縦断的レセプトデータを用いた医療・介護サービス利用状況の地域間比較

文献情報

文献番号
201401025A
報告書区分
総括
研究課題名
縦断的レセプトデータを用いた医療・介護サービス利用状況の地域間比較
課題番号
H25-政策-若手-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成瀬 昂(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野))
研究分担者(所属機関)
  • 辻 哲夫(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 飯島 勝矢(東京大学 高齢社会総合研究機構)
  • 永田 智子(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野) )
  • 蔭山 正子(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野) )
  • 岩本 康志(東京大学 経済学研究科)
  • 両角 良子(富山大学 経済学部)
  • 湯田 道生(中京大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では、在宅医療の体制構築が急務となっている。住民は、健康保険による医療サービス、介護保険による介護サービス等を組み合わせて生活しており、各人にかかわるサービス間で適切な協働・連携体制が組まれるようにすることが、より質の高い在宅医療の提供体制の構築につながると解釈される。
ここで、サービスの利用が地域特性によって影響される可能性に注目する。地域特性としては、医療・介護・福祉サービスの所在・分布・人口や高齢者人口あたりの充足状況に着目し、これらの指標が異なる地域間(都市部と山間部等)で、住民のサービス利用状況を比較することで、より必要性の高いサービス資源を提示することができると考える。
本研究は、ある県全域で、住民の医療・介護サービスの利用状況を縦断的に調査し、住民の対象像ごとにサービス利用状況を地域特性によって比較すること、を目的とする。
本研究の結果は、地域の実情を把握するための具体的な手段を示すこと、地域の実情に応じた在宅医療の提供体制の構築方法を示すことにつながる。これは、都道府県が、各市町の状況に応じて医療計画を立案し、将来的に追加・強化すべき医療資源を決定する際に有用な資料となる。また、各市町村が自身の地域の特性を踏まえての介護保険事業計画、高齢者保健福祉計画、障害福祉計画等を立案する際にも有用である。
研究方法
A県全域の住民を対象に、平成23年4月~平成26年3月の各月の下記データ(1~4)を
取得する。
1)国民健康保険の医療レセプトデータ(入院・入院外・調剤・歯科・訪問看護)
2)国民健康保険の特定健診データ(健診結果・保健指導記録)
3)後期高齢者医療制度の医療レセプトデータ(入院・入院外・調剤・歯科・訪問看護)
4)国民保険加入者の介護保険給付データ(介護予防・介護・地域密着型)
取得したデータは、国民健康保険の個人番号を用いて、個人単位で接地域特性に関するヒアリングを行い、地域特性の評価指標となる変数を特定する。評価指標は主に人口特性、および医療・介護資源特性を用いる。指標をもとにクラスター分類を行い、地域特性に従って地域を分類する。その後、特定の住民の対象者分類ごとに、地域特性(都市部/その他、等)によるある月の住民のサービス利用状況の比較
、および地域特性(都市部/その他、等)によるある期間の住民のサービス利用状況の推移の比較、を進める。
これにより、利用者のcomparative needsの充足/不足が地域特性によって異なるかどうかを確認する。また、一定期間内のサービス利用状況の推移を地域特性によって比較することにより、季節変動がサービス利用状況に与える影響を明らかにする。さらに、地域特性から市町の課題を可視化するフォーマットを開発し、その利便性と医療介護計画の基礎資料としての活用可能性を調整し、市町村職員が既存データを活用するための方法論を提案する。フォーマットは、複数の都道府県でヒアリングおよび地域情報収集を試行し、A県以外の地域での活用可能性を検討する。
結果と考察
平成25・26年度、A県、およびA県内市町村・国民健康保険組合連合会との契約が締結され、下記全てのレセプトデータを取得・解析することが可能となった。これまで、行政・医療の専門家28名にヒアリングを行い、医療・介護の利用に影響が強い地域の特性として、医療機関・日常生活資源の分布、および市町専門職間の連携状況の良好さの程度があることが明らかになった。そこで、レセプトデータを使い、在宅療養中の後期高齢者では、訪問看護事業所の資源配置の適切性(アクセシビリティ)の高さ、および居住市町の医師-居宅介護支援専門員間の連携の良好さが訪問看護利用に正に関連することを検証した。訪問看護に限っては、各市町の資源配置と医師-居宅介護支援専門員間の連携の程度を見ることで、訪問看護利用を阻害する市町の課題を検討することが可能になると考えられる。A県の在宅医療推進業務に携わる職員に対し、資源配置・連携状況を軸にした全17市町の訪問看護の現状と課題を可視化したフォーマットを提示した結果、概ね現場感覚に沿っている、課題が可視化され議論しやすい、という意見を得た。
結論
レセプトデータ解析を根拠に、各市町の訪問看護に関する課題を可視化するためのフォーマットを開発することができた。今後は、このフォーマットの利便性と医療介護計画の基礎資料としての活用可能性を調整し、医療と介護の連携推進事業において、市町村が計画を作成する際、現場職員が既存データを活用するための方法論を確立することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201401025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,864,000円
(2)補助金確定額
2,864,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 501,098円
人件費・謝金 764,105円
旅費 184,930円
その他 1,039,867円
間接経費 374,000円
合計 2,864,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
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