科学的根拠に基づく病原体サーベイランス手法の標準化に関する緊急研究

文献情報

文献番号
201405032A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づく病原体サーベイランス手法の標準化に関する緊急研究
課題番号
H26-特別-指定-030
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
調 恒明(山口県環境保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大石 和徳(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所真菌部)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 橋本 修二(藤田保健衛生大学)
  • 皆川 洋子(愛知県衛生研究所)
  • 高橋 和郎(大阪府立公衆衛生)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 岸本 剛(埼玉県衛生研究所)
  • 神谷 信行(東京都健康安全研究センター)
  • 三崎 貴子(川崎市健康安全研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,246,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染症発生動向調査事業が対象とする病原体ごとにサーベイランスの目的およびその効果を明らかにし、自治体あたりの必要病原体検査数について検討し、また、自治体における検査の質を確保するための方法を検討し、感染症発生動向調査に基づく病原体サーベイランスの向上に資する提言を行うことを目的とする。
研究方法
1.感染症検査に関する提言
研究組織は、統括班、疫学班、細菌班、ウイルス班とした。疫学班では自治体における感染症の検査の質を確保するための方法について、精度管理のあり方を地方衛生研究所の検査担当者の協力を得て検討した。
2.地方衛生研究所における病原体サーベイランスの現状
 地域保健推進事業の一環として、5年に一度全国79か所の地方衛生研究所を対象として地方衛生研究所全国協議会が行う地方衛生研究所業務実態調査をもとに、地方衛生研究所の現状について考察を行った。
3.感染症の病原体検査の意義
 感染症発生動向調査事業における感染症検査の意義について地方衛生研究所もしくは国立感染症研究所の専門家に執筆を依頼しとりまとめた。
4.インフルエンザ病原体定点数及び五類感染症の検体数に関する検討
各2回の全体会議ならびにウイルス小班会議に加え、橋本研究分担者との会議を開催して議論を重ねた。また、5回にわたり研究班のメンバ−による少人数の会議における議論の結果を報告書に反映させた。
5.都道府県等における感染症検査の質の確保に関する検討
 研究班で「検査指針たたき台」を作成し、地方衛生研究所全国協議会精度管理部会の佐多部会長が精度管理部会員を対象に意見出しを依頼し、様々な意見を得た。また、宮﨑小班では、検査室の構造に関する検討を行った。これらを参考としながら、本研究班では、地方衛生研究所の10人の検査担当者の参加を得て、2日間のグループワーキングにより検査指針案を作成した。
結果と考察
1.感染症検査に関する提言
会議及び打ち合わせにより行われた議論を踏まえて提言案を作成し、さらに検討を加え研究班提言としてまとめた。
2. 地方衛生研究所における病原体サーベイランスの現状
地方衛生研究所における検査の現状を把握するために、2012年、13年の検査数についての全国調査を行った。その結果、79か所の地方衛生研究所のうち、78か所から回答があった。その結果、都道府県別の人口10万人あたりのインフルエンザ検査検体数には、2.1から28.0まで10倍以上の格差があることがわかった。また、データは示さないがインフルエンザウイルスの分離が全く行われていない都道府県があることも明らかとなった。
3. 感染症検査の意義
感染症法に定められた疾患のうち、国または自治体で検査が行われている感染症について、地方衛生研究所もしくは国立感染症研究所の検査担当者、研究者に感染症検査の目的、公衆衛生学的意義について執筆を依頼しとりまとめた。
4-3. インフルエンザ以外の五類感染症の検査
小児科定点(患者定点の約10%)から、毎月4検体(症例)を目途に、少なくとも年間40検体を採取し検査を行う事を基本とする。
結論
感染症発生動向調査のうち、病原体サーベイランスは自治体間で大きな取り組みの格差が生じている。この格差をなくすために、病原体定点あたりの検体採取検体数を規定する必要があると思われた。インフルエンザについては、流行期に定点あたり毎週1検体、非流行期には月1検体程度を採取し遺伝子検査、ウイルス分離を行うことが適切と考えられた。また、その他の五類定点把握感染症についても1ヶ月あたり4検体以上の検体を確保し検査を行う必要がある。これまでは病原体定点が必ずしも均一に稼働していたと思われないことから、今後の定期的搬送により検体搬送の負荷が増大することが懸念されるため、搬送システムについて十分な検討が必要である。
検査の質を確保するためには、標準作業書、人材育成、機器の保守管理、検査室の構造等が重要である。標準作業書については、地方衛生研究所全国協議会が主体となり、国立感染症研究所の協力を得てひな形を作成する必要がある。この際、病原体検出マニュアルが参考となることから、本マニュアルは適宜最新の技術を盛り込んだものに改訂していく必要がある。人材育成は、国立保健医療科学院等が行う、技術研修を含んだ研修に計画的に派遣する必要がある。機器の保守管理についても計画性を持って実施する必要があり、予算の確保が必須である。
感染症危機管理のためには、決められた検査だけではなく常に最新の技術を取り入れ、専門的知識による柔軟な検査対応が必要となる。地方衛生研究所においては、原因不明の発熱疾患、急性呼吸器感染症などの類型にとらわれない検査対応能力を培い、健康危機に備えることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405032C

収支報告書

文献番号
201405032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,139,000円
(2)補助金確定額
7,139,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,780,445円
人件費・謝金 602,533円
旅費 2,780,650円
その他 1,082,645円
間接経費 893,000円
合計 7,139,273円

備考

備考
支出超過分を自己資金で補填した。

公開日・更新日

公開日
2016-05-27
更新日
-