発や行政施策を推進していることが明らかになった。
以上の結果を踏まえ、女性の生涯を通じたそして世代を超えた影響を考慮に入れた女性の健康の包括的な支援の展開と支援体制の構築を目的に、以下の4項目を優先的な研究課題として取り上げることが望ましいと考えた。

1)女性の健康の包括的支援の総合的戦略に関する研究
(1)保健・医療・福祉・教育等が協働した女性の健康を推進するための包括的な戦略に関する研究
(2)女性の健康課題に関するモニタリング・フレームワークに関する研究
(3)女性の健康を支援する人材育成・研修方法や体制整備に関する研究
(4)地域を基盤とした女性の健康の包括的な支援方法の開発と効果に関する実証研究

2)女性ホルモンの影響による健康課題の病態解明に関する研究
(1)全ライフステージを通じた女性の健康課題に関する実態及びリスクファクターに関する研究
(2)全ライフステージを通じた女性の健康課題の病態解明に関する研究
(3)全ライフステージを通じた女性の健康課題の治療法に関する研究
(4)女性の健康課題に対するホルモン療法の医療経済性の評価に関する研究

3)女性の健康に関する社会的決定要因の生涯を通じた影響に関する研究
 
(1)摂食障害や危険なアルコール・薬物の使用等、女性の心身に影響を及ぼす課題の社会的な要因の分析と課題解決方法に関する研究
(2)就労と家庭等、多様な社会的役割の遂行に伴う健康課題に関する研究
(3)社会経済的に脆弱な立場(貧困状態や暴力被害等)にある全てのライフステージの女性の健康に関する地域を基盤とした包括的な支援方法の開発と効果に関する実証研究
4)女性の健康に関するヘルスリテラシーと情報提供方法に関する研究
(1)女性の健康に関するヘルスリテラシーの実態に関する研究
(2)専門家・一般市民向けの女性の健康に関するデータベース構築に関する研究
(3)ソーシャルメディア等を用いた女性の健康に関する情報提供方法に関する研究

結論
女性の健康に関して文献レビューと各分野の有識者からのヒアリングを実施した。その結果、女性の健康は、「一人ひとりの女性が生涯を通じ、身体的・精神的・社会的に健康な状態」と定義することができた。また、1)女性の健康の包括的支援の総合的戦略に関する研究、2)女性ホルモンの影響による健康課題の病態解明に関する研究、3)女性の健康に関する社会的決定要因の生涯を通じた影響に関する研究、4)女性の健康に関するヘルスリテラシーと情報提供方法に関する研究、の4分野の研究が、わが国の女性の健康施策を推進するうえで優先度の高い研究である事が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は学術的な意義を探求することよりも、行政施策への反映や、実践的な提言を抽出することを目的になされたものであるが、これまで、わが国では女性の健康に関する臨床研究、疫学的研究、政策研究、社会学の研究など、分野横断的にレビューした研究はなく、学術的にも意義が大きい。
臨床的観点からの成果
本研究では、国内外の女性の健康のための研究の推進状況を俯瞰し、わが国における女性の健康の包括的支援に関する臨床研究、疫学的研究、政策研究等を戦略的かつ一体的に推進するために、当該分野における研究の方向性が提示することを最終目的に実施された。研究結果から、女性の健康に関する研究に関する4つの優先分野を抽出し、厚生労働省担当課に報告した。優先分野のうち1分野は、女性の健康に関する臨床研究に関連するものであり、今後、本研究成果をもとに、わが国の女性の健康に関する臨床研究が発展することが期待される。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究は、わが国における生涯を通じた女性の健康の包括的な支援方法と支援体制に資する研究のあり方について検討を行うものであり、行政施策に反映させることを当初より想定して実施された。本研究の結果、女性の健康の包括的支援を行ううえで取り扱うべき女性の健康の範囲、つまり女性の健康の定義の明確化、エビデンスに基づく施策の策定に通じる優先すべき研究テーマを特定され、今後の女性の健康に対する行政の支援の在り方に対する有用な示唆を与えたと考えられる。
その他のインパクト
社会的に女性の活躍を推進する流れのなかで、本研究では、女性の健康の包括的支援を推進するための、研究の方向性を示したことから、社会に与えるインパクトは大きい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201405036Z