エコチル調査を活用した脳性麻痺発生率等に関する調査

文献情報

文献番号
201405001A
報告書区分
総括
研究課題名
エコチル調査を活用した脳性麻痺発生率等に関する調査
課題番号
H26-特別-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新田 裕史(独立行政法人国立環境研究所 環境健康研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 圭司(独立行政法人国立成育医療研究センター 発達評価センター)
  • 上出 杏里(後藤 杏里)(独立行政法人国立成育医療研究センター リハビリテーション科)
  • 目澤 秀俊(独立行政法人国立成育医療研究センター アレルギー科)
  • 梅原 永能(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター)
  • 道川 武紘(独立行政法人国立環境研究所 環境健康研究センター)
  • 竹内 文乃(慶應義塾大学 医学部)
  • 中山 祥嗣(独立行政法人国立環境研究所 環境健康研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,680,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 竹内文乃 独立行政法人国立環境研究所(平成26年4月1日~平成26年9月30日)→慶應義塾大学医学部(平成26年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
小児科領域で診断される脳性麻痺児について、妊娠期や分娩状況のデータを同時に収集しているエコチル調査の仕組みを活用して、脳性麻痺児数や分娩時の状況等を調査し、脳性麻痺の発生状況、脳性麻痺の発生原因の分析し、産科医療補償制度の補償対象となる重度脳性麻痺児数を推計する。
研究方法
全国15地域において実施しているエコチル調査では、協力に同意した妊婦(約10万人)に対し、妊娠時、分娩時、生後1ヶ月までは基本的に分娩施設等で質問票に記入を依頼し、出生後は6ヶ月おきに質問票調査実施して、自記式質問票を送付の上、郵送で回答を得ることとなっている。質問票の病歴記載欄で脳性麻痺との回答が得られた児について、エコチル調査で収集されている各種データ、すなわち妊娠初期、出産時、出産後1か月健診時の診察記録票(カルテ転記情報)、並びに妊娠初期、中後期、出産後1か月健診時、出生後6か月毎の質問票(保護者による自己記入)のデータについて集計・解析を行う。
さらに、分娩時の診療録を有する分娩機関、及び現在の脳性麻痺の状況に関する診療録を有する医療機関に調査を行い、分娩時のデータ及び脳性麻痺による肢体不自由の程度等の情報を収集する。
 脳性麻痺児の重症度に関する評価システムの構築、脳性麻痺児の機能・能力障害・社会参加状況に関わる評価尺度の開発、及び脳性麻痺児の妊娠分娩情報の収集・解析に関する検討を行った。これらの検討に基づき、エコチル調査質問票において「脳性麻痺」との回答が得られたケースについて、各分娩機関及び通院医療機関から診療情報等を得て産科医療補償制度の補償対象となる基準と照らし、各事例について産科医療補償制度の対象か否かを検討した。その結果から各基準への該当率等を算出し、全国の補償対象者数を推計した。さらに、これらの推計における誤差、バイアス等の検討を行った。
結果と考察
平成26年9月末時点の6か月、1歳、1歳6か月、2歳、2.5歳、3歳質問票の回収数はそれぞれ、73,940件、53,982件、36,469件、22,856件、11,166件、 1,669件であった。質問票の病歴欄に脳性麻痺にチェックがあったもの、並びに質問票の「その他」欄に記載があったものを合わせて24件のケースが抽出された。この24人について、母数を出生数として場合、母数を1歳質問票回収数した場合等について発生数の推計を試みた。推計においてはバイヤスや統計的推計誤差など様々な不確実性についての検討が必要であると考えられた。また、抽出された脳性麻痺のケースは24例と少数であり、現時点でその背景属性を解析して、関連因子や予測因子を探索することは困難であった。
 国立成育医療研究センター発達評価センターにおいて用いられている各種乳幼児発達評価スケールをWebページから入力することによって簡便に評価可能な障害評価レポートシステムを開発した。また、エコチル調査のデータから、脳性麻痺児の調査を行うにあたり、発生状況や精神・運動発達等の身体評価だけでなく社会参加状況を評価することは、脳性麻痺児に関わる社会的支援や制度を見直す上で重要と考えられる。現在開発中の小児の活動・社会参加評価尺度を用いて、エコチル調査で使用されているAges and Stages Questionnaire, Third Edition (ASQ-3) との関係を検証した。その結果、ASQ-3のみでは、脳性麻痺児の抱える社会的問題を抽出するには不十分であると考えられた。
脳性麻痺児の重症度の評価について、今回は、既に信頼性と妥当性の検証が済んでいる3つの能力評価スケールを用いたが、この他に言語能力や日常生活活動度の評価が必要である。今後、ABMS-C、ABFS-C、ABMS-CTに加え、言語能力や日常生活活動能力を追加した総合的システムの構築が必要であると考えられた。
結論
エコチル調査データを用いて全国における脳性麻痺発生率を推計できる可能性があることが、エコチル調査が進行中の調査であることから現時点での推計における不確実性は大きいと考えられた。また、産科医療補償制度の対象となる重度脳性麻痺児を推計するためには、エコチル調査で標準的に収集されているデータのもでは不十分な点があり、エコチル調査質問票データから抽出されるケースについて、関係医療機関への追加的な調査が必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201405001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
基礎となるデータがすでに計画された内容にしたがって進行中の調査に基づくもので、データは順次追加されているが、現時点では研究成果発表に至っていない。
臨床的観点からの成果
脳性麻痺児の障害の重症度及び活動度、社会参加状況を把握するために、①粗大運動、②応用動作、③摂食嚥下、④言語コミュニケーション、⑤活動度、の5項目について簡便に評価できるスケールを開発した。また、各スケールの日本語版と英語版をwebページ上にアップし、いつでもどこでも簡便に評価できる環境を整備した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
産科医療補償制度に対象となり得る脳性麻痺の発生状況について継続して調査を行っており、今後、産科医療補償制度の見直しに寄与することが期待される。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
2019-05-23

収支報告書

文献番号
201405001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,084,000円
(2)補助金確定額
6,084,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,190,525円
人件費・謝金 0円
旅費 99,410円
その他 2,390,065円
間接経費 1,404,000円
合計 6,084,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-06-29
更新日
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