文献情報
文献番号
201405015A
報告書区分
総括
研究課題名
全国がん登録のガイドライン等の準備のための研究
課題番号
H26-特別-指定-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 亜希子(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部)
研究分担者(所属機関)
- 海崎 泰治(福井県立病院 病理診断、臨床病理科)
- 増田 昌人(琉球大学医学部附属病院がんセンター 腫瘍内科)
- 西野 善一((地独)宮城県立病院機構宮城県立がんセンター研究所 がん疫学・予防研究部)
- 井上 真奈美(東京大学大学院医学系研究科 健康と人間の安全保障(AXA)寄附講座)
- 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
- 橋本 修二(藤田保健衛生大学医学部 衛生学講座)
- 磯部 哲(慶應義塾大学大学院 法務研究科)
- 大木 いずみ(栃木県立がんセンター研究所 疫学研究室)
- 東 尚弘(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん政策科学研究部)
- 松田 智大(独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、がん登録等の推進に関する法律(以下、「がん登録推進法」という)施行に伴い法令上ないし運用上必要となる指針や運用方針等のたたき台を検討、作成し、提案するとともに全国がん登録等の円滑な運用に資するための院内がん登録の運用指針案の検討、作成やソフトウェア等の機能拡張等を実施することを目的としている。
がん登録推進法においては、a)法施行日以前に開始されたがんにかかる調査研究における同意に代わる措置についての指針、b)院内がん登録に係る指針を定めることになっており、他にも c)審議会等の意見を聴取して運用する部分についても、あらかじめ基本的な考え方を定めていく必要がある。特に全国がん登録のデータ利用にあたっての運用方針を定めることは、きわめて大きな課題となっているが、過去には具体的に検討されたことはない。政令・省令が制定されることが見込まれる平成26(2014)年内にはこれらの指針や運用方針等の案を具体的な形で提案することが必要である。こうした作業を進めていくにあたっては、特に、1)全国がん登録の運用方法に関わる問題、2)全国がん登録のデータ利用に関わる問題、3)院内がん登録の普及と標準的運用に関する問題の3つが喫緊の課題であり、早急に課題解決に向けた対応をする必要がある。
がん登録推進法においては、a)法施行日以前に開始されたがんにかかる調査研究における同意に代わる措置についての指針、b)院内がん登録に係る指針を定めることになっており、他にも c)審議会等の意見を聴取して運用する部分についても、あらかじめ基本的な考え方を定めていく必要がある。特に全国がん登録のデータ利用にあたっての運用方針を定めることは、きわめて大きな課題となっているが、過去には具体的に検討されたことはない。政令・省令が制定されることが見込まれる平成26(2014)年内にはこれらの指針や運用方針等の案を具体的な形で提案することが必要である。こうした作業を進めていくにあたっては、特に、1)全国がん登録の運用方法に関わる問題、2)全国がん登録のデータ利用に関わる問題、3)院内がん登録の普及と標準的運用に関する問題の3つが喫緊の課題であり、早急に課題解決に向けた対応をする必要がある。
研究方法
各課題について研究分担者と会議を重ね、段階的に論点を整理し、全研究者参加の平成27年1月の総括会議を経て、基本とする考え方等をまとめた。
(倫理面への配慮)
院内がん登録の普及及び標準化に関する問題の検討において、連結可能匿名化された院内がん登録全国集計(対応表は病院側にのみ存在)に提供されたデータを用いたが、最終の結果は集計値であり、少数集計値による非匿名化の問題も考慮して結果を提示した。
(倫理面への配慮)
院内がん登録の普及及び標準化に関する問題の検討において、連結可能匿名化された院内がん登録全国集計(対応表は病院側にのみ存在)に提供されたデータを用いたが、最終の結果は集計値であり、少数集計値による非匿名化の問題も考慮して結果を提示した。
結果と考察
1)全国がん登録のデータ利用に関わる問題、2)全国がん登録の運用方法に関わる問題、3)院内がん登録の普及と標準的運用に関する問題、の3つの課題について研究分担者と会議を重ね、段階的に論点を整理し、基本とする考え方等をまとめた。その一部を厚生科学審議会がん登録部会における基礎資料として提案できた。さらに、がん登録推進法の平成28年1月施行にあたり必要な院内がん登録の項目並びに全国がん登録情報を取扱う組織や人に求められる個人情報保護のための措置に関するマニュアル案を作成した。しかしながら、研究班会議において論点として整理されたものの、基本とする考え方がまとめきれなかったこと及び厚生科学審議会がん登録部会に提言した案に対する意見など、今後、継続して検討すべき課題が残った。
1)全国がん登録のデータ利用に関わる問題
法律第21条第3項第4号において、全国がん登録情報等の非匿名化情報の提供にあたっての要件とされる「当該がんの罹患者の同意」について、研究班においては、本人以外による代替同意は認められないのではないかという問題提起がなされた。
匿名化について、がん登録推進法の精神の「情報の十分な活用」のためには、適切な匿名化技術を駆使してもなお個人性が残るような状態での情報提供が認められる社会的合意形成が必要と考えられた。
2)全国がん登録の運用方法に関わる問題
電子化された届出情報を病院等から都道府県知事に提出する方法について、研究班では、従前の地域がん登録事業における実績から、配達記録の残る郵送及び都道府県において医療情報の移送の実績のあるネットワークの活用を提案した。しかし、厚生科学審議会がん登録部会において、郵送における責任分界点の不明瞭さ、並びに都道府県における利用実績が電子化された個人情報の適切な移送手段であるとの判断材料にはならないとの意見が出された。
3)院内がん登録の標準的運用に関する問題
研究班会議及び厚生科学審議会がん登録部会等において、院内がん登録の項目について、現状において診療録に記載されており、院内がん登録実務者が情報を正確に取得しやすい項目に限定するのではなく、院内がん登録として収集する意義があって本来診療録に記録されるべきである情報について、診療録を改善させる方向性で考えるべきではないか、という意見があった。
1)全国がん登録のデータ利用に関わる問題
法律第21条第3項第4号において、全国がん登録情報等の非匿名化情報の提供にあたっての要件とされる「当該がんの罹患者の同意」について、研究班においては、本人以外による代替同意は認められないのではないかという問題提起がなされた。
匿名化について、がん登録推進法の精神の「情報の十分な活用」のためには、適切な匿名化技術を駆使してもなお個人性が残るような状態での情報提供が認められる社会的合意形成が必要と考えられた。
2)全国がん登録の運用方法に関わる問題
電子化された届出情報を病院等から都道府県知事に提出する方法について、研究班では、従前の地域がん登録事業における実績から、配達記録の残る郵送及び都道府県において医療情報の移送の実績のあるネットワークの活用を提案した。しかし、厚生科学審議会がん登録部会において、郵送における責任分界点の不明瞭さ、並びに都道府県における利用実績が電子化された個人情報の適切な移送手段であるとの判断材料にはならないとの意見が出された。
3)院内がん登録の標準的運用に関する問題
研究班会議及び厚生科学審議会がん登録部会等において、院内がん登録の項目について、現状において診療録に記載されており、院内がん登録実務者が情報を正確に取得しやすい項目に限定するのではなく、院内がん登録として収集する意義があって本来診療録に記録されるべきである情報について、診療録を改善させる方向性で考えるべきではないか、という意見があった。
結論
がん登録推進法の平成28年1月の施行に向けて、全国がん登録について法令上もしくは運用上必要となる指針及び運用方針等のたたき台を検討、作成及び提言するとともに、全国がん登録等の円滑な運用に資するための院内がん登録の運用指針案の検討及び作成、並びにソフトウェア等の機能拡張等を実施することができた。研究班会議において論点として整理されたものの、基本とする考え方がまとめきれなかったこと、及び厚生科学審議会がん登録部会に提言した案に対する意見について、今後、継続して検討すべき課題が示された。
公開日・更新日
公開日
2015-05-29
更新日
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