文献情報
文献番号
201405011A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床効果データベースの構築状況の実態把握及び効率的な整備・運用方法に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-028
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山本 隆一(東京大学 大学院医学系研究科医療経営政策学講座)
研究分担者(所属機関)
- 岩中 督(東京大学医学部附属病院小児外科)
- 齊藤 延人(東京大学医学部附属病院脳神経外科)
- 斎藤 能彦(奈良県立医科大学循環器内科)
- 松尾 清一(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)
- 松田 晋哉(産業医科大学公衆衛生学)
- 八木 聰明(人間環境大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療情報技術の進歩に伴い、レセプトデータ、DPCデータなどの様々な医療情報が電子的に収集・分析されるようになり、医療の質の向上、医療政策の立案等に活用されているが、診療行為に関する情報が中心で、患者の状態や治療効果等に関する情報が十分に含まれているわけでないため、分析範囲に限界がある。日本外科学会を中心に手術症例を登録する事業が開始されるなど、医療分野毎にデータベースを構築する取組みが進められている。日本外科学会の取組みにおいて、消化器外科領域では、登録データに基づいたリスクモデルを用いて、手術を受ける患者の死亡率や合併症の発生率等の予測値を計算し、患者へのインフォームドコンセントやカンファレンスの際に使用され、心臓血管外科の領域では、初心者の大規模施設での手術を行った場合の成績が、ベテランの小規模施設での手術を行った場合の成績よりも良好であったことから、初心者に対する手術トレーニングも大規模施設であれば安全に遂行可能であることが示され、実施施設の集約化が推進されるなどの成果があった。社会保障制度改革国民会議、日本再興戦略等において、こうした学会等の取組みを支援する必要性が示されたため、平成25年度補正予算で3団体(自治医科大学・循環器疾患レジストリ研究拠点、一般社団法人National Clinical Database、日本放射線腫瘍学会)に対して、データベースに関する財政的支援が行われた。今後こうした取り組みを推進する上では、データベース構築に構築・運営する場合の課題等を明らかとする必要があるため、本研究において、1)学会等における症例登録事業の実施状況及び今後の実施に向けた検討状況について調査するとともに、2)今後のデータベースの効率的な整備・運営方法、活用方法等を検討することは、保健医療分野の情報化の推進を行う上で不可欠である。これまで、こうした取組みは行われず非常に意義のあるものである。
研究方法
データベースの実態把握に関する研究については、学会等を中心に様々な症例登録事業が行われているが、国内でどのようなデータベースが存在するのか把握できていないため、日本専門医評価・認定機構における基本領域やSubspecialty領域等の主要な分野で、現在の疾病登録事業の実施状況について調査を行う。具体的には、既に症例登録事業を行っている場合には、①対象としている領域②登録を行っている項目(年齢、性別、症状、実施した医療行為、治療結果等)③追跡調査を行っている期間(一入院間の調査か、他院へ紹介した後も追跡調査を行うのかや、死亡について調査を行っているか等)④症例登録を行っている機関及び症例のカバー率⑤データ入力を行っている方法(手入力の範囲、SS-Mixの活用状況、レセプト、DPCデータの活用状況など)⑥症例登録事業を継続する上での課題等について、調査するとともに、現時点では症例登録事業を行っていない場合についても、取り組みを行っていない理由、取り組みを行う上での条件等について調査を行う。効率的なデータベースの構築・運用に関する研究については実態把握に関する調査結果等を踏まえ、シンポジウムを開催し、データベースを既に構築又は構築を予定の学会等の情報共有等を通じて、現状の課題を明確にすることで、より効率的なデータベースの整備、運営方法、活用方法等について検討を行う。
結果と考察
データの入力の業務負荷が存在することから、データベースを構築するためには、医療現場へのメリットを明確にした上で、症例登録事業を行うことについて理解を得る必要があるため、直ちに、多数の疾患領域のデータベースを構築することは困難である。本研究により、学会等を中心に行われている症例登録事業の現状を把握し、今後、国内において、データベースを構築する上での課題を抽出するとともに、学会等で取り組みを行う上での課題、行政等による支援が必要な事項等を整理することは、今後のデータベース構築を推進する上で必要不可欠である。本研究によって先駆的な取組みを行っている学会の知見を他の学会と共有することにより、また内科系分野の臨床効果データベースの構築にMCDRSの有効性を示せたことは、我が国にとって重要な疾患領域において、症例登録が推進されることにつながり、より、医療の質の向上、費用対効果分析の実施、革新的な医薬品・医療機器の開発につながるとともに、効率的にデータベースの構築・運用が可能となった。
結論
本研究によって先駆的な取組みを行う学会の知見を共有でき、内科系分野の臨床効果DBの構築にMCDRSの有効性を示せたことは、我が国にとって重要な疾患領域の症例登録が推進され、より医療の質の向上、費用対効果分析の実施、革新的な医薬品・医療機器の開発につながり、効率的にデータベースの構築・運用が可能となったと考える。
公開日・更新日
公開日
2015-05-21
更新日
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