機能遺伝子多型に係る人種差に関する研究

文献情報

文献番号
201403022A
報告書区分
総括
研究課題名
機能遺伝子多型に係る人種差に関する研究
課題番号
H25-地球規模-指定-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学医学部臨床薬理学)
  • 竹内 正弘(北里大学薬学部)
  • 成川 衛(北里大学薬学部)
  • 宇山 佳明(医薬品医療機器総合機構)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地球規模での医薬品開発の推進において、今後は日本と東南アジア諸国との共同治験が活発化するものと期待される。そのため欧米諸国に加え、東南アジア地域との人種差・民族差は大きな検討要因となり、特にその内因性因子である遺伝子多型情報の活用が、医薬品承認審査に求められる。そこで、本研究では、東南アジア諸民族を中心に、欧米人等を含め、薬物応答性関連分子の機能変化をもたらす遺伝子多型頻度を調査し、日本人との人種差・民族差を明らかとし、これらの情報公開を通じて、アジア地域を中心とする国際共同治験の推進、医薬品開発の効率化へ貢献することを目的とする。
研究方法
1)機能遺伝子多型頻度の民族差調査
これまでに、CYP2C19*3, UGT1A1*6・*28, SLCO1B1 521T>C (Val174Ala)等のシトクロムP450酵素、グルクロン酸転移酵素、トランスポーター等の28遺伝子52多型・ハプロタイプについては調査済みであることから、本年度は未調査分の遺伝子から選定して調査を行った。主としてPubMedによる文献調査ならびにHapMapプロジェクト公開データより、下記の機能変化をもたらす遺伝子多型に関して、日本人と東南アジア諸民族等、ならびに対照として欧州地域間等のアレル頻度の差を調査した。
1) ALDH2*2 [1510G>A (Glu504Lys)]
2) SULT1A1*2 [638G>A (Arg213His) ]
3) SLCO1B3 334G>T(Ala112Ser)及び699A>G(Ile233Met)
4) SLCO2B1*3 [1457C>T(Ser486Phe) 及び935G>A(Arg312Gln)]
5) HLA-B*51:01
使用するデータは、健常人を主体とした。日本人のマイナーアレル頻度が0.1未満の場合は0.05以上の差、0.1以上の場合は0.1以上の差を差の判定基準とした。欧州の各地域間の差については、東西南北の4地域における最大頻度と最小頻度の差とした。

2)東南アジア地域と日本間で薬剤反応性に差をもたらしうる要因の調査
9品目の調査候補について、製薬企業各社に依頼した結果、8品目についての調査協力が得られた。回答のあった一次調査票の結果を集計し、二次調査の方針を討議する資料とした。なお、データ管理規定に基づき、製薬企業から提供された原資料(一次調査の回答)ならびに原資料から作成した中間データの取扱いに際しては、予め各研究班員および協力研究者に利用届の提出を依頼し、資料利用者の範囲、期間、場所等を特定した上で、討議を行った。さらに一次調査結果を踏まえ、背景要因を考慮した有効性指標の日本と他の国(地域)との比較方法を企画し、研究班内での討議を基に、企業に依頼する二次調査票様式(Ⅲ, Ⅳ)を作成した。
結果と考察
1)機能遺伝子多型頻度の民族差調査
調査の結果、活性消失を招くALDH2*2の頻度において、日本人と東南アジア5民族との間で基準値以上の差が認められた。また、一部の抗てんかん薬による重症薬疹発症と関連するHLA-B*51:01に関して、日本人と東南アジア1民族との間において基準値以上の差が認められた。以上のことから、今年度の調査対象遺伝子多型では、日本と東南アジア諸国を含む国際共同開発の推進の上、ALDH2*2およびHLA-B*51:01頻度の民族差を考慮した治験計画が重要であると示唆された。

2)東南アジア地域と日本間で薬剤反応性に差をもたらしうる要因の調査
対象とする8種(3領域)の医薬品の臨床試験結果に関して、日本と東南アジア及び周辺国との間で、薬力学的効果に影響を及ぼす可能性がある背景因子の相違の有無を検討し、日本人と異なる背景因子を特定した。これらの因子の影響を考慮して、日本と他の国(地域)との薬力学的効果の違いを評価するための二次調査を企画し、協力企業へ調査を依頼した。
結論
1)機能遺伝子多型頻度の民族差調査
日本と東南アジア諸国を含む国際共同治験を進める上では、ALDH2*2およびHLA-B*51:01頻度の民族差を考慮すべきであることが示唆された。
2) 東南アジア地域と日本間で薬剤反応性に差をもたらしうる要因の調査
日本と東南アジア及び周辺国との間で、背景因子に関し差異のあるものを特定した。これらの因子の影響を考慮して、日本と他の国(地域)との薬力学的効果の違いを評価するための二次調査を開始した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201403022Z