養育支援を必要とする家庭に対する保健医療福祉の連携に関する実践的研究

文献情報

文献番号
201401008A
報告書区分
総括
研究課題名
養育支援を必要とする家庭に対する保健医療福祉の連携に関する実践的研究
課題番号
H25-政策-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中村 安秀(国立大学法人大阪大学 大学院人間科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 渕向 透(県立大船渡病院)
  • 佐藤 拓代(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 浅川 恭行(浅川産婦人科)
  • 北野 尚美(和歌山県立医科大学医学部公衆衛生学)
  • 山本 真実(東洋英和女学院大学人間科学部)
  • 中板 育美(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、児童虐待の発生予防の観点から、妊娠期・出産後早期から養育支援を必要とする家庭に対する支援に関して、特に妊娠期・出産後早期からの保健・医療・福祉の連携・協働の実態を明らかにすることにより、継続ケアの視点からライフステージ(妊娠・出産・育児)に沿った保健・医療・福祉の連携・協働の実践的な方法論を提示することにある。ワークショップという手法を駆使し、情報収集とともに新たな気づきを共有することが期待される。
研究方法
分担研究班の個々の研究の積み重ねで全体が構成されるという研究ではなく、本研究においては、分担研究者が相互に連携協働し、融合する形で全体テーマの解明に取り組むことに特徴がある。
「子ども虐待防止ワークショップ 」(2014年2月)は東京で開催され、岩手県(大船渡保健所、一ノ関児相)、東京都三鷹市、神奈川県横須賀市、静岡県沼津市、大阪市枚方市、大阪府泉大津市、鳥取県倉吉市、福岡県糸島市、熊本県熊本市からワークショップに参加した。ワークショップにおいて、自治体間の共通点が明らかになると同時に、解決すべき課題に対するヒントを他の自治体から得ることができ有意義な気づきとなった。共通した意見としてあげられたのは、特定妊婦や養育支援において、データの電子化による情報共有と評価可能なシステムが必要であること、また、妊娠する前の思春期において健康教育を強化していく必要性であった。
「子ども虐待防止 セミナー&ワークショップ in 気仙」(2015年1月)において、岩手県保健福祉部、県立病院、児童相談所、保健所、市町村保健センター、NPOなど、子ども虐待を取り巻く関係者80名が参加した。本研究班分担研究者の講演の後、気仙地域の関係者の参加のもと、被災地における保健医療福祉の連携による周産期からの虐待予防に関する取組みのあり方について検討を行った。
結果と考察
被災地である陸前高田で開催されたワークショップにおいては、活発な議論が行われ、次のような知見が得られた。
1)医療機関(産科・小児科)、保健、福祉の連携が必須(顔の見える関係づくり)
2)既存の母子保健サービスの最大限の活性化(母子健康手帳の配布時の面接、保健師の地区担当など)
3)要保護児童対策地域協議会(要対協)の認知度の向上(とくに、病産院へのより一層の浸透が必要)
4)全数把握の重要性(地域に出向くアウトリーチ・アプローチ)
5)NPO活動との協働の必要性(妊娠SOSの必要性:公的サービスに乗りにくい親)
6)スマートフォンなどを使った情報提供の必要性
また、このワークショップに関して、東海新報が「虐待防止へ情報共有 セミナー・ワークショップ開催」(2015年1月24日)として報道し、地元の市民に対しても大きなインパクトを与えた。
結論
「にんしんSOS」をはじめとして、医療機関、母子保健、児童福祉の相互の連携に積極的に取り組んでいる自治体や事業は少なくないが、全国レベルでは、3つの分野の有機的な連携に成功している事例は多くはない。先進国や途上国を含め、新しい保健福祉活動を導入する際に頻繁に行われている手法がワークショップである。今回のワークショップの大きな利点は、すでに連携・協働に関する実践を行ってきた自治体が参加するということである。実践の中から編み出されたGood PracticeやLessons Learnedをもとに、継続ケアの視点からライフステージ(妊娠・出産・育児)に沿った保健・医療・福祉の具体的な連携の仕方と支援法を研修教材の形でまとめる予定である。このような実践活動から生まれた教材は、厚生労働省や自治体が虐待防止研修を行う際に、非常に有効であると考えられる。また、望まない出産をした場合の児童の福祉の確保という視点や虐待防止支援に関わる専門職に対するサポート体制も視野に入れておきたい。
アクション・リサーチとして実施する予定の気仙地域における活動事例は、保健福祉の人材不足に悩む他の被災地にとっても有用なモデルとなることが期待される。すでに、ワークショップの成果として、2市1町が協働して、出産場所が共通している気仙地域全体での取組みが始まろうとしているという動きにも期待したい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201401008Z