文献情報
文献番号
201402006A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における今後の死亡統計のあり方の提言
課題番号
H26-統計-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 純(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は死亡診断書に記載されている死因、関連傷病等情報を活用し、我が国の死因に関する現状把握を行い、適切な修正案を模索することにより、適切な統計資料等に基づき疾病動向等を正確に把握し効果的な対策を実施していくことを可能とする今後の死亡統計のあり方を提言することを目的とする。
研究方法
我が国における個々のICD分類を構成する実際の具体的傷病構成を明らかにするため、関連医学専門学会等からの情報収集と文献調査を行い、今年度は糖尿病を題材として方向性の検討を行った。また、詳細な分類を可能とする傷病リストの表現方法、及び、作成方法の構築手法立案をNCK (Normalized Clinical Knowledge)、SNOMED-CT, ICD11, iCOSなどといった既存のオントロジー概念も参考にして、糖尿病を事例とした検討を行った。
加えて、実際に複合的な死因表現を行ってみることで、直接死因、原死因、基礎疾患との関係性などついて、現行の調査票の範囲でマニュアル化するための要件の検討、及び、ICD11におけるオントロジー化に対応するための方針検討を開始した。具体的には、今年度は、主に、死因傷病名の詳細化の深度についての検討、詳細化による関連性の表現手法の検討、複合分析の場合の複合の程度、複数要素どうしの関係性の定義手法と記載方法の並列化が行われた場合の表現手法などについて検討を行った。
さらに、実態調査の一環として、死亡診断書における、糖尿病の記載状況の評価をするために、平成25年度の死亡診断書を対象に調査を行った。
加えて、実際に複合的な死因表現を行ってみることで、直接死因、原死因、基礎疾患との関係性などついて、現行の調査票の範囲でマニュアル化するための要件の検討、及び、ICD11におけるオントロジー化に対応するための方針検討を開始した。具体的には、今年度は、主に、死因傷病名の詳細化の深度についての検討、詳細化による関連性の表現手法の検討、複合分析の場合の複合の程度、複数要素どうしの関係性の定義手法と記載方法の並列化が行われた場合の表現手法などについて検討を行った。
さらに、実態調査の一環として、死亡診断書における、糖尿病の記載状況の評価をするために、平成25年度の死亡診断書を対象に調査を行った。
結果と考察
本年度は、糖尿病をモデルケースとして、死因における糖尿病の役割、位置づけなどについて情報収集・調査をおこなった。文献調査によると、一般に、糖尿病を長期間罹患している患者さんにおいては、糖尿病を背景とする腎症及び血管疾患が多い一方で、糖尿病を死因として記載している割合は多くないことがわかった。一方で、腎症、及び血管疾患の側から見ると、糖尿病がその要因とされる例が多いことがわかった。
平成25年度の死亡診断書から得られた死亡総数は、658684/609752(男/女)名であった。このうち糖尿病(E10-14)のいずれかの記載があったものは7294/6518名であり、全体の1.11/1.08%であった。7294/6518名の内、腎合併症を伴うと記載があった人数が3755/2886名、51.5/44.3%と突出して高かった。背景にある関係性を包含した形で、死因を表現しようとすると、糖尿病が主要因で起きた腎症による死亡、糖尿病が主要因で起きた血管疾患による死亡については、現在のICDコードでは表現できていないことがわかった。
これに対して、NCKにおけるオントロジーテンプレートを利用して、糖尿病と、腎症、脳血管障害の関係性を表現する手法について検討を行い、糖尿病を原疾患とした腎症あるいは血管障害による死亡の例を表現する場合、オントロジー表現を用いた二つの方法が考えられた。
(1)糖尿病を病名分類の中に含めてしまう方法
(2)糖尿病の中の知識特性項目間でリンクを張る方法
(1)の場合、「糖尿病性~病」といった表現とする形となるのが典型的な例である。(2)の場合、NCKのスケルトン項目間では、病名―病因―(原因、発症機序)―病名、病名―合併症―病名 といった形でのリンクを張るのが典型的な例である。
ICD11で、ICD自体がテンプレートを用いたオントロジー化を想定していることを考えると、具体的な解決策としては、一定の粒度まで、(1)の詳細化を行った上で、(2)の知識リンクを張るのが良い手法と思われた。この点について、糖尿病におけるICD10と標準病名マスターの比較を行い(1)と(2)の方法を組み合わせた方法の妥当性などを確認した。
平成25年度の死亡診断書から得られた死亡総数は、658684/609752(男/女)名であった。このうち糖尿病(E10-14)のいずれかの記載があったものは7294/6518名であり、全体の1.11/1.08%であった。7294/6518名の内、腎合併症を伴うと記載があった人数が3755/2886名、51.5/44.3%と突出して高かった。背景にある関係性を包含した形で、死因を表現しようとすると、糖尿病が主要因で起きた腎症による死亡、糖尿病が主要因で起きた血管疾患による死亡については、現在のICDコードでは表現できていないことがわかった。
これに対して、NCKにおけるオントロジーテンプレートを利用して、糖尿病と、腎症、脳血管障害の関係性を表現する手法について検討を行い、糖尿病を原疾患とした腎症あるいは血管障害による死亡の例を表現する場合、オントロジー表現を用いた二つの方法が考えられた。
(1)糖尿病を病名分類の中に含めてしまう方法
(2)糖尿病の中の知識特性項目間でリンクを張る方法
(1)の場合、「糖尿病性~病」といった表現とする形となるのが典型的な例である。(2)の場合、NCKのスケルトン項目間では、病名―病因―(原因、発症機序)―病名、病名―合併症―病名 といった形でのリンクを張るのが典型的な例である。
ICD11で、ICD自体がテンプレートを用いたオントロジー化を想定していることを考えると、具体的な解決策としては、一定の粒度まで、(1)の詳細化を行った上で、(2)の知識リンクを張るのが良い手法と思われた。この点について、糖尿病におけるICD10と標準病名マスターの比較を行い(1)と(2)の方法を組み合わせた方法の妥当性などを確認した。
結論
死因の背景情報を反映するため、死亡診断書を活用した統計がより実態に即したものになるよう死亡診断書作成の標準化に向けた記載方法の周知と教育、マニュアルの適正化、我国の傷病リストの作成が必要であると改めて認識した。
糖尿病を背景とする死因を正しく表現できるように、死因の記載方法その粒度などを様々な角度から検討した結果、現在よりもやや詳細なところまで病名の粒度を下げることと、病気ごとの知識テンプレートの特性項目間でリンクを張ることを組み合わせた方式が、現時点においては、最も妥当であると考えた。また、オントロジーの導入により、ターミノロジー間のリンク表現が可能であり、こういった関係性を表現できることを確認できた。
統計データに表れにくい背景情報も、統計データとして取得しうるような死亡診断書を検討することは、我が国の医療福祉をより良いものに深化させるうえで、大きな意義があることであると確認された。
糖尿病を背景とする死因を正しく表現できるように、死因の記載方法その粒度などを様々な角度から検討した結果、現在よりもやや詳細なところまで病名の粒度を下げることと、病気ごとの知識テンプレートの特性項目間でリンクを張ることを組み合わせた方式が、現時点においては、最も妥当であると考えた。また、オントロジーの導入により、ターミノロジー間のリンク表現が可能であり、こういった関係性を表現できることを確認できた。
統計データに表れにくい背景情報も、統計データとして取得しうるような死亡診断書を検討することは、我が国の医療福祉をより良いものに深化させるうえで、大きな意義があることであると確認された。
公開日・更新日
公開日
2015-05-27
更新日
-