文献情報
文献番号
201405021A
報告書区分
総括
研究課題名
G8認知症サミット日本後継イベントにおけるテーマ「新しいケアと予防」を日本が提唱するための調査研究
課題番号
H26-特別-指定-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
本間 昭(社会福祉法人 浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
研究分担者(所属機関)
- 粟田主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 繁田雅弘(首都大学東京人間科学科)
- 鳥羽研二(国立長寿医療研究センター)
- 進藤由美(認知症介護研究・研修東京センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,925,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、2013年にロンドンで開催された認知症サミットの後継イベントに先立ち、複数の専門分科会を開催し、各専門テーマ別にG8の行政担当者および研究者の発表とディスカッションを行う。分科会における発表等を通して、現在各国で進められている認知症の予防とケアに対する新たなモデルの状況、およびこれらの取り組みの科学的根拠や成果指標の開発と実践についての研究等の状況を明らかにする。最も効果的な予防・ケアのモデルや、その評価についての共通認識を得るための国際的な共同研究の枠組み、および認知症対策の先進国がG8関係国以外も含めて今後認知症問題に直面する国々へどのように経験を移転し、そのモデルを示すか、について、実現可能な解決策を提案する。この結果を踏まえ、確立した研究成果を我が国の認知症施策における、ケアと予防へ資するとともに、世界の最長寿国であるわが国から発信し、世界に広げることにつなげる。
研究方法
研究組織を作り、それぞれの視点から後継イベントで報告される内容について検討を加えた。分科会は①各国の認知症の予防とケアの現状報告、②認知症予防とケア:適時適切な支援の提供、③認知症予防とケアの科学的側面、④認知症の人が地域で暮らす、⑤認知症に関する理解の促進や教育の推進の5つが行われる予定であった。さらに、OECDシンポとして、医療の質のレビュー公表イベントが開催される。これらの分科会における発表等を通して、現在各国で進められている認知症の予防とケアに対する新たなモデルの状況およびこれらの取り組みの科学的根拠や成果指標の開発と実践についての研究等の状況を明らかにすることができる。
結果と考察
本年1月にわが国では新オレンジプランが公表されたが、いくつかの点を除きこのたびの後継イベントで認知症ケアと予防をめぐる各国の状況が示された。共通する大きな課題の1つは認知症に関する理解の促進が今回の参加国でも優先順位の高い課題だったが、発展途上国においてはさらに大きな課題であることが参加者のなかで共有できた。わが国では、この目的のために認知症サポーターの養成に係る事業が行われているが、各国から大きな関心が寄せられ、英国ではすでにわが国の活動を手本とした事業が始められていることが紹介された。認知症に関する理解の推進は新オレンジプランの1つ目の柱に掲げられているが、今後、すべての関係者を対象とした広範かつ積極医的な活動が望まれる。ケアの質の評価に関しては、わが国の新オレンジプランでも今後の課題として示されているが、参加者の間では必ずしも十分なコンセンサスにはいたらなかった。人材育成ではわが国のシステムが紹介され、一定の評価を受けたが、今後急速に増加する認知症ケアのニーズにいかにタイムリーに対応できるかが課題となった。特に、人材育成は開発途上国に対する支援のあり方が大きなテーマであった。認知症の予防では、発症遅延の可能性は示されるものの、介入研究結果として十分なエビデンスが得られていない現状が指摘された。
結論
結果で示されているように認知症のケアと予防の現状について参加者間で共通の認識をもつことができたが、本会議の冒頭の阿部総理大臣の挨拶のなかで、認知症は厚生労働省のみではなく多省庁横断的な取り組みが必要であることが示された。今後のわが国の政策を進める上で重要なキーワードであろう。特に、開発途上国に対する支援のあり方に関しては有効な議論が今まで行われていない。認知症ケアに関して十分な経験を有するわが国の貢献が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-11-09
更新日
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