性的虐待事案に係る児童とその保護者への支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201401016A
報告書区分
総括
研究課題名
性的虐待事案に係る児童とその保護者への支援の在り方に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 正子(大阪教育大学 教育学部)
研究分担者(所属機関)
  • 八木 修司(関西福祉大学)
  • 山本 恒雄(愛育研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、平成20~22年度厚生労働科学研究「子どもへの性的虐待の予防・対応・ケアに関する研究(研究代表柳澤正義)」の成果と、その実践を踏まえてさらに明らかになった課題に焦点をあて、より実践的な対応と継続した治療的支援の在り方を開発するものである。
 研究成果としては、児童相談所、情緒障害児短期治療施設等における「性的虐待を受けた子どもとその保護者への支援」に関するガイドラインの完成、或は提案・紹介型のガイドブックの作成提供を行うことを目的としている。

研究方法
 平成26年度は現状と課題を把握するために、各分担班それぞれに質問紙調査を実施した。また分担研究2では先行的に聞き取り調査を実施した。
<質問紙調査>
(1)方法と対象
 分担研究1では、全国の児童相談所207か所を対象にWEBによる質問紙調査を実施し171か所からの回答(回収率82,6%)を得た。分担研究2では、全国児童相談所207か所を対象に郵送による質問紙調査を実施し、173か所からの回答(回収率83,6%)を得た。分担研究3では、全国の情緒障害児短期治療施設38施設を対象に郵送による質問紙調査を行い、34か所からの回答(回収率89,4%)をえた。
(2)調査期間は、2014年10月1日から11月30日である。
(3)3班ともに単純集計による分析を行った。
結果と考察
(1)分担研究1:平成23年度に比べて、初期対応についての整備は徐々に進んできている様子がうかがわれた。また一時保護については、一時保護所の体制整備と共に職権保護のあり方そのものについて、まだ議論が尽くされる必要があるとみられた。性的虐待・家庭内性暴力被害にあった子どもに保護所で認められる問題行動経験率では、平成23年度の全児相の調査と同様、多彩な問題・症状を経験する事例が多いことがうかがわれ、これらに対して特別な支援プログラムを実施しているのは少なく、また一時保護所での性暴力被害児への対応・支援についてマニュアルを整備しているのは一部整備~検討・作成中を含めても25か所程度にとどまっていた。こうした状況に対して、一時保護過程における子どもへの対応・支援につき、児童相談所として統一的な基本的対応手順、手法をより具体的に整理する必要があることが明らかとなった。
(2)分担研究2:各児童相談所おける性的虐待相談状況、及び性的虐待以外の家庭内性暴力相談状況には大きなばらつきがあった。また家庭内性暴力件数は性的虐待件数の3分の1強を占め、加害者がきょうだいの件数が一定あるなど、児童相談所においては、性的虐待のみならず家庭内性暴力の問題への対応も大きな課題となっている現状が明らかになった。「非加害保護者支援ガイドライン」については、約9割が「必要/ある程度必要」と回答したが、独自のガイドラインを「作成/ある程度作成」している所は約15%であった。また調査からは初期対応時点における非加害保護者・家族支援の実態や困難な内容、被害児童が施設入所した場合の支援と機関連携の課題、在宅支援の現状と課題も一定把握された。さらに性的虐待の背景にDVがある事案は一定数あるとの印象を持っているが対応には困難があるとの回答が多く(85%)、加えて機関連携には課題がある状況も浮かび上がっった。
(3)分担研究3:全入所児童1,030名のうち、被虐待児童数は780名(67.6%)で、入所理由の第1が性的虐待は43名であった。また家庭内性暴力被害児童は28名であり、合計すると71名の性的虐待/家庭内性暴力被害児童(全入所児童の6.6%)が入所していた。子どもの安全取り組みとして、対人関係の調整、今日におけるSNSなどへの対応や、施設内の性教育の現状と課題が明らかになった。さらに、性的虐待を受けた子どもの治療については、基本的なアセスメントと心理治療のスキルを身につけ、一定水準以上の対応力を有していることがうかがえたが、一方で被性的虐待児童への具体的な対応と考えられる項目の実施率は高くなかった。しかし、2/3の施設において被性的虐待児童が入所支援によって改善していると捉えていた。現在の情短施設では必ずしも被性的虐待児童に特化した支援が行えているのではないが、被虐待体験一般に重要と思われる「安心できる生活」「治療的な関与」「境界線が明確な生活」の支援を徹底することで、被性的虐待児童が改善しているのではないかと考えられた。
結論
研究初年度の平成26年度は、各現場への実態調査を実施して課題の整理と分析を行い、その成果を踏まえてガイドラインの全体構成と項目の選定を行った。平成27年度は、聞き取り調査等を実施して詳細な現状の把握やガイドラインへのニーズ把握、及び協力施設との意見交流を行い、ガイドラインを作成する。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201401016Z