文献情報
文献番号
201405034A
報告書区分
総括
研究課題名
国民健康・栄養調査を活用した生活習慣病の対策に資する研究
課題番号
H26-特別-指定-033
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
古野 純典(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
- 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 )
- 宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、国民健康・栄養調査資料を活用して、食事パターンとHbA1c、血清脂質及び血圧との関連、日本に特徴的な食品とHbA1c、血清脂質及び血圧との関連、やせ若年女性及びやせ高齢者の栄養学的特性、ならびに食事のとり方と栄養素バランスとの関連について日本人の知見を強化することである。
研究方法
本研究は平成24年国民健康・栄養調査のデータを活用する断面研究である。
1.食事パターンとHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
主成分分析により食事パターンを同定し、HbA1c、血圧及び血清脂質との関連について統計学的検討をおこなった。
2.日本的食品とHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
米飯および他の穀類食品とHbA1cとの関連を検討するとともに、大豆食品、魚、緑茶など日本に特徴的な食品と血清脂質及び血圧との関連を検討した。
3.やせの者の栄養学的特性に関する研究
若年女性と高齢者のやせの栄養学的特性を明らかにするために、それぞれBMI 18.5未満のやせた者とBMI 18.5~25.0の者との違いを比較検討した。
4.食事のとり方と栄養素充足の研究
3食の摂取バランス、食事の種類、主食・主菜・副菜の揃い具合などの食事のとり方が各栄養素摂取量の充足や肥満度とどのように関連するかを比較した。食事摂取基準2015に基づいた栄養摂取状況の包括的評価法を考案し、現状の評価をおこなった。
1.食事パターンとHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
主成分分析により食事パターンを同定し、HbA1c、血圧及び血清脂質との関連について統計学的検討をおこなった。
2.日本的食品とHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
米飯および他の穀類食品とHbA1cとの関連を検討するとともに、大豆食品、魚、緑茶など日本に特徴的な食品と血清脂質及び血圧との関連を検討した。
3.やせの者の栄養学的特性に関する研究
若年女性と高齢者のやせの栄養学的特性を明らかにするために、それぞれBMI 18.5未満のやせた者とBMI 18.5~25.0の者との違いを比較検討した。
4.食事のとり方と栄養素充足の研究
3食の摂取バランス、食事の種類、主食・主菜・副菜の揃い具合などの食事のとり方が各栄養素摂取量の充足や肥満度とどのように関連するかを比較した。食事摂取基準2015に基づいた栄養摂取状況の包括的評価法を考案し、現状の評価をおこなった。
結果と考察
結果
1.食事パターンとHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
40~74歳の7,757名を対象に、主成分分析による食事パターン解析をおこない、ヘモグロビンA1cとの関連を検討した。パン、牛乳、乳製品、マーガリンの高摂取で特徴付けられるパン食型パターン、伝統的な野菜煮物を想像させる和食型パターンおよび麺類嗜好型パターンが同定された。パン食型パターンが女性でのみHbA1c低値と関連していた。血圧及び血清脂質のデータを有する40~74歳の男女9502名を対象に主成分分析による食事パターン解析をおこない、男性において、日本食型食事パターンが血圧低値、欧米型食事パターンがLDLコレステロール高値と関連していた。
2.日本的食品とHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
40~74歳の7,757名を対象に、穀類食品、コーヒー・緑茶とヘモグロビンA1cとの関連を検討した。女性では米飯摂取量が多いほどHbA1c値が高値であった。男女ともにコーヒー摂取がHbA1c低値と強く関連していた。血圧及び血清脂質のデータを有する40~74歳の男女9502名を対象に日本的食品と血圧及び血清脂質との関連を検討した。男女とも、代表的な日本食品である味噌が血圧及び血清脂質に優れていることを示す知見が得られた。
3.やせの者の栄養学的特性に関する研究
20~29歳女性のやせについては明確な関連要因は同定できなかった。70~84歳のやせの研究では特に女性では微量栄養素の摂取量も減少していた。食事の質の低下がみられた。
4.食事のとり方と栄養素充足の研究
主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物の摂取状況には、性・年齢差がみられた。主食・主菜・副菜のそろう食事の回数が多い者では、各栄養素の摂取量が多かった。各栄養素の各食事からの摂取比率は多くの栄養素が夕食から40%程度をとっているが、年齢、肥満度により差のみられる栄養素も見られた。日本人の食事摂取基準(2015年版)の27の栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量、目標量と照らしあわせて性、年齢、体格別に、各栄養素摂取量の食事摂取基準達成率(%)および27点満点の摂取基準達成スコアを求めた。国民の栄養摂取状況はまだ改善すべき点があり、このスコアは、性、年齢、体格により異なることが示された。
考察
40-74歳の国民健康栄養調査参加者を対象とした2つの食事パターン研究のひとつでデザート型と名付けた「砂糖、甘味料、お菓子類、油あげ類などの高摂取により特徴付けられる」食事パターンは解釈が難しいパターンである。両者で共通して同定されたのパン食型(洋風朝食型)及び野菜、きのこ、大豆製品が多い和食型(健康日本食)は現代日本における確かな食パターンと考えられる。パン食型食パターンは女性のHbA1cとは予防的関連を示したが、LDLコレステロールとは正の関連があった。
1.食事パターンとHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
40~74歳の7,757名を対象に、主成分分析による食事パターン解析をおこない、ヘモグロビンA1cとの関連を検討した。パン、牛乳、乳製品、マーガリンの高摂取で特徴付けられるパン食型パターン、伝統的な野菜煮物を想像させる和食型パターンおよび麺類嗜好型パターンが同定された。パン食型パターンが女性でのみHbA1c低値と関連していた。血圧及び血清脂質のデータを有する40~74歳の男女9502名を対象に主成分分析による食事パターン解析をおこない、男性において、日本食型食事パターンが血圧低値、欧米型食事パターンがLDLコレステロール高値と関連していた。
2.日本的食品とHbA1c、血圧及び血清脂質に関する研究
40~74歳の7,757名を対象に、穀類食品、コーヒー・緑茶とヘモグロビンA1cとの関連を検討した。女性では米飯摂取量が多いほどHbA1c値が高値であった。男女ともにコーヒー摂取がHbA1c低値と強く関連していた。血圧及び血清脂質のデータを有する40~74歳の男女9502名を対象に日本的食品と血圧及び血清脂質との関連を検討した。男女とも、代表的な日本食品である味噌が血圧及び血清脂質に優れていることを示す知見が得られた。
3.やせの者の栄養学的特性に関する研究
20~29歳女性のやせについては明確な関連要因は同定できなかった。70~84歳のやせの研究では特に女性では微量栄養素の摂取量も減少していた。食事の質の低下がみられた。
4.食事のとり方と栄養素充足の研究
主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物の摂取状況には、性・年齢差がみられた。主食・主菜・副菜のそろう食事の回数が多い者では、各栄養素の摂取量が多かった。各栄養素の各食事からの摂取比率は多くの栄養素が夕食から40%程度をとっているが、年齢、肥満度により差のみられる栄養素も見られた。日本人の食事摂取基準(2015年版)の27の栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量、目標量と照らしあわせて性、年齢、体格別に、各栄養素摂取量の食事摂取基準達成率(%)および27点満点の摂取基準達成スコアを求めた。国民の栄養摂取状況はまだ改善すべき点があり、このスコアは、性、年齢、体格により異なることが示された。
考察
40-74歳の国民健康栄養調査参加者を対象とした2つの食事パターン研究のひとつでデザート型と名付けた「砂糖、甘味料、お菓子類、油あげ類などの高摂取により特徴付けられる」食事パターンは解釈が難しいパターンである。両者で共通して同定されたのパン食型(洋風朝食型)及び野菜、きのこ、大豆製品が多い和食型(健康日本食)は現代日本における確かな食パターンと考えられる。パン食型食パターンは女性のHbA1cとは予防的関連を示したが、LDLコレステロールとは正の関連があった。
結論
国民健康・栄養調査データの活用研究により、食パターン研究、日本的食品の研究、食事のあり様研究等を実施することができた。日本人に共通すると思われる2つの食パターンが同定された。栄養素から食品あるいは食品の組み合わせにシフトした研究が国民健康・栄養調査において一層発展するものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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