WHO ICD-10一部改正に伴う分類比較とコーディング支援に関する研究

文献情報

文献番号
201405030A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO ICD-10一部改正に伴う分類比較とコーディング支援に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-025
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 健(東京大学大学院 医学系研究科  疾患生命工学      センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第10回改正 (以下「ICD-10」) は、世界保健機関 (WHO) により傷病を国際的な基準として定めた分類体系であり、各分類項目には複数の傷病が含まれる。本研究の目的は、国内における最新ICD-10告示(2013年) と旧告示 (2003年) について傷病単位でICDコード変化分析を行い、改正における我が国への統計等への影響を分析することである。さらに、ICD-10の2003年版にもとづくICD分類コードと対比できるICD-10の2013年版に準拠したコーディング支援ソフトウエアの開発を行う。また、継続的な改訂/改正作業に伴うメンテナンスを正確かつ効率的に実施できるようにおする環境整備が重要であるが、そのためにはある分類に含まれる複数の傷病がどのように分割・統合したかを時系列で追わなければならないが、それをサポートする仕組みとして、ICD-10自体がどのように変化したかを時系列情報と共に記録・管理するプラットフォームが重要である。そこでこれをWebアプリケーションとして構築することも行う。
研究方法
ICD10対応標準病名マスタの全病名について、診療情報管理士の資格を有する複数者がICD10(2013)をコーディングすることにより新旧対比表を作成した。また包括医療費支払い制度方式(DPC制度)では、ICD10コードにもとづく分類がベースになっているが、今回のICD10コード変更により影響を受ける可能性のあるDPC分類の表を作成した。さらにICD-10の2013年版コーディング支援ソフトウエアの開発ICD10(2003)コーディングを支援するソフトウエアとして、研究代表者らが開発し公表しているソフトウエア「病名くん」のソースコードを改修し、ICD10(2013)にもとづく検索ができるように改良したバージョンを開発した。またICD10コード時系列管理システムとして、ICD10改正の時系列変遷を追うなどの分析を支援し、複数のユーザーが利用できるWebアプリケーションを開発し実際のICD10データを格納しテストを行った。
結果と考察
対象とした標準病名マスタは2015年3月リリース版(V3.16)で、対象となる見出し語(LT)病名数は24665語で、このうち第1ICDコードが変化する語は343語(1.4%)であった。この343語のうちICD10(2013)を割り当てたものの解釈により疑義が生じる可能性がある語は47語であった。一方、343語に出現した異なる「ICD10コードの変化の組み合わせ」は、181種類であった。DPCコードに影響を与える可能性のある傷病名を調査した結果では、次のように計330語の病名でDPCコードの変化またはなんらかの影響が起こりうる可能性があった。ICD-10の2013年版コーディング支援ソフトウエアの開発では、ICD10-2013のコードの一部を入力した場合に、該当する病名を逆引きしリストで表示する。この際、ICD10(2003)とICD10(2013)の両方が表示できる。このソフトウエアにより容易に変更点の把握ができるソフトが完成した。時系列スナップショット出力機能として特定の時点のICD-10 (例えば2003年版)の日本語版あるいは英語版をベースとし、任意の指定した日時までに適用される全ての修正勧告を適用したスナップショットを日英それぞれで別個に出力し、閲覧並びにCSVまたはTSVファイルとしてダウンロードする機能を導入した。また、編集閲覧機能WHO修正勧告が先行し、国内適用案が未だ存在していない項目については、日本語情報を空エントリーにて仮登録をし、フラグを付けて後に検索できることとした。
結論
国内における最新ICD-10告示(2013年) と旧告示 (2003年) について傷病単位でICDコード変化分析を行い、改正における我が国への統計等への影響を分析した。またICD10(2013)に変更となる範囲は標準病名マスタ24665語のうち343語(1.4%)と限定的であった。ただ181種類の変化組み合わせがある点では多様な変化の影響を受けていた。また、DPCへの影響範囲は計330語であったが、このうち実際にDPCコードに影響を与える範囲は限定的であると考えられた。また、ICD-10(2013)コーディング支援ソフト、およびICD-10情報の時系列変遷の把握を目的としたWeb管理プラットフォームを構築した。改正内容比較(2013年と2003年)のみならず、今後も継続的に管理を可能とする有益なプラットフォームとなると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療情報システム学の観点からは、ICD10の改正に関する時系列情報の管理が一元的にWebシステムで行えるようようにデータベース設計の要件が分析、整理され、それにもとづいて実運用可能なシステムが構築できた点が大変重要である。また、ICD10(2013)改訂による病名コーディングにおいて影響の可能性のある範囲が絞られたことで、死因分析をはじめ各種の保健医療領域における統計分析や医療経済学的分析に資することができると考えらる。
臨床的観点からの成果
ICD10(2013)改訂による病名コーディングにおいて影響の可能性のある範囲が絞られたことで、死因分析をはじめ各種の保健医療領域における統計分析や医療経済学的分析に資することができると考えらる。また、コーディング支援ソフトウエアが開発されたことは広く多方面で今後ICD10(2013)の導入に関わる研究者、関係者にとって有用なソフトウエアツールとして位置づけられると考えられる。
ガイドライン等の開発
単年度研究で終了直後であるため、具体的に参考にされる等の利用はないが、Webベースで開発されたICD10の時系列変更情報の一元管理システムは、今後毎年行われていく持続的なICD10の改訂に関する情報の管理環境として厚労省の担当室をはじめとして非常に有用なツールになると期待される。
その他行政的観点からの成果
単年度研究で終了直後であるため、具体的に参考にされる等の利用はないが、Webベースで開発されたICD10の時系列変更情報の一元管理システムは、今後毎年行われていく持続的なICD10の改訂に関する情報の管理環境として厚労省の担当室をはじめとして非常に有用なツールになると期待される。
その他のインパクト
単年度研究で終了直後であるため、まだ特記すべきことはない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
2021-05-31

収支報告書

文献番号
201405030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,670,000円
差引額 [(1)-(2)]
30,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 26,674円
人件費・謝金 4,473,080円
旅費 0円
その他 4,471,200円
間接経費 2,700,000円
合計 11,670,954円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
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