薬価算定基準(原価計算方式)における平均的利益率の補正率の定量的算出法及び特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準における定量的評価に係る研究

文献情報

文献番号
201405022A
報告書区分
総括
研究課題名
薬価算定基準(原価計算方式)における平均的利益率の補正率の定量的算出法及び特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準における定量的評価に係る研究
課題番号
H26-特別-指定-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 龍也(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 成川 衛(北里大学大学院薬学研究科)
  • 中村 哲也(群馬大学医学部附属病院)
  • 小林江梨子(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 田倉 智之(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国の保険診療においては、医療用医薬品の保険償還価格(薬価)と、特定保険医療材料の支給に要する保険償還価格(基準材料価格)が定められており、薬価では「薬価算定の基準」、基準材料価格では「特定保険医療材料の保険償還価格算定の基準」が定められている。本研究では、この研究成果を踏まえ、薬価の原価計算方式並びに基準材料価格の類似機能区分比較方式及び原価計算方式について、定量的な算出方法を提案することを目的としている。
研究方法
 薬価の原価計算方式については、原価計算方式により薬価が算定された新薬について、平均的利益率の補正の実績を集計した。次に、これまでの補正実績の範囲内での充足要件と補正率の関係を検討し、補正適用品目についてその革新性等の要件を細分化し、積み上げ可能な評価因子を策定した。これを参考に、想定される新薬の特徴、既存治療に比べた有用性、作用機序の新規性などの観点から、加算的評価の上限(+100%)までの補正率を適用する際に充足すべき要件を追加作成した。同様に、補正率の減算的評価についても、下限(-50%)までの補正率を適用する際の充足要件を検討した。最終的には、細分化した充足要件をリスト化し、このリストに基づいてこれまでの補正事例を採点し直し、定量的な評価基準の妥当性等を検討した。また、検討結果に応じ、細分化した充足要件を重みづけする等の再調整を行った。以上の検討結果に基づき、採点表形式でチェックリスト化した補正率算出のための評価基準の提案を行った。
 基準材料価格の類似機能区分比較方式については、平成23 年度以降に類似機能区分比較方式によって新たに保険償還価格が算定された全ての特定保険医療材料について、画期性加算及び有用性加算並びに改良加算の加算実績を確認し、充足要件を細分化し、積み上げ可能な評価因子を策定した。次に、細分化した充足要件(因子)をリスト化し、このリストに基づいてこれまでの補正事例を採点し直し、定量的な評価基準の妥当性等を検討した。どのような評価となるのかなど、その評価基準の妥当性などを検討し、細分化した充足要件の内容について再調整を行った。また、検討結果に応じ、細分化した充足要件を重みづけする等の再調整を行った。以上の検討結果に基づき、採点表形式でチェックリスト化した補正率算出のための評価基準を構築した。こうやって構築された評価基準の妥当性を検証するため、従来の加算率と本研究の加算率の比較を、スピアマン順位相関分析と分布対応表(分布マトリクス)における一致率で実施した。統計学的検定においては、有意水準を5%とした。また、これらの検証の過程で、保険医療材料専門組織の委員などからの意見集約も行い、指摘された内容を反映させた。
 薬価及び基準材料価格の算定方法に係る相違点とその影響については、薬価と基準材料価格の算定方法はおおむね似ているものの、一部で違いが見られる。これらの相違点を整理し、本研究の定量化に与えた影響及び今後の償還価格算定の方向性につき検討を行った。
結果と考察
 薬価の原価計算方式については、原価計算方式により薬価が算定された42品目について、加算的又は減算的補正の運用ルールを構築し、補正率は-50%~100%の範囲となった。この補正率算出のルールに従って算出した補正率と、実際に適用された補正率の差は概ね±10%の範囲内に収まった。
 基準材料価格の類似機能区分比較方式については、画期性加算及び有用性加算、改良加算について加算要件の運用ルールを構築した。特定保険医療材料74件につき、本研究の方式による加算率と従来方式による加算率を比較したところ、加算率の分布状況は5割以上が一致する傾向にあった。なお、原価計算方式に係る営業利益率の調整率については、整理検討を行った。
 基準償還価格の算定方法について、原価計算方式においては薬価と基準材料価格で特段の差異はないが、類似薬効比較方式と類似機能区分方式においては、加算の種類及び加算の内訳ともに差異が見られた。
結論
 本研究では、新規の薬価及び基準材料価格につき、細分化した要件項目への該当/非該当をチェックシート形式により確認することで補正率(%)が一意に定まる運用ルールを提案した。定量的な基準を利用することで、予見性及び透明性の高い補正ルールの運用が可能となると考えられ、医薬品・医療機器の開発の効率化につながることが期待される。
 今後も、新たに承認される新薬及び新規保険医療材料に対する加算・補正の適用事例を蓄積しつつ、特異な事例について評価・分析を加味しながら、本研究で提案した運用ルール案を向上させてゆくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 特定保険医療材料において、製品の多様性や術者による効果の違い、長期的な耐久性などの医薬品にはない特性があり、そのような特性を織り込んだ算定ルールを提案したことには、専門的・学術的観点からの新規性と意義があると考える。また、本研究による補正率と実際の薬価及び基準材料価格の算定において適用された補正率は概ね一致し、現行の補正ルールとの連続性を確保することにおおむね成功した。
臨床的観点からの成果
 本研究の定量的な基準を利用することで、今後の新薬及び新規保険医療材料の償還価格算定において、算定プロセスにおけるより高い予見性及び透明性が担保されると考えられる。特に医薬品・医療機器の開発者にとっては、自らが研究開発を行う製品の将来の保険償還価格に関する予見可能性が高まるため、開発の効率化にもつながることが期待される。また、日本の保険診療についての一定の定量的基準を示すことで、海外との価格比較等が行いやすくなることが期待される。
ガイドライン等の開発
 該当せず。
その他行政的観点からの成果
 新薬及び新規保険医療材料の価格算定ルールについては、算定の客観性を高めることなどを目的に、中央社会保険医療協議会(中医協)などから定量的な基準策定を求められていたところ、そのような基準の確立に資する知見を提供した。平成26年3月の中医協総会において、研究結果が報告され、今後の診療報酬改定の際に利用されることとなった。また詳細については継続的に審議されることとなった。
その他のインパクト
 特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
2020-04-22

収支報告書

文献番号
201405022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,900,000円
(2)補助金確定額
4,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,581,213円
人件費・謝金 538,500円
旅費 465,320円
その他 1,314,967円
間接経費 0円
合計 4,900,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
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