文献情報
文献番号
201405014A
報告書区分
総括
研究課題名
原子力災害時における医療機関等の事業継続や避難に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
谷川 攻一(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 廣橋伸之(広島大学大学院医歯薬保健学研究院・救急医学 )
- 岩崎泰昌(広島大学大学院医歯薬保健学研究院・救急医学 )
- 富永隆子(放射線医学総合研究所)
- 田勢長一郎(福島県立医科大学・救急医療学)
- 長谷川有史(福島県立医科大学・救急医療学)
- 近藤久禎(災害医療センター)
- 山本尚幸(原子力安全研究協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
東日本大震災に複合して発生した福島第一原子力発電所事故では避難区域に立地した医療機関、社会福祉施設の避難と避難後の医療対応において多くの混乱が発生した。この福島第一原発事故の教訓を踏まえて、原子力防災体制(防災計画、原子力災害対策指針等)の改定が行われ、道府県や市町村における防災計画、具体的な避難計画、マニュアル等の整備が進められている。また、重点区域内での医療支援活動等の被ばく医療のあり方について検討がなされ、一定の方向性が打ち出されている。こうした背景のもと、重点区域内の災害要援護者の居住災害時医療におけるBCPでは入院している患者や入所者に対するlife & health support(生命および健康の維持)が焦点となる。施設が災害や事故を受けた場合に、業務を中断せず必要なサービスの提供を維持するために、事前にBCPを策定しておくことは施設の役割の根幹をなす。
そこで本研究では重点区域内にある医療機関や社会福祉施設のBCP(避難計画含む)作成ガイドラインを作るための手引きについて検討し、併せて原子力災害時対応状況調査として医療機関、社会福祉施設対象のアンケートを作成することとした。また、原子力災害時の事業継続を円滑に進める上で必要となる放射線防護について社会福祉施設職員等を対象とした分かり易い教材を作成するとともに、原子力災害時の施設対応の改善を目的とした研修プログラムについても検討した。
そこで本研究では重点区域内にある医療機関や社会福祉施設のBCP(避難計画含む)作成ガイドラインを作るための手引きについて検討し、併せて原子力災害時対応状況調査として医療機関、社会福祉施設対象のアンケートを作成することとした。また、原子力災害時の事業継続を円滑に進める上で必要となる放射線防護について社会福祉施設職員等を対象とした分かり易い教材を作成するとともに、原子力災害時の施設対応の改善を目的とした研修プログラムについても検討した。
研究方法
本研究は以下の4つの研究課題について検討を行った。
研究課題1:医療機関および社会福祉施設の避難計画とBCPの策定手引き書の作成
BCPについては、企業向けBCPや既に報告されている一般災害対応におけるBCPとの整合性を維持しつつ、福島原発事故の検証と検討に基づき、原子力災害時の医療機関および社会福祉施設におけるBCP策定手順案を作成した。
研究課題2:医療機関、社会福祉施設、市町行政へのアンケートの作成
BCP作成過程に求められる要件を中心にアンケートとしてまとめた。その内容は福島原発事故前の防災体制、事故対応、事故発生直後に求められた医療対応および亜急性期に発生した医療ニーズと課題等に関するものとした。
研究課題3:被ばく医療および放射線健康影響についての一元的な教材開発
既存の資料を調査し、医療機関や社会福祉施設等の職員による自己学習が可能である教育教材の作成と、原子力災害時に職員がとるべき行動を記したチェックリストについて検討した。
研究課題4:被ばく医療活動検討に基づいた研修プログラム策定
原子力災害時のBCPを立案している先行医療機関を調査し、BCP策定のための研修(立ち上げ研修)及びフォローアップ研修プログラムを考案し、そのプログラムの妥当性について検討した。
研究課題1:医療機関および社会福祉施設の避難計画とBCPの策定手引き書の作成
BCPについては、企業向けBCPや既に報告されている一般災害対応におけるBCPとの整合性を維持しつつ、福島原発事故の検証と検討に基づき、原子力災害時の医療機関および社会福祉施設におけるBCP策定手順案を作成した。
研究課題2:医療機関、社会福祉施設、市町行政へのアンケートの作成
BCP作成過程に求められる要件を中心にアンケートとしてまとめた。その内容は福島原発事故前の防災体制、事故対応、事故発生直後に求められた医療対応および亜急性期に発生した医療ニーズと課題等に関するものとした。
研究課題3:被ばく医療および放射線健康影響についての一元的な教材開発
既存の資料を調査し、医療機関や社会福祉施設等の職員による自己学習が可能である教育教材の作成と、原子力災害時に職員がとるべき行動を記したチェックリストについて検討した。
研究課題4:被ばく医療活動検討に基づいた研修プログラム策定
原子力災害時のBCPを立案している先行医療機関を調査し、BCP策定のための研修(立ち上げ研修)及びフォローアップ研修プログラムを考案し、そのプログラムの妥当性について検討した。
結果と考察
研究課題1:巨大地震に複合した原子力災害が発生し、最終的には、避難命令が発令された場合とし、BCPの概要説明、原子力災害に対応したBCP策定の意義、具体的な策定手順、チェックリストを用いた原子力災害時の医療機関・社会福祉施設におけるBCPの点検から構成した。
研究課題2:アンケート調査調査内容は一般災害対応に関する項目、原子力災害特有の項目、放射線影響を低減する環境の整備、避難先施設の確保、放射線防護対策、避難等)から構成した。
研究課題3:原子力災害時の医療機関や介護福祉施設等が屋内退避あるいは避難する場合の注意点を簡潔に解説したポケットマニュアルを作成した。このマニュアルを基にさらに自己学習の効率と効果の向上が期待されるe-learningの教材を作成した。また、原子力災害時に必要最低限の情報として常に携帯できるチェックリストを作成した。これらの資料はウェブサイトから閲覧可能となるようにした。
URL:原子力防災ポケットマニュアル.net
http://xn--cck3a4cuap8hk1dxc0168cylcd38at36dgl9f.net/
研究課題4:原子力発電所から6kmに位置するBCPを策定していない病院に対してはヒヤリング後に研修プログラムを作成し実施した。11kmに位置しBCPを既に策定している病院(いずれも初期被ばく医療機関)についてはBCPの周知、実効性の確認を行うことを目的とした机上演習プログラムを作成し実施した。
研究課題2:アンケート調査調査内容は一般災害対応に関する項目、原子力災害特有の項目、放射線影響を低減する環境の整備、避難先施設の確保、放射線防護対策、避難等)から構成した。
研究課題3:原子力災害時の医療機関や介護福祉施設等が屋内退避あるいは避難する場合の注意点を簡潔に解説したポケットマニュアルを作成した。このマニュアルを基にさらに自己学習の効率と効果の向上が期待されるe-learningの教材を作成した。また、原子力災害時に必要最低限の情報として常に携帯できるチェックリストを作成した。これらの資料はウェブサイトから閲覧可能となるようにした。
URL:原子力防災ポケットマニュアル.net
http://xn--cck3a4cuap8hk1dxc0168cylcd38at36dgl9f.net/
研究課題4:原子力発電所から6kmに位置するBCPを策定していない病院に対してはヒヤリング後に研修プログラムを作成し実施した。11kmに位置しBCPを既に策定している病院(いずれも初期被ばく医療機関)についてはBCPの周知、実効性の確認を行うことを目的とした机上演習プログラムを作成し実施した。
結論
本研究では災害要援護者の居住施設である医療機関や社会福祉施設の避難計画およびBCPの策定手引き書の作成、BCP対応に関する医療機関、社会福祉施設へのアンケート作成、原子力災害時の放射線防護についての教材開発、そして原子力災害時の施設対応の研修プログラムについて検討した。実効性の高いBCPの策定のためには今回の検討結果をさらに多施設で実施検証し、洗練させることが求められる。
公開日・更新日
公開日
2015-07-07
更新日
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