文献情報
文献番号
201403017A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における金属摩耗粉による人工股関節置換術合併症の調査研究
課題番号
H25-地球規模-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 寛和(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 秋山治彦(岐阜大学 医学部 整形外科)
- 菅野伸彦(大阪大学 医学部・運動器医工治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Metal-on-Metal (MoM)人工股関節置換術total hip arthroplasty (以下THA)は、金属摩耗粉metal debrisに対する生体反応によると考えられる疼痛や偽腫瘍と呼ばれる腫瘤性病変を誘発することがあり、比較的術後短期間で再手術を要したり、広範な軟部組織壊死により再置換が困難となる例も報告されている。この MoM人工股関節術後Adverse reactions to metal debris (ARMD)の診断と治療経過の日本での現状を明らかにし、今後の指針を早急に策定することが目的である。
研究方法
本邦では、23226関節のMoM人工股関節インプラントが使用されており、製造販売7社のMoM機種使用実績5位までの施設と、50例以上使用した施設を合わせた102施設に対して 調査を行ってきた。MoM人工股関節術後Adverse reactions to metal debris (ARMD)の診断と治療経過の日本での現状を明らかにするため、アンケートによる二次調査を行った。合計82施設中63施設の回答結果を解析した。
次に、平成26年8月31日までに日本人工関節登録制度に登録された人工股関節再置換術の中から、メタローシス、ARMD, ALVALなど金属摩耗粉が原因で再置換術を施行された症例を抽出し、各施設に詳細調査のためのアンケート調査を実施した。
また海外の動向を把握するために、the International Society of Arthroplasty Register, Europian federation of Orthopaedic Surgery & Traumatology 等の学会において情報を収集した。特にレジストリーの登録コンプライアンスの高いAustralian Orthopaedic Association National Joint Replacement Registry、 National Joint Registry(英国)などにおける、最新の動向を調査した。
次に、平成26年8月31日までに日本人工関節登録制度に登録された人工股関節再置換術の中から、メタローシス、ARMD, ALVALなど金属摩耗粉が原因で再置換術を施行された症例を抽出し、各施設に詳細調査のためのアンケート調査を実施した。
また海外の動向を把握するために、the International Society of Arthroplasty Register, Europian federation of Orthopaedic Surgery & Traumatology 等の学会において情報を収集した。特にレジストリーの登録コンプライアンスの高いAustralian Orthopaedic Association National Joint Replacement Registry、 National Joint Registry(英国)などにおける、最新の動向を調査した。
結果と考察
ARMDは355例で、調査実施施設以外での手術例が21例であった。MoM以外は9例であった。回答のあった63施設でのMoMのARMDは、平成24年調査時の100例から255例増加し、355例となった。ARMD診断時期は平成16年以降、増加し続け、平成24年が最多で、平成25年は減少傾向であった。MoM-THA後1年未満のARMD症例もあるが、術後1から5年で診断される例が多く、5年以内に診断された症例が295例(83%)で、6年以降では症例数が少なくなっていた。ARMDに対して141例(40%)に手術が施行された。女性のARMDは男性よりも手術を要した割合が有意に高かった。ARMD診断にはMRIによる偽腫瘍検出が最も活用されていた。手術を要したARMDは、偽腫瘍の大きさが大きい、内容物が液状以外の所見、形状が塊状や不整形である特徴が明らかとなった。抜去インプラントの所見ではMoM摺動部の摩耗痕よりもhead-neck taperの腐食摩耗の割合がより多く認められた。治療としては再置換で摺動部をMoM以外に交換することで、92%に症状の改善、79%に股関節機能の改善が得られていた。
結論
日本人工関節学会のMoM人工股関節合併症調査委員会におけるデータの詳細解析および関連論文、諸外国における金属対金属人工股関節置換術の不具合に対する対応を最終調査しており、次年度本研究の最終結果を 公開すること、我が国におけるMoM人工股関節置換術における診療・検査指針および不都合症例に対する治療指針を策定し公開する必要がある。また、本研究の結果を厚生労働省およびPMDAと共有し、人工股関節インプラントに対する今後の施策に反映して頂く予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-07-03
更新日
-