文献情報
文献番号
201405009A
報告書区分
総括
研究課題名
プロポフォールの小児集中治療領域における使用の必要性及び、適切な使用のための研究
課題番号
H26-特別-指定-026
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
氏家 良人(岡山大学 救急医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 西村 匡司(徳島大学 救急集中治療医学)
- 森崎 浩(慶應義塾大学 麻酔学)
- 志馬 伸朗(国立病院機構京都医療センター 救命救急科)
- 長屋 聡一郎(岐阜大学 救急医学)
- 西田 修(藤田保健衛生大学 麻酔・侵襲制御学)
- 西脇 公俊(名古屋大学 麻酔・蘇生医学)
- 鈴木 康之(国立成育医療研究センター 手術・集中治療部)
- 平井 克樹(熊本赤十字病院 小児科学 小児集中治療)
- 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、プロポフォールの小児に対するICUにおける人工呼吸中の鎮静使用実態を詳細に調査し、その投与の必要性を代替薬との比較も含めて検討し、必要な薬剤であれば、使用する際の手順、安全な使用方法及びモニタリング上の注意点を検討し、使用の原則と要件を提案することである。
研究方法
研究方法は以下の4つに分けることができる
1.プロポフォール注入症候群(PRIS)の危険性と世界におけるプロポフォールの使用状況に関する調査研究
これまでの報告からPRISの原因、症状、発生頻度、死亡率、プロポフォール投与量、投与期間などを検討する。
2. DPCからみた集中治療領域におけるに小児に対するプロポフォールの使用状況の調査研究
2013年1月1日~12月31日のDPC/PDPC全国統計データから、小児に対するプロポフォールおよび他の鎮痛、鎮静剤の使用状況の全国的な傾向を把握する。
3.小児集中治療施設に対するプロポフォール使用状況とその使用理由に関するアンケート調査研究
小児集中治療施設(PICU)29施設に対するアンケート調査を行い、2013年1月1日~12月31日の期間の小児ICUにおける人工呼吸中の鎮静におけるプロポフォール使用状況を検討する。
4.集中治療領域における小児に対するプロポフォール使用の原則と要件、およびモニタリングと必要な検査に関する研究
小児の集中治療時の鎮静薬としてプロポフォール使用時のモニタリング方法、投与方法などの実務的な注意点を整理する。また、使用に当たっての事前準備や、患者・保護者への説明内容などの医療倫理的な観点からの問題整理も行う。
1.プロポフォール注入症候群(PRIS)の危険性と世界におけるプロポフォールの使用状況に関する調査研究
これまでの報告からPRISの原因、症状、発生頻度、死亡率、プロポフォール投与量、投与期間などを検討する。
2. DPCからみた集中治療領域におけるに小児に対するプロポフォールの使用状況の調査研究
2013年1月1日~12月31日のDPC/PDPC全国統計データから、小児に対するプロポフォールおよび他の鎮痛、鎮静剤の使用状況の全国的な傾向を把握する。
3.小児集中治療施設に対するプロポフォール使用状況とその使用理由に関するアンケート調査研究
小児集中治療施設(PICU)29施設に対するアンケート調査を行い、2013年1月1日~12月31日の期間の小児ICUにおける人工呼吸中の鎮静におけるプロポフォール使用状況を検討する。
4.集中治療領域における小児に対するプロポフォール使用の原則と要件、およびモニタリングと必要な検査に関する研究
小児の集中治療時の鎮静薬としてプロポフォール使用時のモニタリング方法、投与方法などの実務的な注意点を整理する。また、使用に当たっての事前準備や、患者・保護者への説明内容などの医療倫理的な観点からの問題整理も行う。
結果と考察
プロポフォール注入症候群の原因は不明であるが、(1)治療抵抗性の徐脈から心室性不整脈へ移行し、(2)高脂血症、肝腫大(脂肪肝)、代謝性アシドーシス、横紋筋融解などの症状を呈する。近年、小児だけでなく成人にも発生することが報告され、小児における発生頻度は不明であるが、唯一の米国の多施設前向き研究では成人におけるPRISの発生頻度は1.1%である。PRISにおける死亡率は報告者によって異なり、8歳以上で27%、18歳未満で46%との報告もある一方で、小児PRIS 18例中15例が死亡(87%)という報告もある。海外の小児に対する概ねの投与量は4mg/㎏/hr以下で48時間以内の継続使用を安全使用の目安としている。
DPC/PDPCデータでは、人工呼吸管理をされた患者のうち15歳未満で鎮静剤を使用された患者は3,401名で、ミダゾラム、デックスメデトミジン、プロポフォールの順であった。ICU1日目にプロポフォールを使用された症例は171名(鎮静薬投与された患者の5.0%)であった。ICU入室4日目以上に使用されているものはいなかった。
小児集中治療施設に対するアンケート調査結果では、29施設中24施設から回答があった(回収率83%)。PICUへの16歳未満の症例は7134例であった。うち、人工呼吸管理症例数は4283例であった。プロポフォールを持続鎮静で用いた症例は189例(人工呼吸管理症例の4.4%)であった。このうち、手術室での投与を含め48時間を超えて投与した症例は8例(0.19%)、さらにそのうち1週間を超えて(手術室での投与時間を含めて)投与した症例は1例(0.02%)であった。
プロポフォールを「人工呼吸中の鎮静」として使用する場合、リスクと利益を考慮し、明らかに患者の利益が勝っていることを、複数の医師で判断すべきである。
また、禁忌薬を使用することを十分認識して使用し、プロポフォール投与の危険性と有用性、プロポフォールの必要性を患者家族に十分説明し同意を求めておく必要がある。
その上で、投与法は、持続投与が中心となるが、投与量ならびに投与期間については、その上限値は4 mg/kg/hr以下、投与期間は最長48時間以内を原則とする。
投与時間や投与量に関わらず、本剤の重大な副作用であるPRISの診断基準を常に念頭に入れ、臨床所見の出現に細心の注意を払う必要がある。いずれかの所見が顕在化した際には、同剤投与を直ちに中止したうえで、迅速に適切な処置を取る必要がある
DPC/PDPCデータでは、人工呼吸管理をされた患者のうち15歳未満で鎮静剤を使用された患者は3,401名で、ミダゾラム、デックスメデトミジン、プロポフォールの順であった。ICU1日目にプロポフォールを使用された症例は171名(鎮静薬投与された患者の5.0%)であった。ICU入室4日目以上に使用されているものはいなかった。
小児集中治療施設に対するアンケート調査結果では、29施設中24施設から回答があった(回収率83%)。PICUへの16歳未満の症例は7134例であった。うち、人工呼吸管理症例数は4283例であった。プロポフォールを持続鎮静で用いた症例は189例(人工呼吸管理症例の4.4%)であった。このうち、手術室での投与を含め48時間を超えて投与した症例は8例(0.19%)、さらにそのうち1週間を超えて(手術室での投与時間を含めて)投与した症例は1例(0.02%)であった。
プロポフォールを「人工呼吸中の鎮静」として使用する場合、リスクと利益を考慮し、明らかに患者の利益が勝っていることを、複数の医師で判断すべきである。
また、禁忌薬を使用することを十分認識して使用し、プロポフォール投与の危険性と有用性、プロポフォールの必要性を患者家族に十分説明し同意を求めておく必要がある。
その上で、投与法は、持続投与が中心となるが、投与量ならびに投与期間については、その上限値は4 mg/kg/hr以下、投与期間は最長48時間以内を原則とする。
投与時間や投与量に関わらず、本剤の重大な副作用であるPRISの診断基準を常に念頭に入れ、臨床所見の出現に細心の注意を払う必要がある。いずれかの所見が顕在化した際には、同剤投与を直ちに中止したうえで、迅速に適切な処置を取る必要がある
結論
我が国ではICUにおける小児の人工呼吸中の鎮静にプロポフォールは4~5%使用されていた。そのほとんどが24時間以内で、3日以上使用されている頻度は0.19%程度であった。
プロポフォール注入症候群の原因、発生頻度は不明であり、プロポフォールを小児の人工呼吸に使用する場合は、禁忌であることを認識し、使用する理由を患者・家族へ説明し同意を得ることが原則である。また、使用時には十分なモニタリング、検査を行い、PRISを疑わせる臨床所見を見逃さないように注意深い観察が必要である。
プロポフォール注入症候群の原因、発生頻度は不明であり、プロポフォールを小児の人工呼吸に使用する場合は、禁忌であることを認識し、使用する理由を患者・家族へ説明し同意を得ることが原則である。また、使用時には十分なモニタリング、検査を行い、PRISを疑わせる臨床所見を見逃さないように注意深い観察が必要である。
公開日・更新日
公開日
2016-06-30
更新日
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