原子力災害からの回復期における住民の健康を支える保健医療福祉関係職種への継続的な支援に関する研究

文献情報

文献番号
201405029A
報告書区分
総括
研究課題名
原子力災害からの回復期における住民の健康を支える保健医療福祉関係職種への継続的な支援に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-024
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 志村 勉(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 堀口 逸子(長崎大学東京事務所(広報戦略本部))
  • 寺田 宙(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線リスクコミュニケーションは政府全体で取り組むこととされ、平成24年3月に「原子力被災者等の健康不安対策に関するアクションプラン」が策定された。保健医療福祉に関連する事項としては、「統一的な基礎資料をもとに作成した保健医療福祉関係者のための研修教材を用いて、中長期的に研修が行われるよう必要な支援を行う」とされた。
 事故後4年目を迎えて、①被災地の住民(帰還する住民含む)も対象にした地域性、個別性の違いの課題 ②被災地とそれ以外の地域との温度差の課題の2つに大別される課題が顕在化してきた。
 そこで本研究では、①平成26年度に事業化された相談員を保健医療福祉関係者が担う、もしくは協力する際の、関係者のあり方や関係者への支援のあり方・具体的なツール ②保健医療福祉職の職域や地域の課題に応じた支援のあり方をまとめたマニュアル等原案をとりまとめ、その活動モデルを提示することを目指した。
研究方法
1 福島県担当課と連携して保育士等対象研修を実施し、その評価を行うと共に、地域での活動の課題の整理を試みた。

2 作成している資料や実施している取組が現場で活用しうるかどうかについて、アンケートやインタビュー調査等を実施し、評価した。

3 相談員を保健医療福祉関係者が担う、もしくは協力する際の、関係者のあり方や関係者への支援のあり方・具体的なツール開発に資するために、保健活動の視点からの地域活動のレビューを行った。

4 更なる展開を求めて、米国EPAで活動例が紹介されているPhotoVoice手法の有効性を評価した。

5 東京都健康安全研究センターの講習会「放射線の測定値の見方、考え方」に協力し、参加者からの評価を得た。

6 コミュニケーションを円滑にすすめるためには、教科書やパンフレットといった情報提供を主たる目的とした媒体以外に、コミュニケーションをサポートするための媒体があってもよいと考えられたことからその開発を進めた。
結果と考察
1 回復期フェーズに応じた課題の変化に配慮した取り組みが必要だと考えられた。また、現場での課題は、放射線そのものの知識や放射線リスクの知識だけでは解決できる単純なものではなく、「リスク認知」の社会的・規範的次元を超えた、倫理的・法的・社会的問題(ELSI)への対応が保健福祉分野でも迫られ、それが心理的な負担につながる構造にもある。このため、科学技術の社会的・規範的問題に取り組む人文・社会科学の専門性も必要となる。現場のニーズに基づく課題を解決するためには、倫理的な側面を重視すると共に異なる専門領域間でのコミュニケーションを促進させることが重要となると考えられた。
2 昨年度の研究成果物の有効性を評価するために、アンケート調査等を実施した。その結果、全体としては、イラストが豊富であり、見やすく、読んでみようという気持ちになるという評価を得た。一方で、専門的な用語について、さらなる工夫が必要との意見も聞かれた。今後、継続して発行する場合には、掲載するコンテンツについては、地域の状況変化に合わせたものが必要になる。
3 福島県伊達市における取り組みを取り上げ、同市の対人保健サービスに関する事業の状況についてインタビュー調査を実施し、被災自治体における放射線リスクに関係したコミュニケーションのあり方について、自治体一般における放射線健康管理に係る事業の実施可能性を検討した。
4 フォトボイス手法を用いたワークショップにより本手法が、放射線リスクの発見(再確認)に有効であり、視覚的な手法であることから情報共有も容易であることがわかった。福島の放射能・放射線リスクに関するマネジメントやコミュニケーションの場面へも、幅広い応用が期待できると考えられた。
5 参加者間で感じ方の差異は大きかったが、それぞれの立場の方から肯定的な評価が得られた。
6 コミュニケーションを円滑にすすめるためには、情報提供を主たる目的とした媒体以外に、コミュニケーションをサポートするための媒体が必要と考えられる。このため、媒体内容をより詳細に説明したパンフレットを作成し、学校現場での利用を考慮し、小学生向けに改変した。
結論
本研究班では、一昨年度の欅田班や昨年度での検討に引き続き、現場の課題の困難さの解決を実践的な研究により目指した。
その結果、これまで実践してきた研修の枠組みが機能していること、教材が活用しうることを検証した。また、行政の取り組みとして、保健師活動の原点に立ち戻るとともに、PDCAサイクルを念頭に置き組織で取り組むことの有用性を確認した。改めて現場の方々の努力に敬意を払いたい。

公開日・更新日

公開日
2016-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201405029C

収支報告書

文献番号
201405029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 58,787円
人件費・謝金 626,079円
旅費 1,140,410円
その他 6,180,514円
間接経費 0円
合計 8,005,790円

備考

備考
地域での聞き取り調査をより詳細に行う必要があったため。

公開日・更新日

公開日
2016-05-24
更新日
-